オモダル・アヤカシコネ

オモダル（淤母陀琉、面足）とアヤカシコネ（阿夜訶志古泥、綾惶根）は、日本神話に登場する男女一対の神です。神武天皇の遠い祖先に当たります。『古事記』では、兄神を淤母陀琉神、妹神を阿夜訶志古泥神と表記し、『日本書紀』では、それぞれ面足尊、綾惶根尊と記されています。

『古事記』において、オモダルとアヤカシコネは神世七代の第六代の神とされており、兄のオモダル神は男神、妹のアヤカシコネ神は女神です。オモダルは「完成した、不足がない」という意味を持ち、アヤカシコネは「非常に畏れ多い」という美称です。これらの名前が示すように、二神は人体の完全性を神格化した存在と解釈されています。

オモダルの名前の解釈として、「淤母」を「面」、「陀琉」を「足りる」と捉え、男子の顔つきが満ち足りている様子を表すとする説があります。また、アヤカシコネの「阿夜」は感動詞、「訶志古」は「畏し」の語幹、「泥」は親称と解釈し、「まあ、畏れ多い女子よ」という意味とされています。これらの解釈は、性器崇拝と関連付けられ、男根や女陰に対する畏敬の念が、神名に込められていることを示唆しています。

中世には、神仏習合の影響により、神世七代の第六代であることから、仏教における欲界の最高位である第六天魔王の垂迹とみなされるようになりました。特に修験道では、この考え方が広まり、二神は広く信仰を集めました。明治時代の神仏分離政策により、第六天魔王を祀っていた寺院の多くは神社に改められ、「第六天神社」、「胡録神社」、「面足神社」などと名称を変更しました。

オモダルとアヤカシコネは、以下の神社で祀られています。

各地の第六天神社
近津神社（茨城県久慈郡大子町）
近津神社（茨城県久慈郡大子町下野宮）
二荒山神社　境内社（栃木県宇都宮市馬場通り）
健男霜凝日子神社（大分県竹田市神原）
熊野速玉大社（和歌山県新宮市新宮）
熊野那智大社（和歌山県東牟婁郡那智勝浦町）
穏田神社（東京都渋谷区神宮前）
第六天神社（宮城県名取市増田）



これらの神社は、オモダルとアヤカシコネの信仰が、今日にも受け継がれていることを示しています。


参考文献
倉野憲司 校注『古事記』（改版）岩波書店〈岩波文庫〉、2007年12月18日。
中山郁 著「オモダル・〔アヤ〕カシコネ」、國學院大學日本文化研究所 編『神道事典』（縮刷版）弘文堂、1999年5月15日。
西宮一民 校注『古事記』新潮社〈新潮日本古典集成（新装版）〉、2014年10月30日。



関連項目
天地開闢
日本の神の一覧
日本の神の家系図

外部リンク
於母陀流神 – 國學院大學 古典文化学事業
* 阿夜訶志古泥神 – 國學院大學 古典文化学事業

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