オルガン交響曲第3番 (ヴィエルヌ)

ルイ・ヴィエルヌ：オルガン交響曲第3番 嬰ヘ短調 作品28

フランスの作曲家ルイ・ヴィエルヌが1911年に完成させた『オルガン交響曲第3番』嬰ヘ短調 作品28は、彼の6曲のオルガン交響曲の中でも特に優れた作品として高く評価されています。パリのノートルダム大聖堂でオルガニストを務めたヴィエルヌは、オルガンを単なる典礼楽器からコンサート楽器へと発展させた師シャルル＝マリー・ヴィドールら、フランスにおける世俗的なオルガン交響曲の伝統を受け継いでいました。この伝統は、名工アリスティド・カヴァイエ＝コルが製作した革新的なオルガンに大きく触発されたものでした。

ヴィエルヌはこの交響曲を1911年3月18日に作曲し始めました。その年の夏休みには、9月14日をノルマンディー地方のサン・ヴァレリー・アン・コーで、献呈先となるマルセル・デュプレの家族と共に過ごしています。作品はマルセル・デュプレに献呈され、彼自身によって1912年3月にパリのサル・ガヴォーにて世界初演が行われました。楽譜は同年にデュラン出版から初めて刊行されています。後年には、2007年にカールス出版社より、ジョン・ラウクヴィクとデイヴィッド・サンガーの校訂によるヴィエルヌのオルガン作品全集の一部として、批判校訂版が出版されています。

構造と音楽

この交響曲は以下の5つの楽章で構成されています。

1. アレグロ・マエストーソ（Allegro maestoso）
2. カンティレーナ（Cantilène）
3. 間奏曲（Intermezzo）
4. アダージョ（Adagio）
5. 終曲（Final）

第1楽章：アレグロ・マエストーソは、ソナタ形式で書かれており、開始から攻撃的で戦闘的な性格を帯びています。切り込むような鋭いリズムが楽章全体を支配し、その特徴的なリズムはフランス風序曲を彷彿とさせます。展開部では、より叙情的な第2主題が巧妙に第1主題と組み合わされ、半音階的な進行が効果的に用いられています。

第2楽章：カンティレーナは、前の楽章とは一転して柔らかく、静謐な雰囲気を持ちます。オーボエを思わせる、長く叙情的なメロディーが特徴的です。

第3楽章：間奏曲は、三拍子のスケルツォ風の性格を持ちます。どこかグロテスクな、遊び心のある雰囲気も見られ、独特の世界を創出しています。第2主題はピッツィカート風の動きで導入されます。

第4楽章：アダージョは「クワジ・ラルゴ」（ほぼラルゴ）と記されています。第2楽章と同様にホモフォニックで柔らかい響きを持ちますが、ワーグナーの影響を思わせる半音階が特徴的に使用されています。中間部の朗唱風メロディーは、途切れることなく続くかのようです。冒頭の主題が回帰した後も、音楽はさらに展開を見せます。ヴィエルヌ自身、1926年のアメリカ演奏旅行に際し、この楽章を『オルガンとオーケストラのための交響曲』に編曲して用いています。

第5楽章：終曲は、フランスのオルガン・トッカータ様式によく見られる要素を多く含んでいます。すなわち、鍵盤の高速なオスティナートとペダルの重厚で比較的ゆっくりとした旋律が組み合わされるスタイルです。しかし、この楽章では巧みな対位法も用いられており、単なる技巧的なトッカータに留まっていません。再びソナタ形式となり、展開部では低音が強化されます。そして、高度なペダル技巧が要求される華麗なコーダで、壮大なクライマックスを迎えます。

この交響曲全体の演奏時間は約30分です。ヴィエルヌの円熟期の様式と、フランスオルガン音楽の壮大な伝統が見事に融合した作品と言えるでしょう。

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