胆石

胆石について



胆石とは、肝臓で生成される胆汁の成分が、胆嚢胆管内で固まって形成される結石のことです。胆石は、その成分によっていくつかの種類に分類され、色や形も様々です。胆嚢炎などの胆道系の病気の多くは、胆石が原因となっていることが多いです。

歴史



胆石という名前は、固まった胆汁が石のように見えることに由来します。胆石は古くから知られており、紀元前1500年~1600年頃のミイラからも発見されています。古代ヨーロッパでは、胆石は非常に一般的な病気でした。

疫学



胆石は、一般的に「5F」と呼ばれる特徴を持つ人に多いとされています。これは、40代(Forty)、女性(Female)、[肥満]、多産(Fertile)、色白(Fair)の人々を指します。また、経口避妊薬の服用、急激なダイエット、長時間の絶食なども胆石のリスクを高めると言われています。胆石を持っている人の約80%は無症状ですが、胆石に関連する症状を引き起こす人は1〜3%程度です。胆嚢癌との関連性も指摘されていますが、明確な証拠はありません。アメリカでは65歳以上の約20%に胆石が見られるとされています。一方で、他の疾患で検査を受けた際に偶然発見された胆石の場合、その後のフォローアップで胆石関連の疾患を発症する割合は低いという報告もあります。日本では、食生活の欧米化に伴いコレステロール胆石の患者が増加しています。また、飲酒をする人は胆石の保有率が低いという報告もあります。アナフィラクトイド紫斑病との関連も指摘されています。

名称



胆石は、発生する場所によって以下の名称で呼ばれます。

胆嚢結石胆嚢にできる胆石
胆管結石:総胆管にできる結石
肝内結石:肝内胆管にできる結石

種類



胆石は、大きく分けて黒色色素結石と褐色色素結石の2種類があります。黒色色素結石は、ビリルビンカルシウムと無機カルシウム塩から構成され、小さく硬いのが特徴です。褐色色素結石は、ビリルビン塩と脂肪酸から構成され、大きく柔らかいのが特徴です。日本消化器病学会胆石症検討委員会は、胆石を以下の様に分類しています。

コレステロール胆石
純コレステロール石
混成石
混合石
色素胆石
黒色石
ビリルビンカルシウム石
まれな胆石
炭酸カルシウム石
脂肪酸カルシウム石
その他の混成石
その他の胆石

要因



胆石の形成には、胆嚢の収縮機能の低下、胆汁中のコレステロールの増加、レシチンと胆汁酸のバランスの崩れなどが関与しています。胆汁中のコレステロールは通常、レシチンと胆汁酸の作用によって液体状に保たれていますが、これらのバランスが崩れるとコレステロールが凝集し、結石が形成されます。また、細菌感染も胆石形成の要因として疑われています。

胆石症



胆石を持つ人の多くは無症状ですが、胆石が原因で胆嚢炎や胆管炎などの症状を引き起こすことがあります。

症状



胆石の主な症状には、以下のものがあります。

右上腹部の痛み:突然始まり、激しい痛みが数時間続くことが多い。右肩や腰に痛みが広がることもある。
吐き気・嘔吐
発熱:胆嚢炎を伴う場合
黄疸胆管が閉塞した場合。尿の色が濃くなることもある。

所見



右上腹部の圧痛・叩打痛

検査



胆石の診断には、以下の検査が行われます。

腹部超音波検査:胆石の有無や胆嚢の状態を調べます。
コンピュータ断層撮影(CT):胆管胆嚢結石を画像で確認します。
核磁気共鳴画像法(MRI)・MRCP:胆嚢胆管結石を3D画像で確認します。
内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP):胆石の治療にも用いられます。
尿中ウロビリノーゲンの検査
血液検査:胆管結石胆嚢炎の場合は、肝酵素やビリルビン値が上昇することがあります。

鑑別疾患



胆石と症状が似ている病気には、大動脈解離狭心症、胃潰瘍などがあります。また、セフトリアキソンという抗生物質によって偽胆石症が引き起こされることもあります。

治療



無症状の胆石は、基本的に治療は行いません。症状がある場合、以下の治療法が選択されます。

薬物治療



ウルソデオキシコール酸などの薬を服用して胆石を溶かす治療法です。ただし、胆石を完全に除去することは難しく、予防的に用いられることが多いです。

内視鏡治療



胆嚢炎や胆管炎を伴う場合や、総胆管結石の治療に用いられます。

手術治療



胆嚢摘出手術は、胆石症の最も根治的な治療法です。近年では、腹腔鏡下手術が主流となっています。胆嚢を摘出しても、日常生活には大きな影響はありませんが、油分の多い食事を摂りすぎると下痢をしやすくなる可能性があります。

超音波破砕治療



体外から衝撃波を当てて胆石を砕く治療法です。ただし、適応が限られており、再発も多いため、実施している医療機関は少ないです。

動物における胆石



犬では、ビリルビンとカルシウムを主成分とする胆汁色素系胆石が一般的です。馬では、2018年の日本ダービー優勝馬ワグネリアンが胆石により死亡した事例があります。

出典



胆石症診療ガイドライン2016 日本消化器病学会ガイドライン
胆道の病気 胆石とは? 広島大学病院

関連項目



牛黄 - ウシの胆石。漢方薬に使用される。
尿結石
膀胱結石

外部リンク



胆石症、総胆管結石 慶應義塾大学病院

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