エウゲニウス3世 (ローマ教皇)

エウゲニウス3世（Eugenius III, ? - 1153年7月8日）は、中世のローマ教皇であり、その在位は1145年2月15日から1153年7月8日まででした。彼は、第2回十字軍を呼びかけた教皇として歴史に名を刻んでいます。本名はベルナルド・ピニャテッリ、またはベルナルド・パガネリと伝えられ、カトリック教会においては福者として崇敬され、その記念日は7月8日に祝われます。

生涯

エウゲニウス3世は、イタリアのピサ近郊の出身であるとされています。1130年にクレルヴォーのベルナルドゥスと出会い、その影響を受けて1138年にシトー会のクレルヴォー修道院に入り、ベルナルドゥスの下で修行しました。翌1139年には、ローマ近郊のシトー会修道院の院長に就任し、1145年にはベルナルドゥスの影響力により、シトー会出身者として初めてローマ教皇に選出されました。しかし、当時のローマはアルノルド・ダ・ブレシア率いる市民自治を求める反乱軍によって混乱状態にあり、戴冠式のためにサン・ピエトロ大聖堂へ向かうことができませんでした。そのため、彼はやむなくローマを放棄し、北東のファルファ修道院で戴冠した後、ヴィテルボへと逃れました。在位期間の大部分は、フランスやドイツのトリーアなど、各地を転々とすることとなりました。

フランス滞在中、十字軍国家のエデッサ伯領が失われたことを知ったエウゲニウス3世は、1145年12月にフランス王ルイ7世に教皇勅書を送り、十字軍を呼びかけました。ベルナルドゥスの勧誘演説もあり、ルイ7世とドイツ王コンラート3世を含む多くの人々が参加しましたが、1147年から1148年にかけて行われた第2回十字軍は、ほとんど成果を上げることができず、大失敗に終わりました。1149年には、トゥスクルムで十字軍から帰還途中のルイ7世と王妃アリエノール・ダキテーヌに会い、遠征中に不仲になっていた二人を慰め、夫婦関係を修復させました。しかし、二人は1152年に離婚することになります。

一方、ローマでは依然として混乱が続いていましたが、教会側と反乱軍側は事態を打開するため和平を結び、市民自治を合法とする条件で、1152年にエウゲニウス3世はローマに帰還を果たしました。1153年には、教皇領を確保するため、コンラート3世の甥であるドイツ王フリードリヒ1世と同盟（コンスタンツ条約）を結びました。しかし、同年7月8日、避暑のため滞在していたティヴォリで死去し、ローマ（現在のバチカン市国）のサン・ピエトロ大聖堂に埋葬されました。ちなみに、彼の師であるベルナルドゥスも、約1ヶ月後の8月20日に亡くなっています。

エウゲニウス3世は、師であるベルナルドゥスから書簡『デ・コンデラティオーネ（教皇としてなすべき事柄）』を受け取り、教会改革と聖職者の清貧の実践を勧められました。この教えを実行に移すべく努力し、亡命中にたびたび教会会議を召集し、パリ、ランス、トリーア、クレモナなどで教会会議を開き、教会改革を推し進めました。彼の功績を称え、1872年にピウス9世によって列福されました。

世界遺産との関連

エウゲニウス3世は、世界遺産に登録されているフォントネーのシトー会修道院の教会堂を献堂したことでも知られています。この献堂は、彼が各地を放浪していた1147年に行われました。また、同じく世界遺産であるサン・ジミニャーノ歴史地区にあるサン・ジミニャーノ参事会教会は、エウゲニウス3世によって建設されたものです。

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