ウルップソウ

ウルップソウ（得撫草）

ウルップソウ（学名：Lagotis glauca）は、オオバコ科ウルップソウ属に分類される多年草です。寒冷な地域や高山の斜面などの湿った砂礫地に生育し、その美しい姿から「北の浜に咲く蓮華」を意味するハマレンゲ（浜蓮華）という別名も持っています。かつてはウルップソウ科に分類されていましたが、現在はオオバコ科に分類されています。

特徴

ウルップソウは、高さ15cmから25cmほどの花茎を持ち、卵円形または広楕円形の肉厚で光沢のある葉をつけます。葉の大きさは4cmから10cm程度で、全体に無毛です。開花時期は6月から8月で、茎の先に青紫色の小さな花を穂状に多数咲かせます。雄しべは花弁よりも短く、花穂は円柱形で各花に苞があります。染色体数は2n=22で、2倍体であることがわかっています。

和名の由来は、最初に発見された場所が千島列島の得撫島であったことに由来します。属名のLagotisは、ギリシャ語の「logos（兎）」と「ous（耳）」を組み合わせたもので、葉の形状が兎の耳に似ていることに因んでいます。

分布

ウルップソウは、アリューシャン列島、カムチャツカ半島、千島列島、そして日本に分布しています。日本では、北海道の礼文島や空知地方、本州では飛騨山脈北部の白馬岳や雪倉岳、そして八ヶ岳の硫黄岳や横岳などの高山帯に隔離分布しています。この隔離分布は、氷期に南下したウルップソウが、その後の気候変動により高山などの限られた地域に生き残った結果と考えられています。基準標本は得撫島で採集されたものです。

種の保全状況評価

ウルップソウは、環境省レッドリストにおいて準絶滅危惧（NT）に指定されています。以前は絶滅危惧IB類（EN）に指定されていましたが、絶滅危惧II類（VU）に変更されました。減少の主な要因は、登山者による踏みつけと考えられており、平均減少率は約30%、個体総数は約10,000と推定されています。また、以下の都道府県でレッドリストの指定を受けています。

絶滅危惧種（Cr） - 北海道
絶滅危惧I類 - 新潟県
絶滅危惧IB類 - 長野県

近縁種

ウルップソウには、以下のような近縁種が存在します。

ホソバウルップソウ (Lagotis yesoensis)：大雪山系に自生する種で、環境省により絶滅危惧IB類（EN）に指定されています。
シロバナウルップソウ (Lagotis yesoensis f. albiflora)：ウルップソウの白花品種です。
ユウバリソウ (Lagotis takedana)：夕張岳に自生する種で、環境省により絶滅危惧IB類（EN）に指定されています。

脚注

注釈

特になし

出典

特になし

参考文献

清水建美、門田裕一、木原浩『高山に咲く花』（増補改訂新版）山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑8〉、2014年3月22日。ISBN 978-4635070300。
豊国秀夫『日本の高山植物』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、1988年9月。ISBN 4-635-09019-1。
佐竹義輔、大井次三郎、北村四郎、亘理俊次、冨成忠夫 編『日本の野生植物 草本III合弁花類』平凡社、1981年10月。ISBN 4582535038。
永田芳男『夏の野草』山と溪谷社〈山溪フィールドブックス〉、2006年10月。ISBN 4635060675。
山と溪谷社 編『花の百名山地図帳』山と溪谷社、2007年6月20日。ISBN 9784635922463。
林弥栄『日本の野草』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2009年10月。ISBN 9784635090421。
牧野富太郎、本田正次『原色牧野植物大図鑑』北隆館、1982年7月。ASIN B000J6X3ZE。 NCID BN00811290。

関連項目

高山植物
ウルップ島

外部リンク

ウルップソウ
ウルップソウの標本 国立科学博物館標本・資料統合データベース
Lagotis glauca Gaertn.（The Plant List）（英語）

もう一度検索