イブ＝ツトゥル

イブ＝ツトゥル：クトゥルフ神話の混沌たる邪神

イブ＝ツトゥル（YIBB-TSTLL、別表記：イブ・スティトルなど）は、ブライアン・ラムレイによって創造されたクトゥルフ神話に登場する強力な邪神です。1969年の『セメントに覆われたもの』で名前が初出、その後『黒の召喚者』でその恐るべき姿が明らかになりました。

イブ＝ツトゥルの異形

イブ＝ツトゥルは、緑色の衣をまとった巨大な存在として描かれています。腐敗した頭部からは無数の目が蠢き、男性神と見なされる一方で、多数の乳房を持ち、配下のナイトゴーントに乳を与えているという異様な特徴を持っています。この姿は、混沌そのものの化身であることを象徴しているかのようです。

召喚と反転現象

魔道書『水神クタアト』に記された儀式によって召喚が可能ですが、その降臨は「反転」と呼ばれる現象を引き起こします。正気を失っていた者が正気に戻り、逆に正常な者が狂気に染まるという、理解を超えた事態が発生するのです。

また、『ネクロノミコン』には、イブ＝ツトゥルの血液とされる黒い物質を用いた窒息魔術が記されています。しかし、この魔術は流水によって無効化できるという記述もあり、その力の限界も示唆されています。

ヨグ＝ソトースとの関係と封印

イブ＝ツトゥルは、ヨグ＝ソトースを主として仕え、現在はヨグ＝ソトースと共に外宇宙の混沌の領域に封印されています。しかし、その力は依然として脅威であり、世界を変革しようと企む信徒が今日でも存在すると言われています。

イブ＝ツトゥルとヨッパロス

古代ティームドラ大陸の魔道士ヨッパロスは、イブ＝ツトゥルの忠実な下僕でした。イブ＝ツトゥルはヨッパロスに全人類の王座を約束しましたが、その真意は旧支配者の復活による人類滅亡後の孤独な生存でした。ティームドラにおいて、イブ＝ツトゥルは旧支配者の封印解放を企てましたが、勇者タラ・カシュと魔道士テフ・アツトによって阻止されました。

イブ＝ツトゥルの分類：混沌の定義

イブ＝ツトゥルは旧支配者（クトゥルフ眷属邪神群、CCD）に分類されます。ラムレイの邪神は「堕ちた旧神」と総称されることもありますが、その分類は必ずしも明確ではありません。リン・カーターの『深淵への降下』ではナイアーラトテップの息子という記述もありますが、他の資料ではグレート・オールド・ワン、外なる神、または唯一の存在など、様々な分類がなされています。ナイトゴーントとの関係から旧神である可能性も示唆されていますが、その存在は混沌そのものと言えるでしょう。

関連する存在

イブ＝ツトゥルに関連する存在として、ナイトゴーント、バグ＝シャース、オトゥーム、クティーラ、クタニドなどが挙げられます。これらの存在もまた、クトゥルフ神話における混沌と恐怖を象徴する存在です。

イブ＝ツトゥルが登場する作品

イブ＝ツトゥルは、ブライアン・ラムレイの『タイタス・クロウの事件簿』シリーズ、『タイタス・クロウ・サーガ』シリーズ、『幻夢の英雄』、『The Horror at Oakdeene』（未訳）などに登場します。これらの作品を通して、イブ＝ツトゥルの恐ろしい力と、その背後に潜む深淵を垣間見ることができます。

結論：絶え間ない恐怖

イブ＝ツトゥルは、その異形、能力、そして曖昧な分類を通して、クトゥルフ神話の混沌と恐怖を象徴する存在です。封印されてはいるものの、その影響力は依然として世界に及んでおり、今後もクトゥルフ神話の重要な存在として、読者やプレイヤーを恐怖と畏怖の念に駆り立てることでしょう。イブ＝ツトゥルという存在は、単なる架空の神ではなく、人間の理解を超えた深淵を覗き込むための窓と言えるのかもしれません。

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