エリザベス・J・フェインラー

エリザベス・ジョセリン・“ジェイク”・フェインラー（Elizabeth Jocelyn "Jake" Feinler、1931年3月2日 - ）は、アメリカ合衆国の情報科学者であり、インターネットの歴史において重要な役割を果たした人物です。

生い立ちと教育

1931年、ウェストバージニア州ホイーリングで生まれたフェインラーは、家族で初めて大学に進学し、1954年にウェスト・リバティー大学で学士号を取得しました。

キャリア

初期のキャリア

大学院では生化学を専攻しましたが、研究を進める中で、大規模なデータベース構築に関心を抱き、化学情報索引作成プロジェクトに携わりました。その後、1960年にスタンフォード研究所（現SRIインターナショナル）に入所し、情報研究部門で「精神薬理学ハンドブック」や「化学プロセス経済学ハンドブック」の開発に貢献しました。

ARPANETとNIC

1972年、フェインラーは、ダグラス・エンゲルバートにスカウトされ、ARPANETの最初のデモのリソースハンドブックを作成。1974年には、ARPANETのネットワーク情報センター（NIC）の計画と運営を支援する主任研究員となりました。

NICは、当初電話と手紙による利用者への問い合わせ対応に加え、人名録（ホワイトブック）、リソースハンドブック（イエローブック）、プロトコルハンドブックの編纂・出版を行いました。その後、ネットワーク・オペレーション・センターが提供されると、NICは名前登録、端末アクセス制御、認証追跡、課金情報を提供し、Request for Comments（RFC）の配布も担当するようになりました。フェインラーは、スティーブ・クロッカー、ジョン・ポステル、ジョイス・K・レイノルズらと協力し、RFCをARPANET、後のインターネットのための公式な技術ノートに発展させました。

NICは、ARCが開発したNLSを用いて、初のオンラインドキュメントへのリンクを提供しました。NICがネットワーク利用者へのサービスを提供することになったため、フェインラーがマネージャーを務める独立したプロジェクトとして設立されました。

1974年、フェインラーのチームは、シンプルなプレーンテキストによるホスト名一覧のフォーマットを定義し、ネットワークの発展に合わせて改訂を重ねました。ホスト一覧はほぼ毎日更新されました。1975年には、国防通信局（DCA）がARPANETを研究用と軍事用ネットワークに分離し、軍事用ネットワークは国防データネットワーク（DDN）と名付けられ、NICはその情報センターとなりました。1976年頃、電子メールとFTPが利用可能になると、NICはネットワークを通じて情報を公開しました。1977年にポステルが情報科学研究所に移り、RFCの編集や番号の割り当て機能も移管されましたが、NICはSRIに残りました。1979年、フェインラーのグループはネームサービスの拡張研究を行い、1982年には、オンライン人名録アクセス用プロトコル「WHOIS」を開発。インターネットの拡大に伴い、ドメインネームシステム（DNS）が設計され、フェインラーのグループはインターネット全体の命名機関となり、トップレベルドメインである.mil、.gov、.edu、.org、.comのドメイン名レジストリを開発・管理しました。

その後のキャリア

1989年にSRIを退職後、NASAエイムズ研究センターでネットワーク要件マネージャーとして、NASAネットワークのNIC管理ガイドライン作成に携わりました。また、初期のインターネットに関する膨大な論文コレクションをコンピュータ歴史博物館に寄贈し、1996年のNASA退職後には同博物館でボランティアとして資料整理を行いました。2010年には、NICの歴史に関する本を出版しています。

受賞歴

2012年には、インターネットソサエティのインターネットの殿堂入りを果たし、2013年には同ソサエティのポステル賞を受賞しました。さらに2024年には、コンピュータ歴史博物館のコンピュータの殿堂にも殿堂入りしています。

ニックネーム「ジェイク」の由来

フェインラーのニックネーム「ジェイク」は、彼女が生まれた当時、家族が姉の名前「メアリー・ルー」に合わせて「ベティ・ジョー」と呼ぼうとしたところ、当時2歳だった姉が「ベビー・ジェイク」のように聞こえたことに由来します。彼女自身は、ベビーが外されて良かったと語っています。

まとめ

エリザベス・ジョセリン・“ジェイク”・フェインラーは、インターネットの黎明期にNICを運営し、DNSの基礎を築いた重要な人物です。彼女の貢献は、現代のインターネットの発展に不可欠なものとなっています。

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