夕張岳

夕張岳：花の百名山に輝く、豊かな自然と歴史を秘めた山

北海道の中央部、夕張[[山地]]の南端に位置する夕張岳は、標高1,668mを誇る雄大な山です。夕張市と空知郡南富良野町にまたがり、その山容は周辺の景観を大きく彩っています。北側の芦別岳と共に「富良野芦別道立自然公園」に指定されており、自然保護の観点からも重要な役割を担っています。

花の宝庫：多様な高山植物の楽園

夕張岳は、その豊かな自然環境から「花の百名山」として広く知られています。初夏から夏にかけては、数多くの高山植物が咲き誇り、全国から多くの登山客が訪れます。この山にしかない固有種に加え、北海道の高山に見られるほぼ全ての種類の高山植物が観察できるといわれており、まさに高山植物の宝庫です。田中澄江氏により「花の百名山」および「新・花の百名山」にも選定されており、その植物学的価値の高さが認められています。

特に、ユウバリソウ（ウルップソウの変種）やユウバリコザクラといった、夕張岳にちなんだ固有種は、この山の象徴的な存在です。他にも、シソバキスミレ、ユウバリリンドウ、ユウパリミセバヤ、ユウバリツガザクラ、ユキバヒゴタイ、ユウバリタンポポなど、多くの固有種や希少種が確認されています。さらに、エゾノシモツケソウ、シナノキンバイ、シロウマアサツキ、シラネアオイなど、多様な高山植物が633種も生育しており、その多様性は他に類を見ません。

これらの貴重な高山植物は、限られた面積に生育しているため、踏みつけや盗掘による減少が危惧されています。そのため、近年ではエゾシカによる食害対策として、「エゾシカネットワーク」による電気柵の設置など、保全活動が積極的に行われています。

悠久の歴史：炭鉱とアイヌ文化の足跡

夕張岳の歴史は、自然だけにとどまりません。1888年、アメリカ人地質学者ライマンによる石炭の大露頭発見をきっかけに、1892年から西側の夕張炭鉱で石炭採掘が始まり、地域の産業を支えてきました。最盛期には多くの労働者が集まり、活気あふれる街が形成されましたが、1990年に閉山。その後、夕張市は厳しい経済状況に直面することになります。

一方、古くからこの地に住むアイヌの人々にとって、夕張岳は神聖な山「カムイシリ」として崇められてきました。魔物が住むと伝えられ、畏敬の念を抱かれていたという歴史も残っています。これらの歴史的背景は、夕張岳をより奥深く魅力的な山としています。

地質学的にも貴重な存在：蛇紋岩メランジュ

夕張岳の独特の景観は、その地質にも起因します。夕張[[山地]]は、中生代白亜紀末から新生代第三紀にかけての大規模な造山運動によって形成されたと考えられており、日本最大の蛇紋岩分布地帯となっています。雨風による浸食によって、独特の岩峰群が形成され、ガマ岩、釣鐘岩、男岩など、特徴的な地形を見ることができます。

特に、釣鐘岩付近の熊ヶ峰と夕張岳山頂の間の鞍部「吹通し」は、蛇紋岩が露出する砂礫地で、ユウバリソウなどの群生地となっています。この蛇紋岩メランジュは、1996年に「夕張岳の高山植物群落および蛇紋岩メランジュ帯」として国の天然記念物に指定され、2007年には「夕張岳と蛇紋岩メランジュ」として日本の地質百選にも選定されています。

登山：雄大な景色と充実のコース

夕張岳への登山道は、西側の夕張市鹿島と東側の南富良野町金山から整備されています。夕張側には「冷水コース」と「馬の背コース」の2つのコースがあり、南富良野側には「金山コース」があります。どのコースも、登山者自身の体力や好みに合わせて選択できるようになっています。山頂からは、大雪[[山]]系、十勝岳連峰、日高山脈、札幌近郊の山々、そして間近に芦別岳など、360度のパノラマが広がり、登山者を迎えてくれます。

また、夕張市側には「夕張岳ヒュッテ」という山小屋があり、登山者の休憩場所として利用できます。夏期には管理人が常駐し、緊急時以外は利用可能です。

夕張岳へのアクセス

JR北海道根室本線金山駅、石勝線夕張駅からそれぞれバスや自家用車を利用してアクセスできます。また、道東自動車道占冠IC、夕張ICからもアクセス可能です。東山麓には国道237号、夕張[[山地]]の南側には国道274号、西山麓には国道452号が通っており、車でのアクセスも比較的容易です。


夕張岳は、豊かな自然、歴史、そして地質学的価値が凝縮された、まさに魅力あふれる山です。多くの登山客が訪れ、その美しさに魅了されています。一度訪れて、その魅力を体感してみてはいかがでしょうか。

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