ホシュート

ホシュート（和碩特）とは

ホシュート（ᠬᠣᠱᠤᠳ、モンゴル語：Хошууд、中国語：和碩特）は、モンゴル系遊牧民族オイラトを構成する一部族であり、八部オイラトの一つとして知られています。一時、オイラト部族連合の盟主となるほど強盛を誇りました。呼称は、カルムイク語（オイラト語）に準じたホシュートのほか、現代モンゴル語に準じたホショード、チベット語に準じたホショトなどの名で呼ばれます。

歴史

起源

オイラトの年代記『四オイラト史』によると、ホシュートの起源はチンギス・カンの同母弟ジョチ・ハサルに遡るとされています。ハサルの子孫は代々ホルチン部の部族長を務めていましたが、ホルチン部の系譜にはホシュート部を創始した人物の記録がなく、氏族名もボルジギン氏（ホルチン部）とオジエト氏（ホシュート部）とで異なるため、この説は疑わしいとされています。しかし、ホシュート部のオジエト氏がモンゴルの一部族であったことは確かであり、トゴン・タイシとエセン・[[ハーン]]のオイラト帝国時代にオイラトの傘下に入ったモンゴル部族がホシュート部となり、そのままオイラトに組み込まれたと考えられています。

アルタン・[[ハーン]]のオイラト征伐

モンゴルの年代記『蒙古源流』によると、16世紀後半、モンゴルのトゥメト部長アルタン・[[ハーン]]がオイラト征伐に乗り出し、ホイト部、トルグート部、バートト部、ドルベト部、ホシュート部などのオイラト諸部族の首長を殺害したとされています。これ以降、モンゴルとオイラトの対立が激化しますが、基本的にモンゴル側が宗主権を握っていました。

モンゴルからの独立

1620年、オイラトのトルグート部とジュンガル部がモンゴルのハルハ部を攻撃したことをきっかけに、オイラトとモンゴルの間で戦闘が勃発しました。1623年、四オイラト連合軍はハルハ部長でアルタン・[[ハーン]]のウバシ・ホンタイジらを殺害し、モンゴルの従属下から独立を果たしました。

ホシュート部の内乱とヴォルガへの移住

1625年、ホシュート部のチョクルとその異母兄弟バイバガスとの間で遺産相続争いが起こり、戦闘でバイバガスが戦死しました。バイバガスの弟であるトゥルバイフとクンデレン・ウバシは、イシム川からトボル川までチョクルを追撃し、1630年にヤイク川でチョクルの部民を殺害しました。

この内乱は姻戚関係にある他の部族を巻き込むほどに拡大したため、1630年、トルグート部長のホー・オルロクは同族間の争いを避けるべく、一部のホシュート部民とドルベト部民を率いてヴォルガ河畔へ逃れ、その地に定住しました。彼らが後のヴォルガ・カルムイクとなり、現在のカルムイク人の祖先となりました。

ホシュート部の青海遠征とチベット支配

ホシュート部長となったトゥルバイフは1636年、チベット仏教ゲルク派の要請を受け、青海のチョクト・ホンタイジを討伐するために青海遠征を敢行しました。トゥルバイフは冬の結氷期を利用して1万のオイラト軍を青海に侵攻させ、翌年チョクト・ホンタイジ率いる3万の軍勢を打ち破りました。この功績により、トゥルバイフはゲルク派のダライ・ラマ5世から「持教法王」の称号を授けられ、「グーシ・ノミーン・ハーン（国師法王）」となりました。これ以降、オイラトがチベット仏教ゲルク派の施主となり、これまでチンギス・カンの男系子孫のみが名乗っていた「ハーン」号を、オイラトも名乗るようになりました。

グーシ・[[ハーン]]は青海に呼び寄せた配下のオイラト人を率いてチベットを平定し、1642年にチベットを統一してチベット王に即位しました。この時、グーシ・[[ハーン]]がダライ・ラマ5世をチベット仏教界の教主に推戴したため、現在に至るダライ・ラマ政権（ガンデンポタン）が始まることとなりました。グーシ・[[ハーン]]の子孫はその後も青海草原で遊牧を続けながら、代々チベット王の位に就きました。この王統はグシ・ハン王朝と呼ばれています。彼のチベット平定に従軍し、そのまま青海草原をはじめとするチベット各地に住み着いたホシュートは、オイラト本国に残留した集団と区別して、青海ホショトと呼ばれます。

1675年、オイラト本国のホシュート部長オチルト・チェチェン・ハーンはジュンガル部長のガルダンと対立し、翌年捕虜となりました。これにより、これまでオイラトの盟主であったホシュート部は、ジュンガル部に盟主の座を奪われることとなりました。

ジュンガルのチベット侵攻とホシュートの衰退

1717年、ジュンガル軍がチベットに侵攻し、ラサを占拠しました。この事件をきっかけに、清朝がジュンガル部への圧力を強め、1755年にはジュンガル帝国を滅ぼしました。

ジュンガル滅亡後のホシュート

1755年、清朝はジュンガル部の相続争いからオイラトが内乱状態になったのに乗じてオイラト本国に出兵し、ジュンガル帝国を滅ぼしました。ジュンガル帝国の滅亡後、各地にいたオイラト諸部は清朝によって遊牧地を与えられ、満州人の八旗制度に準じた旗（ホシューン）に分けられました。

ホシュートは清朝の支配下に入り、その勢力は大きく衰退しました。

現在、ホシュートはモンゴル国や中国などに居住しており、独自の文化を保持しながら生活しています。

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