ウズベキスタン料理

ウズベキスタン料理：豊かな農業と遊牧文化が育んだ食の多様性

ウズベキスタン料理は、ウズベキスタンの地理的条件と歴史的背景を反映した、多様性に富んだ料理体系です。肥沃な土地では穀物が豊富に収穫されるため、パンや麺は主食として重要な役割を担い、数多くの麺料理が存在します。一方、遊牧文化の影響から羊肉は最も一般的な肉であり、様々な羊肉料理が親しまれています。

代表的な料理：プロフと多彩な郷土料理

ウズベキスタン料理の代表格は、なんと言っても「プロフ (Palov)」です。米、肉（主に羊肉）、ニンジン、タマネギなどを特製の大釜で炊き上げた、香り高く、味わい深い一品で、祝祭など特別な日に振る舞われることも多く、地域によって様々なバリエーションが存在します。早朝に客人に提供される「オシ・ナハル (Oshi nahor)」は、結婚式などの慶事の際に供される特別なプロフです。

その他にも、脂身のついた肉と新鮮な野菜を使ったスープ「シュルパ (Shurpa)」や、麺を主体にしたスープ料理「ナリン (Norin)」「ラグマン」、肉や野菜を詰めたパンやパスタ生地を蒸したり焼いたり揚げたりした「マンティ」「チュチュヴァラ」「サムサ」など、多様な料理が存在します。「ディムラマ」（肉と野菜のシチュー）や様々な種類の「カバブ」なども、ウズベキスタン料理を彩る代表的な料理です。

嗜好品：緑茶とウズベキスタンのワイン

ウズベキスタンでは、緑茶が国民的な飲料として一日を通して愛飲されています。「チャイハナ (chaikhana)」と呼ばれる喫茶店は、人々の社交の場として重要な役割を果たしています。特にタシュケントでは紅茶の人気が高く、牛乳や砂糖を加えることは一般的ではありません。料理と一緒に振る舞われる緑茶は、客をもてなす大切な習慣となっています。一方、夏季に人気のある冷たいヨーグルト飲料「アイラン」は、緑茶ほど広く普及しているわけではありません。

アルコール類では、イスラム教の影響があるものの、ウズベキスタンは比較的世俗的な国家であるため、ワインが比較的広く親しまれています。14ものワイナリーが存在し、特にサマルカンド周辺のワイナリーでは、地元産のブドウ品種を用いたデザートワインが生産され、国際的な賞を受賞するなど高い評価を得ています。

デザートとブハラ・ユダヤ人の伝統料理

ウズベキスタンのデザートは、果物やコンポート、ナッツ、ハルヴァなどが一般的で、慶事の際に緑茶とともに提供されます。ブハラ・ユダヤ人の伝統料理は、カシュルート（ユダヤ教の食事規定）に従って作られる独特の料理です。「オシ・サバ (Oshi sabo)」は、一晩かけてじっくりと煮込んだ肉、米、野菜を温かくして安息日の昼食に食べる料理です。その他にも、ブハラ・ユダヤ人独特のプロフ「オシュ・プロフ」、緑のハーブを使った「バフシュ」、袋の中で調理する「ハルタ・サヴァ」など、独特の調理法や材料を使った料理が数多く存在します。また、安息日の特別な客へのもてなしとして「チャイ・カイマキ」と呼ばれる、牛乳とバターを加えた緑茶が提供されることもあります。

その他の影響：ロシア料理と朝鮮料理

ロシア料理の影響も見られ、「シチー」などのスープが食べられています。また、ソビエト連邦時代に沿海州から移住した朝鮮系住民の影響から、市場やレストランで「キムチ（シムシャ）」を見かけることもあります。ウズベキスタンで見られるキムチは、朝鮮のキムチよりも浅漬けで、魚介類を使わず、サラダのようにして食べられる点が特徴です。

パン：多様な種類と歴史

ウズベキスタンでは、「ナン (non)」もしくは「パティール (patyr)」と呼ばれる伝統的なパンが広く食べられています。丸く平たい形をしており、中央が少し凹んで飾り付けが施され、縁は厚みのある形状です。地域によって様々な種類があり、タンディールと呼ばれる釜で焼く「アビ・ナン」、サマルカンド独特の「シルマ・ナン」、ゴマやニオイクロタネソウの種を散らしたブハラのナン、婚礼の際に作られるパティールなど、多様なバリエーションが存在します。遊牧民はタンディールを使わず、カザンで焼いたパンを作っていました。

ウズベキスタン料理は、その歴史と地理的条件、そして多様な文化の影響を反映した、奥深い魅力を持つ料理体系と言えるでしょう。

もう一度検索