オチルト・チェチェン・ハーン

オチルト・チェチェン・ハーン：ホシュート部を率いた聡明なる王

オチルト・チェチェン・ハーン（またはオチルトゥ・ツェツェン・カーン）は、17世紀のオイラト部族連合において、ホシュート部を率いた王です。「チェチェン」とはオイラト語で「聡明」を意味し、彼の知性と指導力を表しています。彼はチンギス・ハーンの弟、ジョチ・カサルの末裔であり、グーシ・ハーン朝の始祖トゥルバイフの兄、バイバガスの長子として生まれました。また、ジュンガル部のガルダン・ハーンは、彼の孫娘婿にあたります。

清朝との関係と「チェチェン・ハーン」の称号

オチルトは早くも1647年頃には清朝に入貢し、ラクダや馬などを献上していました。当時の彼は「オチルト・タイジ」と呼ばれていましたが、1666年にダライ・ラマ五世から「チェチェン・ハーン」の称号を授与され、その名が歴史に刻まれることになります。

ガルダンとの対立と最期

同じオイラト部族連合に属するジュンガル部のガルダン・タイジとは、当初は共に清朝に入貢していましたが、次第に関係が悪化し、1677年5月頃にガルダンの襲撃を受け、殺害されました（または捕虜になったとも伝えられています）。

オチルト殺害の背景

オチルト殺害の背景には、ガルダンと当時のチベット政権の要人であったサンゲとの策略があったとされています。ゲルク派の勢力拡大を図るダライ・ラマ五世は、政務官である第巴（ディバ）を設置しましたが、ガルダンがダライ・ラマ五世の元で仏教修行をしていた頃、そのディバを務めていたのがサンゲでした。サンゲはホシュート部によるチベットへの干渉を嫌い、ガルダンにホシュート部の駆逐を持ちかけました。これに乗じたガルダンは、オイラト部族連合における自らの地位向上を企図し、オチルトを攻撃したのです。

オチルト軍を破ったガルダンは、鹵獲した弓矢などを清朝に献上しましたが、康熙帝はこれを突き返したと言われています。オチルト殺害後、ガルダンはダライ・ラマ五世から「ボショクト・ハーン」の称号を与えられ、さらに清朝からもハーン即位を承認されたことで、名実ともにオイラト部族連合の覇者となりました。

一族

オチルトの一族は、チンギス・ハーンの弟ジョチ・カサルに遡ります。彼の父バイバガスはホシュート部初代ハーンであり、息子には額爾德尼、孫娘にはガルダンに嫁いだアヌなどがいます。また、弟には阿巴賴諾顏、叔父にはグーシ・ハーン朝を築いたトゥルバイフがいます。

オチルト・チェチェン・ハーンは、清朝との関係、ガルダンとの対立、そしてその一族を通して、17世紀のオイラトの歴史を語る上で欠かせない人物です。彼の生涯は、当時の国際関係や部族間の権力闘争を理解するための重要な手がかりとなるでしょう。

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