オトク (モンゴル)

オトク（Otoγ）の歴史的意義

オトク（Otoγ）は、モンゴルの北元時代に存在した社会集団を指す名称で、遊牧民の生活様式を反映した重要な社会構造の一形態です。この集団における特筆すべき点は、元々はチンギス・カンによって整備された千人隊制度に基づいていたものの、北元時代の混乱の中で血縁的な結束が藤分し、新たに地縁的な集団として再編成された点にあります。オトクは北元時代の遊牧社会の基盤を成し、トゥメン（万人隊）と呼ばれる複数のオトクによって構成されていました。

オトクの語源と初期の背景

「オトク」という言葉は、ソグド語の「オーターク（ōtāk）」に由来し、「国土」や「地域」を意味しています。明朝では「8オトク・チャハル」などのように、「営」としても呼称されることがありました。1206年にモンゴル帝国を建国したチンギス・カンは、遊牧民を十進法に基づいて再編し、10人隊（アルバン）、100人隊（ジャウン）などの軍勢を成立させました。この千人隊制度はモンゴルの遊牧社会における重要な構造を形成し、やがて北元時代においてオトクとして発展しました。

北元時代のオトク

北元時代において、オトクの概念が現れた時期は諸説あり、一般的には16世紀以降のことと考えられています。エセン・ハーンの時代には元朝収入の都市制度が一部維持されていましたが、彼の死後、多くの制度は崩壊しました。ダヤン・ハーンの時代においては、彼がモンゴルの多くの部族を再統一し、これを「ダヤン・ハーンの6トゥメン」として歴史に記録しました。その中で、ダヤン・ハーンに仕えた部族たちはオトクという社会集団に組織され、地縁的な絆を強めました。

社会的変化とオトクの衰退

しかし、17世紀にダイチン・グルン（清朝）が成立すると、オトクは徐々に「ホショー（旗）」に取って代わられ、社会の構造が大きく変わることとなります。この時期を境に、オトクとしてのまとまりは失われ、自身の社会的アイデンティティも薄れていきました。それでも、オルドス市オトク旗やオトク前旗といった名称は、地域名として今に残り、オトクの歴史的背景を語っています。

オトクの具体的な構成

北元時代のオトクは、6つの主要部族から構成され、各部族はそれぞれに独自の遊牧集団を持ちました。「8オトク・チャハル」や「12オトク・ハルハ」はその一例であり、オトクはその名の通り、特定の数に基づく分類がされていました。また、部族ごとの支配体系や血縁関係も影響し合いながら、各オトクは独立した社会単位として存在していました。

結論

オトクの歴史は、モンゴルの遊牧生活や社会構造の変遷を追う上で極めて重要です。その概念は、時代とともに変化し、社会の動乱を受けながらも、地域の集団としてのアイデンティティを形作ってきました。清朝の支配下に入った後はその存在感を失いつつも、地域名として現代に息づいている点でも、オトクの影響を感じることができます。それ自体が、モンゴルにおける遊牧社会の歴史を物語っています。

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