ウラル-375D

ウラル-375：ソ連が生んだ多目的軍用トラック

ウラル-375は、1961年にソビエト連邦のウラル自動車工場で開発された、4.5トン、6×6輪駆動の多目的トラックです。1965年から製造された改良型のウラル-375Dが最も多く生産され、ウラル-375を代表するモデルとなりました。

開発と概要

ウラル-375は、それまでソ連の標準トラックであったZIL-157の後継として開発され、1976年にウラル-4320が登場するまで製造されました。GAZ-66やZIL-131と共に、ソ連軍の兵站を支える中心的な役割を果たしましたが、1982年までにウラル-4320への置き換えが完了しました。総生産台数は約11万両に達します。

軍用トラックとしての活躍

ウラル-375は、兵員や物資の輸送に使用されただけでなく、多連装ロケット砲BM-21 グラートの車台としても活用されました。また、以下の各種火砲の牽引にも用いられました。

対戦車砲：T-12 100mm対戦車砲
野砲：D-44 85mm野砲、BS-3 100mm野砲、D-74 122mmカノン砲、M-46 130mmカノン砲
榴弾砲：D-30 122mm榴弾砲、D-20 152mm榴弾砲、D-1 152mm榴弾砲
迫撃砲：M-160 160mm迫撃砲、M-240 240mm迫撃砲
対空機関砲：S-60 57mm対空機関砲

特徴

ウラル-375は、以下の特徴を備えています。

排気量7.0 LのV型8気筒OHVガソリンエンジン（ZIL-375）
タイヤ空気圧集中調節機能（CTIS）
5速マニュアルトランスミッション
デュアルクラッチ
パワーステアリング
空気油圧複合式ドラムブレーキ

初期型は、オープントップの操縦席に幌を装着する構造で、フロントウインドシールドを倒すことができました。1965年以降のウラル-375Dからは、金属製の密閉キャビンに変更されました。一部の車両にはウインチも装備されています。

燃費の問題と後継

ウラル-375の主な欠点は、ガソリンエンジンによる燃費の悪さでした。寒冷地での始動性を考慮してガソリンエンジンが採用されましたが、経済性の問題は深刻でした。後継のウラル-4320では、燃費に優れたディーゼルエンジンが採用されています。

バリエーション

ウラル-375には、以下のようなバリエーションが存在します。

ウラル-375：初期型、幌付きオープントップキャブ
ウラル-375D：標準的なカーゴトラック、密閉型キャブ、常時6輪駆動
ウラル-375A：KUNGシェルター搭載のパネルトラック
ウラル-375E：車台のみの形式
ウラル-375S：セミトレーラー牽引用のトラクタートラック
ウラル-375K：極東ロシア向けの寒冷地仕様
ウラル-377：民間向けカーゴトラック、6×4駆動
ウラル-377S：民間向けトラクタートラック、6×4駆動

派生型

ウラル-375をベースとした派生型には、以下のようなものがあります。

BM-21 グラート：122mm自走多連装ロケット砲
燃料タンク車：AC-5-375など
給油車：ATMZ-5-375
航空電源車：APA-4G、APA-4GM（APA-5）
トラッククレーン：8T-200など
早期警戒レーダー車：P-18レーダー搭載車
ミサイル運搬/装填車：2T6（2K11 クルーグ用）
自走榴弾砲：PTH105-VN15（ベトナム陸軍）

主要諸元

乗員数：3名
ペイロード：9,920lb（ウラル-375S：22,050lb）、兵員輸送時は24人
総重量：11,020lb（オフロード）
エンジン：180馬力 ZIL-375YA V8ガソリン
最高速度：76km/h

運用国

ソビエト連邦
ベトナム

登場作品

映画：『REDリターンズ』
ゲーム：『ARMA 2』、『Operation Flashpoint: Cold War Crisis』、『バトルフィールド ベトナム』

まとめ

ウラル-375は、ソ連軍の兵站を支えた多目的トラックであり、様々な派生型が存在しました。燃費の悪さという欠点がありましたが、寒冷地での運用を考慮した設計がなされていました。後継のウラル-4320に道を譲りましたが、その堅牢性と汎用性から、多くの国で使用されました。

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