ウォルフォード・デイヴィス

サー・ヘンリー・ウォルフォード・デイヴィス：音楽を通じた国民への貢献

サー・ヘンリー・ウォルフォード・デイヴィス（1869年9月6日 - 1941年3月11日）は、イギリスの作曲家であり、1934年から1941年まで王室音楽師範を務めました。彼は作曲家としての才能に加え、教育者、オルガニスト、そしてラジオ放送を通じた音楽の普及活動によって、幅広い層にクラシック音楽の魅力を伝えた人物として知られています。

生い立ちと音楽との出会い

デイヴィスは、ウェールズとイングランドの境界の町、オズウェストリで生まれました。父ジョンはフルートとピアノを演奏し、地元の音楽界で活躍する人物でした。幼い頃から音楽に囲まれた環境で育ち、兄弟たちと楽器を演奏する中で音楽の才能を開花させていきました。特に、ウィンザーのセント・ジョージ・チャペルの少年聖歌隊に入ったことは、彼の音楽家としてのキャリアにとって大きな転機となりました。聖歌隊では、ウォルター・パラットの下で音楽の基礎を学び、ヴィクトリア朝後期のオルガン音楽復興の潮流に触れました。

王立音楽大学での学びとキャリアの始まり

パラットの下での修業後、デイヴィスは王立音楽大学に進学し、ヒューバート・パリーやチャールズ・ヴィリアーズ・スタンフォードといった名だたる作曲家から指導を受けました。1895年からは母校で対位法の教員として教鞭を執り、ラトランド・ボートンやレオポルド・ストコフスキーなど、後に著名となる音楽家を育てました。また、ロンドンの教会でオルガニストとしても活躍し、テンプル教会ではストコフスキーが助手を務めました。

多彩な活動と音楽を通じた社会貢献

デイヴィスの活動は多岐にわたりました。第一次世界大戦後には、新設されたイギリス空軍の初代音楽監督に就任し、現在でも演奏される行進曲「Royal Air Force March Past」を作曲しました。1919年にはアベリストウィス大学の音楽科教授となり、ウェールズの音楽振興に尽力しました。1924年からはロンドンのグレシャム・カレッジで音楽科教授を務め、公開講座を通じて一般市民に音楽の知識を広めました。

ラジオを通じた音楽普及活動

1920年代以降、デイヴィスはBBCでラジオ番組「音楽と一般聴衆 Music and the Ordinary Listener」を担当し、クラシック音楽の魅力をわかりやすく解説しました。彼の親しみやすい語り口は多くのリスナーを魅了し、彼は国民的な人気を博しました。著書「音楽の追及 The Pursuit of Music」（1935年）も、専門家ではない一般読者に向けて書かれたものであり、彼の音楽普及への情熱がうかがえます。

王室音楽師範としての晩年

1922年にナイトの称号を授与されたデイヴィスは、1934年にエドワード・エルガーの後を継いで王室音楽師範に任命されました。彼は1941年に71歳で亡くなるまで、この職を務めました。彼の遺灰はブリストル大聖堂の庭に埋葬されています。

主要作品

デイヴィスの作品は、管弦楽曲、合唱曲、室内楽曲など多岐にわたります。代表的な作品としては、以下のようなものが挙げられます。

管弦楽曲：「A Dedication Overture」、「A Welshman in London」、「Big Ben Looks On」
合唱曲：「Everyman」、「Lift Up Your Hearts」、「Song of St. Francis」
* 室内楽曲：弦楽四重奏曲、ヴァイオリンソナタ、ピアノ五重奏曲

結び

サー・ヘンリー・ウォルフォード・デイヴィスは、作曲家としての才能に加え、教育者、オルガニスト、そしてラジオ放送を通じた音楽の普及活動によって、イギリスの音楽文化に大きく貢献しました。彼の音楽は、今もなお多くの人々に愛され、演奏され続けています。

もう一度検索