エリコンKD 35 mm 機関砲

エリコンKD 35mm機関砲

エリコンKD 35mm機関砲は、スイスのエリコン社（現在のラインメタル社）によって開発された35mm口径の機関砲です。この機関砲は、対空用途を主眼に置きつつも、様々なプラットフォームへの搭載を可能とする設計がなされており、その多様な運用性が特徴です。

開発の経緯

1950年代前半、エリコン社は35mm口径が対空砲として最適なサイズであるとの結論に至りました。この研究結果に基づき、同社は1950年代後半から本格的に35mm連装高射機関砲の開発を開始しました。初期のプロトタイプである353-Mkを経て、1959年には1-ZLA/353MKマウントと共に発表されました。その後、小改良が加えられた2-ZLA/353MKがGDF-001として製品化され、1960年代初頭より陸上自衛隊に導入されました。

設計の特徴

GDF-001で採用されたKDAは、先行する20mm口径の204-GK（後のKAA）をベースに口径を拡大したもので、ガス圧作動方式を採用しています。送弾機構は、KDAでは2方向からのベルト式、KDBでは1方向からのベルト式でしたが、KDCでは5発入りの挿弾子を使用する方式に変更されました。また、KDEでは自動的な送弾機構と弾倉を選択できる設計となっています。発射速度は基本的には550発/分ですが、車載用のKDEでは200発/分に調整されています。これらの機関砲は、閉鎖機に遊底を使用していますが、1991年からはリヴォルヴァーカノンの開発も開始され、1994年9月に発表、1995年初頭に最初の試射が行われました。このリヴォルヴァーカノンは、4つの薬室を持つシリンダを使用し、ガス圧によって作動、1,000発/分の発射速度を実現しています。このモデルは35/1000と呼ばれ、製品名としてはKDGと命名されました。

各種モデル

牽引型

初期の製品版であるGDF-001は、KDAを連装砲架に配した牽引式対空機関砲です。1980年には照準器をフェランティ社のものに変更、デジタルデータバスを備えたGDF-002が登場し、その後、自己潤滑性材料の採用などの改良が施されたGDF-003へと発展しました。1985年には、全面的な改良版であるGDF-005が発表され、3次元コンピュータ制御のガンキング、レーザー測距儀、砲口初速、気象データなどを基に見越し角を自動算出できるシステムが搭載されました。また、自動装填装置の採用により省力化が図られ、即応弾数も280発に増加しました。砲としてはKDCが用いられています。その後、調整破片型ABM弾であるAHEAD弾が実用化されると、既存のGDFシリーズにもバックフィットされ、AHEAD弾の運用に対応したモデルには新しいモデルナンバーが付与されています。GDF-001/002/003はGDF-006、GDF-005はGDF-007と称されています。また、KDGを単装の砲塔に配したGDF-020では、当初からAHEAD弾の運用に対応しています。これらの牽引式対空機関砲には、当初スーパーフレーダーマウス、後にスカイガードと呼ばれる射撃統制システムが組み合わされ、デジタルデータバスを備えたGDF-002以降はスカイガード・システムとの連接が可能となっています。さらに後継として、Counter-RAM能力を備えたスカイシールドが開発されており、ドイツ連邦軍のMANTISなどではGDF-020と組み合わされています。

車載型

車載型としては、自走式対空砲として利用されることが多いですが、日本ではKDEを歩兵戦闘車の主砲としても採用しています。

艦載型

アメリカ海軍では、352-Mkの連装砲塔の試験が行われ、ペガサス級ミサイル艇やオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲートへの搭載が検討されましたが、最終的には76mm単装速射砲が搭載されました。1960年代中盤からは、エリコン社がKDCを連装に配した艦載用砲架を開発し、GDM-Aとして製品化、イラン帝国海軍のフリゲートに搭載されました。また、イタリアのブレーダ・メッカニカ・ブレシャーナ社も、KDAを連装に配した艦載用砲架GDM-Cを開発し、リビア海軍に採用されています。日本製鋼所（JSW）もGDF-001のライセンス生産経験を活かし、艦載用の単装マウントを開発し、海上保安庁の巡視船に採用されました。その後、KDGを基にした艦載マウントGDM-008が開発され、ミレニアムとも称されています。このGDM-008はAHEAD弾を使用することで、CIWSとしての役割も果たすことができます。

採用国と搭載車両・艦艇（一部）

日本
87式自走高射[[機関砲]]（KDA）
89式装甲戦闘車（KDE）
ドイツ
ゲパルト自走対空砲（KDA）
イギリス
チーフテン マークスマン（KDA）
フィンランド
ITPSV 90 Marksman（KDA）
ポーランド
PLA ロアラ（KDA）
イラン
サーム級フリゲート (GDM-A)
リビア
* ダット・アサワリ (GDM-C)

まとめ

エリコンKD 35mm機関砲は、対空防御を目的として開発されましたが、その多用途性から、陸上、海上、さらには航空機搭載型など、様々なプラットフォームで運用されています。特に、AHEAD弾の登場によって、その有効性は更に向上しており、現代の防衛システムにおいて重要な役割を果たしています。

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