ウラジロガシ

ウラジロガシ（裏白樫）

ウラジロガシは、ブナ科コナラ属の常緑広[[葉樹]]で、学名を Quercus salicina といいます。その名の通り、葉の裏側が白いのが特徴で、これは葉の裏面にロウ質の粉が吹いているためです。別名ウラジロカシとも呼ばれます。

分布と生育環境

ウラジロガシは、日本では本州の宮城県や新潟県以南から四国、九州、琉球列島にかけて分布しています。国外では、朝鮮半島南部や台湾にも見られます。温暖で湿潤な環境を好み、低地から山地の尾根沿いや渓流沿いなどに生育します。人里近くではあまり見られませんが、本州中南部以南の山腹地域では、照[[葉樹林]]を構成する重要な要素となっています。しかし、人里周辺では、シイやアラカシといった他の樹種と入れ替わることがあります。

特徴

ウラジロガシは、高さ15〜20メートル以上に成長する常緑高木です。樹皮は暗褐色から灰色で、皮目があり滑らかですが、次第に細かい裂け目が入り、老木になると不規則に隆起します。若い枝は暗緑色をしています。葉は互生し、倒卵形から楕円状長楕円形で、長さは5〜13センチ[[メートル]]程度です。葉の先端は鋭く尖り、縁には鋸歯があります。葉縁はやや波打つことが多く、アラカシなどと比べて鋸歯が鋭いのが特徴です。葉質はやや革質で、裏面はロウ質で粉白色を呈しています。

花期は晩春（4〜5月頃）で、雌雄同株です。雄花は新枝の基部から垂れ下がる穂状で、長さ4センチ[[メートル]]前後、褐色の軟毛が密生しています。雌花は新枝の上部の葉腋に1つずつ付き、長さ7ミリ[[メートル]]前後です。堅果（どんぐり）は広卵状楕円形から長楕円形で、長さ1.5〜2センチ[[メートル]]程度と、他の種と比べて細長いのが特徴です。翌年の秋に成熟し、濃褐色になります。そのため、枝には前年の未熟な果実が見られることもあります。

冬芽は長楕円形で細い毛があり、多数の芽鱗が重なって包まれた鱗芽で、葉の付け根につきます。

種内変異

種内変異として、葉が幅広くなるヒロハウラジロガシ Quercus salicina f. latifolia が知られています。また、オキナワウラジロガシ Quercus miyagii との交雑種も記録されていますが、和名は不明です。

利用

ウラジロガシは、公園樹や生け垣として利用されています。材は硬く丈夫で、建材や楽器材、家具材などに用いられるほか、園芸用にも使用されます。また、葉を乾燥させてお茶として飲むと、胆石や腎臓結石を溶かすという触れ込みで商品化されています。実際、エキスには胆石・腎臓結石排出促進作用が確認されており、医薬品としても流通しています。さらに、ウラジロガシを入浴剤として使用すると、切り傷、やけど、ニキビなどの肌荒れ、痔などに効果があるとされています。

保護上の位置づけ

森林開発や伐採などにより、ウラジロガシの個体数と生育地は減少しています。そのため、以下の地方公共団体が作成したレッドデータブックに掲載されており、保護の対象となっています。

宮城県：要注目種
新潟県：地域個体群
東京都：準絶滅危惧
沖縄県：絶滅危惧II類

特に、分布の北限である宮城県・新潟県と南限である沖縄県でリストアップされていることは、この樹種の保全における重要性を示しています。

天然記念物

多くの地域で、ウラジロガシの個体や群落が天然記念物に指定されています。以下に、その一部を都道府県指定および市町村指定別に示します。

都道府県指定

富山県：愛本のウラジロガシ林
福井県：伊射奈枝神社のウラジロガシ
福島県：大堀のウラジロガシ
石川県：金劔宮社叢ウラジロガシ林
香川県：小蓑のウラジロガシ
愛媛県：惣河内神社のウラジロガシ
神奈川県：高杉のウラジロガシ
滋賀県：立木神社のウラジロガシ
広島県：出店権現のウラジロガシ
岡山県：七色カシ
千[[葉県]]：三島・豊英のウラジロガシ
埼玉県：南川のウラジロガシ林
群馬県：妙義神社のウラジロガシ
広島県：山中福田八幡のウラジロガシ

市町村指定

白山市：板尾のウラジロガシ
上関町：祝島のウラジロガシ
四国中央市：ウラジロガシ
佐渡市：草苅神社のウラジロガシ
西宮市：公智神社社叢
萩市：弘法様のウラジロガシ
萩市：佐々並のウラジロガシ
黒部市：白山社のウラジロガシ林
相模原市：城山のウラジロガシ
安芸太田町：古寺尾のウラジロガシ
身延町：湯之奥群生ウラジロガシ

これらの指定は、ウラジロガシの文化的、生態的な価値を保護するための重要な措置です。

脚注

参考文献

鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社、2014年。
平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年。
沖縄県文化環境部自然保護課編 『改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物（菌類編・植物編）-レッドデータおきなわ-』、2006年。
大野照好監修・片野田逸郎著 『琉球弧・野山の花 from AMAMI』 株式会社南方新社、1999年。
林弥栄編 『山溪カラー名鑑 日本の樹木』 株式会社山と溪谷社、1985年。

関連項目

木の一覧

外部リンク

岡山理科大学植物生態研究室HP - ウェイバックマシン - ウラジロガシの葉の写真が掲載。
* へんてこ樹木（じゅもく）図鑑（ずかん） - ウラジロガシの堅果（どんぐり）の写真が掲載。

もう一度検索