イールズ声明

イールズ声明とは

イールズ声明とは、第二次世界大戦後の連合国軍占領下の日本において、連合国軍最高司令官総司令部民間情報教育局 (CIE) の顧問であったウォルター・クロスビー・イールズが、1949年に行った一連の反共演説、及びそれに伴って発生した共産主義者の大学教授を追放しようとする動き（レッドパージ）を指します。また、この声明に反発して学生たちが起こしたイールズ声明反対闘争についても記述します。

背景

第二次世界大戦終結後、GHQ/SCAPは当初、日本の民主化を推進していました。しかし、労働運動の激化や冷戦の勃発といった国際情勢の変化に伴い、占領政策は反共へと転換しました（逆コース）。

イールズの反共演説

このような状況下で、CIE顧問であったイールズは、1949年7月19日、新潟大学開学式の祝賀演説において、「学問の自由という大学の最も重要な権利と義務の名において、われわれは共産主義者として知られる大学教授をあえてもとうとしないのである」と述べました。この発言を皮切りに、イールズは岡山大学、広島大学、大阪大学、法政大学など20数校で同様の反共演説を展開し、「共産主義教授は排除すべきだ」と主張しました。

これらの演説はGHQの意向を反映したものと受け止められ、各大学での共産主義者追放の動きを加速させました。

レッドパージの実行

1949年9月14日、九州大学でいわゆる「赤色教授」に対して辞職勧告が行われたのを皮切りに、富山大学、新潟大学など多くの大学で同様の勧告が相次ぎました。さらに、翌1950年にかけては、小・中・高校の教職員約2000人が解雇される事態となりました（レッドパージ）。

また、1949年9月には国家公務員法に基づく人事院規則が公布され、国立大学教職員の政治活動が禁止されました。これに対し、南原繁東京大学総長をはじめとする大学関係者や、全国大学教授連合、日本学術会議などは反対の意思を示しました。

学生運動（イールズ声明反対闘争）

イールズ声明とそれに続くレッドパージは、学生たちの反発を招きました。また、日本共産党が「反帝・反戦」の態度を表明したことも、学生運動を後押しする要因となりました。

全日本学生自治会総連合（全学連）は1950年5月20日、第4回大会において「反イールズ声明、反帝国主義闘争」を決議し、イールズ声明反対闘争を展開しました。全学連大会以前にも、1949年11月には山口大学で「声明反対」のビラが張り出されるなど、学生による抗議活動は各地で起こっていました。

1950年5月2日には、東北大学でイールズが来訪した際、共産党系の学生が演壇を占拠し、イールズを立ち往生させる事件が発生しました。この事件では、学生2名が逮捕されています。同月16日には北海道大学で演説拒否運動が展開され、30日には、東京大学をはじめとする官公私立十数校から約8000人の学生が抗議大会を開き、8人が検挙されました。

結論

イールズ声明とそれに続くレッドパージは、戦後日本の大学や教育界に大きな影響を与えた出来事でした。この出来事は、学問の自由や思想の自由といった重要なテーマを問いかけるとともに、当時の国際情勢や占領政策の複雑さを浮き彫りにしました。また、この声明に反発した学生運動は、戦後の学生運動史における重要な一幕として記憶されています。

参考資料

藤原彰　『日本民衆の歴史10 占領と民衆運動』　三省堂 1975年12月5日
法政大学戦後五〇年史編纂委員会 『法政大学と戦後五〇年』 法政大学、2004年

関連項目

反共主義
赤狩り
民間情報教育局
日本の学生運動
全日本学生自治会総連合
レッドパージ

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