ウォースパイト (戦艦)

イギリス戦艦ウォースパイト：不屈の老婦人

HMSウォースパイトは、イギリス海軍が誇るクイーン・エリザベス級戦艦の2番艦として知られています。第一次世界大戦と第二次世界大戦を生き抜き、その勇敢な戦いぶりから「オールド・レディ（老婦人）」という愛称で親しまれました。本稿では、ウォースパイトの艦歴を詳細にたどりながら、その輝かしい功績と悲劇的な最期までを紐解いていきます。

誕生と初期の経歴

ウォースパイトの建造は、ドレッドノート級戦艦の設計に携わったことで名高いジャッキー・フィッシャー提督の構想、そしてウィンストン・チャーチル海軍大臣の尽力によって実現しました。1912年10月31日にデヴォンポート海軍工廠で起工、1915年3月8日に竣工しました。艦名は古英語で「戦争を軽蔑する」を意味しますが、当時口語では「キツツキ」を意味するようにもなっており、キツツキの絵が艦のシンボルとして用いられました。

就役後、ウォースパイトは本国艦隊に配属され、15インチ砲による威力の高い射撃試験を実施しました。チャーチルもこの試験に立ち会い、その性能に感銘を受けたと言われています。しかし、初期の経歴には幾多のトラブルも付きまといます。護衛艦の誘導ミスによる座礁、姉妹艦との衝突事故など、数々のアクシデントに見舞われました。これらの事故は、ウォースパイトの運命を暗示していたのかもしれません。

ユトランド沖海戦と第一次世界大戦

1916年5月31日、ウォースパイトはドイツ帝国海軍との一大海戦、ユトランド沖海戦に参加しました。この海戦でウォースパイトは、信号の誤りにより巡洋戦艦部隊から取り残され、ドイツ艦隊の集中砲火を浴びるも、ドイツ戦艦に複数回の命中弾を与え、その耐久性を証明しました。激しい戦闘の中で舵の故障という危機に見舞われましたが、艦長フィルポッツの適切な判断により、沈没の危機を脱しました。この時のウォースパイトの活躍は、まさに奇跡的と呼ぶにふさわしいものでした。

海戦後もウォースパイトは、ドイツ潜水艦の攻撃を受けるなど、危険な状況に幾度も直面しました。しかし、これらの攻撃をことごとく回避し、大戦を生き延びました。第一次世界大戦での経験は、後のウォースパイトの活躍の基礎となりました。

戦間期の近代化改装

第一次世界大戦後、ウォースパイトは近代化改装を受けました。煙突の統合、バルジの強化、高角砲の換装など、防御力と対空能力の大幅な強化が図られました。そして、機関の更新による出力向上、装甲の増強、射程の延伸などが行われ、大戦で得られた教訓を反映した近代的な戦艦へと生まれ変わりました。この改装は、キング・ジョージ5世級戦艦の試験艦としても活用されました。

第二次世界大戦

第二次世界大戦勃発後、ウォースパイトは各地の海戦に参加します。ノルウェー沖海戦ではドイツ潜水艦の撃沈に貢献し、地中海ではイタリア艦隊とのカラブリア沖海戦で戦艦ジュリオ・チェザーレに命中弾を与え、その長射程砲撃能力を世界に示しました。また、マタパン岬沖海戦での活躍も特筆に値します。しかし、クレタ島沖での空襲で大きな損傷を受け、アメリカ合衆国で修理を受けることになりました。

太平洋戦争勃発後、ウォースパイトはインド洋に展開する東洋艦隊に合流し、セイロン沖海戦にも参加しました。激しい戦闘の中、ウォースパイトは生き残り、その後も地中海の反攻作戦に参戦しました。シチリア島上陸作戦やサレルノ上陸作戦において、艦砲射撃で連合軍を支援しました。

しかし、1943年9月、サレルノでの作戦中にドイツ軍の誘導爆弾「フリッツX」の直撃を受け、大破しました。ウォースパイトは奇跡的に沈没を免れましたが、航行不能となり、マルタ島で応急修理を受けました。その後、ジブラルタル、ロサイスと修理を重ねながらノルマンディー上陸作戦にも参加し、その活躍は連合軍から称賛されました。

最期のとき

1944年11月、オランダのワルヘレン島での砲撃を最後に、ウォースパイトは終戦を迎えました。その後、博物館への保存を求める声もありましたが、1947年に解体されることとなりました。解体に向かう途中、嵐に遭い、錨が外れて座礁するなど、最後までドラマチックな生涯を送りました。

ウォースパイトは、その長く激動に満ちた生涯の中で、数々の海戦を経験し、幾多の困難を乗り越えてきました。その不屈の精神と勇敢な戦いぶりは、後世に語り継がれるべき偉大な遺産です。

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