オスリス山

概要

オスリス山（古代ギリシア語ではオトリュス山）は、ギリシャ共和国の中央部に位置する山脈です。テッサリア地方と中央ギリシャ地方の自然境界を形成しており、地理的にはフティオティダ県からマグニシア県にかけて広がりを見せています。特に山頂付近は、両県の県境地帯に位置しています。

この山脈には、ゲラコヴニ（Gerakovouni）、ギウジ（Gkiouzi）、ピリウラス（Piliouras）といった複数の峰があり、中でも最高峰であるギウジは海抜1,726メートルを誇ります。山塊は東西におよそ35キロメートル、南北に約25キロメートルにわたって広がっています。地理的な特徴として、北東にはパガシティコス湾、南にはマリアコス湾が位置しています。主要な都市からの距離は、アルミロスの南19キロメートル、ラミアの北東27キロメートル、ヴォロスの南西44キロメートル地点に山頂があります。

オスリス山の山頂部は森林限界を超えた植生が見られ、地質的にはオフィオライトで構成されています。山岳地帯の人口密度は比較的に低く、点在する小さな村落が主な居住地となっています。北西のアナヴラ、北東のココトイ、南のパレオケラシア、南西のネライダなどがそうした村々です。また、エニペアス川はオスリス山の西側の麓に源を発し、ファルサラ付近を流れてからピニオス川に合流します。

神話

オスリス山は、古代ギリシアの神話において極めて重要な舞台として描かれています。ホメロス以降、特に詩人ヘシオドスがその著書『神統記』の中で言及したことにより広く知られています。

最も有名な神話は、天空神ゼウス率いるオリンポスの神々と、クロノスを盟主とするティタン族との間で繰り広げられた大戦争、ティタノマキアの物語です。この壮絶な闘争において、オリンポスの神々が本拠地をオリンポス山に置いたのに対し、ティタン族はオスリス山を拠点としました。両陣営は10年もの長きにわたり、互いに譲らない激しい戦いを繰り返したと伝えられています。

また、オスリス山は、半人半馬の種族であるケンタウロスや、テッサリア地方に住むラピテス族の一部が居住していた土地としても知られています。養蜂の創始者とされるアリスタイオスは、この地の近くにあるプティアに住み、アタマンティオン平原やオスリス山、アピダノス川流域で羊を放牧していたと言われています。さらに、ローマの詩人オウィディウスの『変身物語』によれば、不死身の英雄カイネウスもオスリス山に居を構えていました。

ラピテス族の王ペイリトオスとヒッポダメイアの結婚式で起きたラピテス族とケンタウロスの間の争いでは、ケンタウロスたちが戦いの際に樹木を引き抜いて武器としたため、オスリス山と隣接するピリオス山の森林が著しく失われたという伝承も残っています。

神話に登場するオスリス山のニンフは、最高神ゼウスあるいは河の神スペルケイオスの娘とされ、その子孫であるケラムボスはリラを用いた最初の音楽家として語られています。また、オスリス山のニンフと考えられているオトレーイスは、ゼウスとアポロンの両神から愛され、ゼウスとの間の子であるメリテウスは、後にテッサリア地方の重要な都市の一つであるメリテを建設したとされています。

現代における側面と出来事

オスリス山は、現代においてもその自然環境が重視され、保護の対象となっています。欧州連合の野鳥指令に基づき、オスリス山の多くの区域がナチュラ2000の保護地域に指定されています。これは、特に猛禽類などの貴重な野鳥の生息地を守り、無計画な皆伐や開発による伝統的な生息地の破壊を防ぐことを目的としています。「オスリス山、グクラス山とパレオケラシア渓谷」と呼ばれるこの保護地域（ID GR1430006）は、南へ伸びる尾根や東部のパレオケラシア渓谷、北部のグクラス山など、広い範囲を含んでいます。

近代史においては、いくつかの注目すべき出来事がありました。1936年から1942年にかけて、オスリス山西端にあったクシニャダ湖が干拓され、農地へと姿を変えました。また、1991年2月5日には、ロッキード社製のC-130ハーキュリーズ輸送機がオスリス山に墜落し、搭乗していた63名全員が犠牲となる痛ましい事故が発生しています。

近年では、インフラ整備の一環としてオスリストンネルの建設が進められています。これは、ラミアとクシニャダを結ぶ中央ギリシャ高速道路の一部を構成する全長2.9キロメートルのトンネルで、完成すればギリシャ国内でも有数の長さを誇るトンネルとなる予定です。2008年に他の高速道路区間と共に着工されましたが、ギリシャ政府の債務危機の影響を受け、2011年に建設が一時停止されました。しかし、2019年には南部の残りの区間と共に建設が再開されており、完成が待たれています。

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