オリジナル・デラニー&ボニー

オリジナル・デラニー&ボニー

『オリジナル・デラニー&ボニー』は、アメリカ合衆国のミュージシャン夫婦、デラニー・ブラムレットとボニー・ブラムレットによるデュオ、デラニー&ボニーが1969年にエレクトラ・レコードよりリリースしたスタジオ・アルバムです。彼らにとって公式なデビュー作にあたりますが、興味深いことに、その次に発表されるアルバム『ホーム』よりも後の時期に録音された作品です。原題は『The Original Delaney & Bonnie』です。

制作背景

デラニー&ボニーは、スタックス・レコードでの初期レコーディングを経て活動を本格化させました。ボビー・ウィットロックらを迎えて「デラニー&ボニー&フレンズ」として、カリフォルニア州サンフェルナンド・バレーを拠点に精力的なライブ活動を行い、その実力が認められてエレクトラ・レコードとの契約に至りました。

このアルバムのリリース前、彼らのデモ音源を耳にしたジョージ・ハリスンは、彼らが既にエレクトラと契約していることを知らず、自身のレーベルであるアップル・レコードへの加入を熱心に勧めました。ハリスンは本作をアップルから「SAPCOR 7」というカタログ番号でリリースする計画まで進めましたが、エレクトラからの強い抗議を受け、実現には至りませんでした。この幻となったアップル盤LPは、現在も現存するアップル・レコードのイギリス盤LPの中でも特に希少価値の高いアイテムとして知られており、かつて3400ドルを超える高額で取引された記録も残っています。

アルバムのジャケットには原題に加え「Accept No Substitute」（代替品を受け入れるな）という記載があり、これが副題、あるいは本作の別タイトルと見なされることもあります。また、オリジナルのLP盤のレーベル面や、『ビルボード』誌の1969年5月24日号に掲載された広告では、『The Original Delaney & Bonnie & Friends』という名義で紹介されていました。

収録曲と関連エピソード

本作に収録されている楽曲のいくつかには特筆すべきエピソードがあります。例えば、「闘いが終わる時 (When the Battle Is Over)」は、後にニューオーリンズ音楽の巨匠として知られるドクター・ジョン（マック・レベナック）が提供した楽曲です。「老人 (Dirty Old Man)」と「団結しよう (Get Ourselves Together)」の2曲は、1968年8月にスタックス・レコードで行われたセッションで一度録音されており、本作ではその後の再演ヴァージョンが収められています。『ホーム』のリマスターCDでは、これらの楽曲の初期ヴァージョンがボーナス・トラックとして追加収録されました。

また、「団結しよう」と「ゲットー (Ghetto)」の2曲は、本作のリリースに先立ち、ゴスペル〜ソウル界の大御所であるザ・ステイプル・シンガーズが1968年のアルバム『Soul Folk in Action』でいち早くカヴァーしています。

シングルとしては、「団結しよう」が1969年4月に先行カットされ、続く5月には「闘いが終わる時」もシングルとして発表されましたが、残念ながらいずれも主要な音楽チャートに登場することはありませんでした。

反響と評価

商業的には、アメリカの主要アルバムチャートであるBillboard 200で最高175位を記録するにとどまりました。

批評家からの評価は比較的良好でした。著名な音楽評論家であるロバート・クリストガウは、1969年6月22日付の『ニューヨーク・タイムズ』紙に掲載されたソウルミュージックのデュエット特集記事の中で、本作を「優れた白人のアルバムだ」と評し、楽曲にストリングスのアレンジを加えた人物が、歌声を聴いてデラニーとボニーを白人だと信じられなかったという逸話を披露しています。オールミュージックのレビュアー、ロニー・D・ランクフォードJr.は本作に5点満点中3.5点を付け、「翌年にエリック・クラプトンのプロジェクト、デレク&ザ・ドミノスが発表する名盤『いとしのレイラ』に収録された音楽性と同様の、ソウルとロックンロールが見事に融合したサウンド」を聴かせていると評価しています。

収録曲

1. 団結しよう "Get Ourselves Together" (Bonnie Bramlett, Carl Radle) – 2:27
2. いつの日か "Someday" (B. Bramlett, Doug Gilmore, Jerry Allison) – 3:29
3. ゲットー "Ghetto" (B. Bramlett, Homer Banks, Bettye Crutcher) – 4:55
4. 闘いが終わる時 "When the Battle Is Over" (Mac Rebennack, Jessie Hill) – 3:35
5. 老人 "Dirty Old Man" (Delaney Bramlett, Mac Davis) – 2:32
6. もっと愛し続けて "Love Me a Little Longer" (B. Bramlett) – 2:57
7. 堪忍袋の緒が切れた "I Can't Take It Much Longer" (D. Bramlett, Joey Cooper) – 3:09
8. ドゥ・ライト・ウーマン "Do Right Woman, Do Right Man" (Chips Moman, Dan Penn) – 5:24
9. 十字架の兵士 "Soldiers of the Cross" (Traditional) – 3:11
10. 愛の贈りもの "Gift of Love" (D. Bramlett, M. Davis) – 2:54

主な参加ミュージシャン

デラニー・ブラムレット - ボーカル、ギター
ボニー・ブラムレット - ボーカル
レオン・ラッセル - ギター、ピアノ
ジェリー・マギー - ギター
ボビー・ウィットロック - オルガン、バッキング・ボーカル
カール・レイドル - ベース
ジム・ケルトナー - ドラムス
ボビー・キーズ - サクソフォーン
ジム・プライス - トランペット、トロンボーン
リタ・クーリッジ - バッキング・ボーカル
* ジミー・ハスケル - ストリングス・アレンジ (M3, M8)

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