エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン

エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン：世界に広がったミステリの灯火

『エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン』(Ellery Queen's Mystery Magazine、以下EQMM)は、ミステリ史に燦然と輝く、1941年アメリカで創刊された月刊誌です。その名は、ミステリ作家にして初代編集者であるエラリー・クイーン（フレデリック・ダネイとマンフレッド・リーの共同ペンネーム）に由来しています。EQMMは、アメリカのみならず、フランス、カナダ、ポルトガル、オーストラリア、スウェーデン、日本など世界各国で翻訳版が発行され、ミステリ愛好家に広く親しまれてきました。

アメリカ版：質の高い編集と新人作家育成の場

アメリカ版EQMMは、エラリー・クイーン、特にフレデリック・ダネイの編集手腕によって、高い評価を獲得しました。1982年にダネイが亡くなると、エレノア・サリヴァンが編集を引き継ぎました。長きにわたる活躍には、クレイトン・ロースンの貢献も忘れてはなりません。彼は1963年から1971年までデスクとして編集に携わりました。

EQMMは、1950～70年代の短編小説減少期においても、その編集水準の高さによって生き残り、現在も続くミステリ小説誌の中で最も歴史のあるものの一つです。特徴的なのは、新人作家の育成に力を入れていた点です。多くの出版社が著作権代理人を通じた投稿しか受け付けない中、EQMMはアマチュアからの直接投稿を受け入れる「初作品部門」を設け、数百人の新人作家を発掘しました。

EQMMには、新人作家だけでなく、ディック・フランシス、マイケル・ギルバート、ピーター・ラヴゼイ、ルース・レンデル、レックス・スタウトといった著名なミステリ作家、さらにはA・A・ミルン、サマセット・モーム、P・G・ウッドハウスといった、ミステリ以外のジャンルで知られる作家たちの作品も掲載されました。これはEQMMの幅広い視野を示しています。

また、アイザック・アシモフの「黒後家蜘蛛の会」、ヘンリー・クリストファー・ベイリーの「フォーチュン氏」といった人気シリーズものも、EQMMを支える重要な要素でした。中でもエドワード・D・ホックは、1962年以来10以上のシリーズを発表し、1973年からは毎号1作以上の書き下ろし作品を提供し続けました。

1979年6月号には、初の日本人作家として松本清張の『地方紙を買う女』（英訳版）が掲載されましたが、翻訳の過程で一部伏線が削除されたため、結末の唐突さを指摘する声もありました。

日本版：早川書房と光文社、そしてミステリマガジンの系譜

日本では、1956年6月、早川書房が『エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン』を創刊しました。田中潤司が創刊準備に携わり、初代編集長は都筑道夫が務めました。1957年には勝呂忠による装丁がMWA美術賞を受賞するなど、高いデザイン性も評価されました。

当初は海外作品が中心でしたが、1959年には結城昌治の『寒中水泳』が掲載され、日本人作家の作品も掲載されるようになりました。また、「別冊クイーンズマガジン」には多くの日本人作家が作品を発表しました。

1966年には『HAYAKAWA'S ミステリ・マガジン』に改名、1977年に本国版との特約関係が解消された後も、海外作品を中心とした編集方針を続け、2006年には創刊50周年を迎えました。その後、現在の『ミステリ・マガジン』に改名し、現在も刊行されています。長年にわたる編集長交代劇も、その歴史の一端として興味深いものです。

一方、1977年末には光文社が隔月刊誌『EQ』を創刊し、日本版EQMMを復活させました。創刊号には、フレデリック・ダネイと松本清張の対談が掲載されたことも話題を呼びました。しかし、『EQ』は1999年7月号で休刊しました。

2000年には光文社から本格ミステリ大賞の選評を掲載する年4回刊行の『EQ Extra ジャーロ』も創刊されています。

EQMMは、その歴史を通じて、数多くのミステリ作家を輩出し、ミステリ文化の発展に大きく貢献しました。アメリカと日本の異なる文化の中で育まれたEQMMとその関連誌の歩みは、ミステリ史を語る上で欠かせないものです。

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