第六天神社

関東地方に点在する第六天神社：その歴史と謎

第六天神社は、関東地方、特に旧武蔵国とその周辺地域に多く存在する神社です。かつては神仏習合の時代、第六天魔王（他化自在天）を祀る神社として創建されました。しかし、明治時代の神仏分離令により、多くの第六天神社は祭神を神世七代の第六代であるオモダル・アヤカシコネ（面足命・惶根命）に変更しました。

『日本民俗学 No.127』によると、江戸時代末期には関東地方に300社以上の第六天神社が存在したと推測されます。しかし、神仏分離令の影響で、多くの神社が改称されたり、他の神社に合祀されたり、末社となったりしました。現在では、宗教法人格を持つ独立した神社は36社に過ぎず、珍しい存在となっています。

特に東京都と千葉県の県境付近に多く、神奈川県内では神社庁下の独立神社はわずか2社です（第六社や大六天神社を含めると5社）。かつては千葉県香取市の山倉大神が、神仏分離令までは大六天王（第六天魔王と同一視）を祀り、大六天王社の総社とされていました。

第六天神社の分布は、東日本、特に旧武蔵国、旧相模国、旧伊豆国などに集中しており、西日本ではほとんど見られません。この理由として、織田信長が第六天を篤く信仰していたため、豊臣秀吉が信長の神威を恐れ、西日本の第六天神社を廃絶したという説があります。信長が「第六天魔王」を自称していたという説は、イエズス会宣教師ルイス・フロイスの書簡に基づいていますが、それを裏付ける明確な史料は存在しません。

さらに、祭神についても、第六天魔王から神世七代の神に変更された例以外に、高木の神（タカミムスビ）を祭神とする神社や、天神を祀る神社など、多様な形態が見られます。さいたま市岩槻区の武蔵第六天神社では、天狗と関連付けられています。

主な第六天神社

現在でも「第六天」または「大六天」を社名に残す主な神社を以下に示します。関東地方を中心に、東北地方や中部地方にも存在しますが、長野県や静岡県以西にはほとんど見られません。宗教法人格を持つ神社には☆を付記しています。

東北地方

宮城県：大六天神社（遠田郡美里町）、第六天神社（名取市）☆、大六天神社（仙台市）
福島県：大六天麻王神社（郡山市）

関東地方

群馬県：大六天（利根郡みなかみ町）
栃木県：第六天神宮（芳賀郡茂木町）、山倉大六天王神社（真岡市）
茨城県：第六天神社（猿島郡五霞町）（2社）☆、皇産霊神社（坂東市）☆、大六天神社（複数）
埼玉県：第六天神社（さいたま市）（複数）☆、第六天社（さいたま市）（複数）☆、大六天（所沢市）、第六天神社（狭山市）、大六天（飯能市）、第六天社（北葛飾郡杉戸町）☆、大塚大六天神社（志木市）
千葉県：第六天社（市川市）☆、第六天神社（千葉市）（複数）☆、大六天神社（千葉市）（複数）☆、大六天尊（船橋市）、大六天王宮（船橋市）、大六天王神社（富津市）
東京都：榊神社（台東区）☆、第六天社（目黒区）、天神社（杉並区）☆、第六天神社（中野区）、大六天社（世田谷区）、榎大六天神（板橋区）、大六天根岸神社（大田区）、代六天根ヶ原神社（大田区）、第六天神社（国立市）、第六天神社（立川市）☆、大六天神社（八王子市）、大六天魔王神社（八王子市）、大六天社（町田市）☆、第六天神社（町田市）
神奈川県：第六天神社（茅ヶ崎市）☆、第六天神社（横浜市泉区）☆、第六社（横浜市戸塚区）（2社）☆、第六天稲荷社（横浜市）、大六天神社（横須賀市）☆

中部地方

新潟県：第六天神社（南魚沼市）☆
長野県：平井大六天社（諏訪市）、第六天王宮（上伊那郡辰野町）、魔王社（岡谷市）、大六天社（伊那市）☆、西山神社（伊那市）☆、大六天神社（北都留郡丹波山村）☆、大六天社（韮崎市）☆、第六天魔王（山梨市）、魔王天神社（西八代郡市川三郷町）☆、魔王天神社（南都留郡鳴沢村）☆
静岡県：第六天宮（御殿場市）☆、第六天神社（御殿場市）（複数）☆、大六天尊神社（熱海市）、大六天神社（賀茂郡河津町）、第六天神社（富士市）☆、大六天神社（富士市）、第六天神社（富士宮市）（複数）☆、第六天神社（静岡市）

改称された旧第六天神社

かつて第六天神社または大六天神社と呼ばれていたが、現在では改称されている神社も多く存在します。中には、過去に第六天神社を合祀した神社も含まれます。例として、千葉県山倉大神（元総社）、東京都の高木神社、穏田神社、恵比寿神社、国領神社、神奈川県の赤城神社などがあります。

第六天神社は、その歴史と分布に多くの謎を残す、独特な神社です。今後の研究が待たれます。

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