インターロイキン-2
インターロイキン-2（IL-2）について
インターロイキン-2（IL-2）は、免疫系において重要な役割を担うサイトカインの一種です。主に活性化されたT細胞によって産生され、他の免疫細胞の活性化や増殖を促進する働きがあります。IL-2は、免疫応答の調節、細胞性免疫、そして医薬品開発において重要なターゲットとなっています。
IL-2の構造
IL-2は、特定のアミノ酸配列を持つタンパク質です。この構造は、IL-2が細胞表面の受容体と結合し、細胞内にシグナルを伝える上で重要です。IL-2前駆体のアミノ酸配列は以下の通りです。
1 myrmqllsci alslalvtns aptssstkkt qlqlehllld lqmilnginn
51 yknpkltrml tfkfympkka telkhlqcle eelkpleevl nlaqsknfhl
101 rprdlisnin vivlelkgse ttfmceyade tativeflnr witfcqsiis
151 tlt
産生細胞と標的細胞
IL-2は、主に活性化されたT細胞によって産生されます。IL-2は、T細胞、B細胞、マクロファージなど、様々な免疫細胞に作用します。具体的には、これらの細胞の活性化や増殖を促進し、免疫応答を調節します。
IL-2の産生機構
T細胞がIL-2を産生するためには、抗原提示細胞から抗原提示を受ける必要があります。この過程は、以下のようになります。
1. T細胞受容体（TCR）の活性化:
T細胞膜上のTCRが、抗原提示細胞によって提示された抗原を認識します。
TCRは、CD4分子と複合体を形成し、LckやFynなどのキナーゼと会合します。
抗原の結合により、TCRのリン酸化が起こります。
2. 細胞内シグナル伝達:
リン酸化されたTCRに、ZAP-70が結合します。
アダプター分子LATを介して、様々なシグナル伝達分子が活性化されます。
ホスホリパーゼC（PLC）γが活性化し、小胞体からカルシウムイオンが放出されます。
カルシウムイオンによって、カルモジュリンとカルニューリンが活性化されます。
3. IL-2遺伝子の転写:
カルニューリンは、転写因子NFATを脱リン酸化し、核内へ移行させます。
核内へ移行したNFATは、IL-2プロモーターに結合し、IL-2 mRNAの産生を促進します。
IL-2受容体
IL-2は、細胞表面に存在するIL-2受容体と結合することで細胞に作用します。IL-2受容体は、以下の3つのサブユニットで構成されています。
α鎖（CD25）: シグナル伝達には関与しませんが、IL-2との結合に関わります。
β鎖（CD122）: JAK1と会合し、シグナル伝達に関与します。IL-15とも共有されます。
γ鎖（CD132）: JAK3と会合し、シグナル伝達に必須です。IL-4、IL-7、IL-9、IL-15とも共有されます。
IL-2が受容体に結合すると、JAKが活性化され、細胞内シグナル伝達経路（MAPキナーゼ経路、PI3キナーゼ-Akt経路、JAK-STAT経路）が活性化されます。これにより、細胞の増殖や活性化が引き起こされます。
シグナル伝達
IL-2が受容体に結合すると、JAKが活性化され、受容体のチロシン残基がリン酸化されます。このリン酸化された部位は、STAT分子の結合部位となります。STAT分子は二量体を形成し、核内へ移行してDNA上の特定の配列に結合することで、遺伝子転写を活性化します。
IL-2の生理活性
IL-2は、以下のような様々な生理活性を持っています。
T細胞の増殖と活性化
B細胞の増殖と抗体産生促進
単球・マクロファージの活性化
ナチュラルキラー細胞（NK細胞）の増殖と活性化
リンホカイン活性化キラー細胞（LAK細胞）の誘導
制御性T細胞（Treg）の維持
医薬品への応用
IL-2の働きを抑制する医薬品は、免疫抑制剤として利用されます。例えば、タクロリムス（FK506）やシクロスポリンは、T細胞におけるIL-2産生を抑制することで、臓器移植後の拒絶反応を抑えます。これらの薬物は、細胞内のカルシニューリンの働きを阻害することで、IL-2の転写を抑制します。また、ステロイド系抗炎症薬もIL-2の産生を抑制します。
さらに、抗IL-2受容体モノクローナル抗体であるダクリズマブも、免疫抑制作用を示す医薬品として利用されています。
参考文献
谷口克、宮坂昌之 編『標準免疫学 第2版』医学書院 2002年 ISBN 4260104527
宮園浩平、菅村和夫 編『BioScience 用語ライブラリー サイトカイン･増殖因子』羊土社 1998年 ISBN 4897062616
Lin JX and Leonard WJ.(2000)"The role of Stat5a and Stat5b in signaling by IL-2 family cytokines"Oncogene192566-76. PMID 10851055
関連項目
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