エリダヌス座イプシロン星

エリダヌス座ε星（ε Eri）は、エリダヌス座に位置する4等級の恒星です。太陽系から約10.5光年と比較的近い距離にあり、天文学的な興味を引く存在です。

恒星としての特徴

エリダヌス座ε星は、質量が太陽の0.83倍、半径が0.735倍と、太陽よりもやや小型の恒星です。りゅう座BY型変光星に分類されますが、変光の幅が小さいため、肉眼での観測は困難です。この星は、スペクトルが非常に変化に富んでおり、多くの輝線を示す特徴があります。また、強い磁場を持ち、自転周期は11.2日と比較的速いです。これらの特徴は、エリダヌス座ε星が7億～8億歳程度と、比較的若い星であることを示唆しています。そのため、鉄などの重元素が少ない傾向にあります。

惑星系と塵円盤

エリダヌス座ε星は、少なくとも1つの太陽系外惑星を持つことが確認されています。また、周囲には塵円盤が存在することも観測されており、惑星系の形成過程を研究する上で重要な手がかりを提供しています。

塵円盤

1988年、エリダヌス座ε星の周囲に塵からなる円盤が発見されました。この円盤は、内径35天文単位（au）、外径75auで、太陽系でいうとエッジワース・カイパーベルトの位置に相当します。円盤内には複数のかたまりが観測されており、これらは惑星の存在を示唆するのではないかと考えられています。

塵円盤に関するモデルとして、2つの説が提唱されています。1つは、塵やガスが、太陽系のメインベルトと天王星軌道に相当する位置に集中し、帯状のベルトを形成しているという説です。もう1つは、カイパーベルトのような外側の塵円盤から主星に向けて塵やガスが広がっているという説です。スピッツァー宇宙望遠鏡の観測結果から、内側と外側の2つの小惑星帯が存在するという説が有力になりました。内側の小惑星帯は主星から3auの位置に、外側の小惑星帯は20auの位置にあるとされています。NASAのSOFIAによる観測でも、この説を支持する結果が得られています。

惑星系

2000年には、視線速度の変化により、エリダヌス座ε星bという惑星が発見されました。この惑星は、主星から3.39au離れた位置にあり、木星の1.55倍の質量を持つ巨大ガス惑星です。軌道離心率0.702という歪んだ軌道を約7年で公転する、エキセントリック・プラネットでもあります。ハッブル宇宙望遠鏡によるアストロメトリー観測でも確認されています。

さらに、塵円盤の形状から、軌道長半径約40auの場所に、公転周期約290年、質量が木星の10％程度の惑星が存在する可能性が示唆されていますが、2017年5月現在、観測による裏付けは得られていません。

主星に近い場所には塵円盤が観測されていないため、現在の太陽系の形成と進化のモデルに照らし合わせると、地球型惑星が存在する可能性も考えられます。およそ0.53auの軌道に地球のような惑星があれば、生命居住に適していると考えられています。

名前の由来

2015年、国際天文学連合によって、エリダヌス座ε星とε星bに固有名が与えられました。それぞれ、「Ran」（ラーン）と「AEgir」（エーギル）と名付けられ、北欧神話の海の神に由来しています。

SF作品での扱い

エリダヌス座ε星は、太陽に比較的似ていることから、かつて知的生命体が存在する可能性が考えられ、オズマ計画のターゲットにもなりましたが、文明の痕跡は見つかっていません。しかし、その特徴からSF作品、特にスペースオペラで頻繁に扱われる人気の恒星です。

近隣の恒星

エリダヌス座ε星に最も近い恒星系は、ルイテン726-8で、5.22光年離れています。

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