エドマンド・モーティマー (第5代マーチ伯)

第5代マーチ伯エドマンド・モーティマー：王位を巡る葛藤の生涯

第5代マーチ伯エドマンド・モーティマー（1391年 - 1425年）は、中世イングランドの貴族であり、アルスター伯の称号も有していました。父は第4代マーチ伯ロジャー・モーティマー、母はケント伯トマス・ホランドの娘エレノアであり、姉アンはケンブリッジ伯リチャード・オブ・コニスバラと結婚し、後のエドワード4世とリチャード3世の祖母となりました。

若くして王位継承権を背負う

1398年、エドマンドはわずか6歳で父の爵位と、リチャード2世の王位請求権を受け継ぎます。しかし、翌年にはヘンリー4世が王位を簒奪し、エドマンドは監視下に置かれることとなりました。ヘンリー4世の治世は反乱が相次ぎ、エドマンドはエドワード3世の血を引くことから、反乱勢力に王位継承者として担ぎ上げられました。

反乱との関わりと苦悩

1403年には、伯母エリザベスの夫ホットスパーや、叔父でウェールズ反乱の指導者オワイン・グリンドゥールの娘婿エドマンド・モーティマーらが、エドマンドの王位請求権を掲げて反乱を起こしましたが、鎮圧されました。1405年にも、ノーサンバランド伯ヘンリー・パーシーらが同様の反乱を企てましたが、エドマンド自身は反乱との関わりを避けました。

ヘンリー5世への忠誠と晩年

1413年にヘンリー5世が即位すると、エドマンドは軟禁から解放され、厚遇を受けました。彼はヘンリー5世に忠実に仕え、1415年には義兄ケンブリッジ伯らの暗殺計画を事前に通報し、阻止に貢献しました。その後もヘンリー5世に従い、百年戦争でフランスに遠征し、1423年にはアイルランド総督に任命されましたが、1425年にアイルランドで亡くなりました。

モーティマー家の終焉と薔薇戦争への影響

エドマンドには子供がなく、モーティマー家は断絶しました。遺領と爵位は、甥であるヨーク公リチャード・プランタジネットに引き継がれましたが、エドマンドの王位継承権はその後も利用され続けました。1450年には、ジャック・ケイドがエドマンドの庶子を称して反乱を起こし、ヨーク公が王位を主張してヘンリー6世と対立、後の薔薇戦争の引き金となりました。

エドマンド・モーティマーの生涯は、王位を巡る複雑な権力闘争と、それに翻弄された貴族の苦悩を物語っています。彼の死後も、その王位継承権は歴史を動かす要因となり、イングランドの歴史に大きな影響を与えました。

参考文献

森護『英国王室史話』大修館書店、1986年。
川北稔編『新版世界各国史11 イギリス史』山川出版社、1998年。
松村赳・富田虎男編『英米史辞典』研究社、2000年。
エドマンド・キング著、吉武憲司監訳『中世のイギリス』慶應義塾大学出版会、2006年。
トレヴァー・ロイル著、陶山昇平訳『薔薇戦争新史』彩流社、2014年。

関連項目

ウィリアム・シェイクスピア
ヘンリー四世 第1部
ヘンリー六世 第1部

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