マグニシア県

マグニシア県は、ギリシャ中部に位置するテッサリア地方を構成する行政区の一つで、県都はヴォロスです。古代にはマグネシアと呼ばれていました。人口は約21万人（2005年）で、ギリシャの主要都市であるアテネとテッサロニキの中間に位置しています。

名称の由来

マグネシア県の名称は、この地に居住していた古代民族マグネテス人に由来しています。また、古代にはアナトリア半島にもマグネシア人が入植し、二つの都市を建設しました。滑石の鉱山があり、その滑石から作られた白色の粉がマグネシアと呼ばれ、マグネシウムの語源となりました。磁石（マグネット）の語源とする説もありますが、異説も存在します。

地理

マグニシア県は、フティオティダ県、ラリサ県と県境を接し、東部はエーゲ海に面しています。かつてはスポラデス諸島もマグニシア県に所属していましたが、現在は別の行政区となっています。年間200万人以上の観光客が訪れ、特に夏季は賑わいます。

県東部のピリオ半島には、県最大のピリオ山がそびえ、県北東部のラリサ県との県境にはマウロヴニ山脈が、フティオティダ県との県境にはオスリス山があります。ピリオ山やケンタウロス山は、自然景観が美しく、観光地としても有名です。山頂や中腹には、聖人や生神女マリアを祀る教会が点在し、古代の遺物や中世以前のイコン画などが残されています。

県内にはアルミロス平野とヴォロス＝ヴェレスティノ平野という2つの平野が広がっています。大きな川がないため水路は発達していませんが、ピリオ山からはアナヴロス川、プラタノレマ川、クシリアス川といった小さな川が流れています。

県北部にはカルラ湖があり、スルピ湾付近には湿地帯が広がっています。この湿地帯は、アルミロス近郊のナラの森林とともに保護地域としてNatura 2000に登録されています。海岸部には、地震による陥没で形成されたパガシティコス湾が広がっています。

主要な都市

県内にはヴォロス、ネア・イオニア、アルミロスなどの都市があります。県都であるヴォロスは、テッサリア地方第2の都市であり、ギリシャ国内で3番目に繁栄している商業港となっています。県人口の大半は、県東部とパガシティコス湾沿岸に集中しています。

気候

県の平均気温は17℃、平均降水量は年540mmです。8月には気温が37℃から38℃まで上昇することもあります。気候は地域によって異なり、パガシティコス湾沿岸はやや多湿で、ネア・イオニアはやや乾燥、ヴェレスティノやアルミロスでは大陸性気候となります。

歴史

古代ギリシャ神話では、マグネシア県はマグネースが支配した地域とされています。また、神話の英雄イアーソーンやペーレウスとその子アキレウスの故郷としても知られています。磁石の語源とされる「マグネシアの石」が産出されたことでも有名です。紀元前7世紀以前には、マグネシアの都市国家が植民都市を建設し、現在のトルコのマニサやメンデレス川沿いにマグネシアという都市を作りました。

紀元後5世紀には、この地域にキリスト教が浸透し、ネア・アンヒアロスには多くのバジリカが建設されました。その後、ピリオ山にはペリオリティカ様式の寺院や教会、修道院が建てられ、現在も数多く残っています。

現在のマグネシア県は、1947年にラリサ県から分割して創設されました。2006年には大規模な洪水が発生し、大きな被害を受けました。

行政区画

マグニシア県は、カリクラティス改革により複数の自治体（ディモス）に再編されました。以前は郡（エパルヒア）が存在しましたが、現在は法的な位置づけはありません。

古代都市

パガサエ、イオルコス、デメトリアス、ネア・アンヒアロスといった古代都市が存在しました。

交通

19世紀後半には鉄道が敷設され、アテネとテッサロニキを結ぶ国道1号線が県内を通過しています。ネア・アンヒアロスには空港があり、ヨーロッパ各地と空路で繋がっています。

著名な出身者

マグネシア県出身の著名人には、イアーソーン、ペーレウスなどの神話の英雄、司教ハラランボス、詩人リガス・ヴェレスティンリス・フェレオス、画家ジョルジョ・デ・キリコ、作家アレクサンドロス・パパディアマンディス、作曲家ヴァンゲリス、ギリシャ大統領フェドン・ギジキスなどがいます。

マグニシア県は、豊かな自然、古代からの歴史、そして多様な文化が融合した魅力的な地域です。

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