オルコメノス (ギリシア神話)

オルコメノス：ギリシア神話に名を残す複数の人物

ギリシア神話には、オルコメノスという名前を持つ複数の人物が登場します。これらのオルコメノスたちは、それぞれ異なる系譜を持ち、異なる物語の中で重要な役割を果たしています。本稿では、これらのオルコメノスたちについて、詳細に解説します。

リュカーオーンの子オルコメノス

このオルコメノスは、アルカディア地方の王リュカーオーンの50人の息子の1人です。彼は、同地方の都市国家であるオルコメノスとメテュドリオンを創建したとされています。また、一説には、アルカスの父であるとも伝えられています。リュカーオーンの息子たちの中でも、特に都市建設に関わる重要な役割を担った人物と言えるでしょう。

イソノエーの子オルコメノス

このオルコメノスは、ダナオスの娘であるダナイデスの1人、イソノエー（イシオネー）とゼウスの息子です。彼は、ヘルミッペーと結婚し、ミニュアースをもうけたとされています。しかし、ミニュアースの真の父親はポセイドーンであるという説も存在します。また、別説では、オルコメノスはゼウスとヘルミッペーの息子であるとも言われています。このように、彼の出自には複数の説があり、神話の複雑さを示しています。

ミニュアースの子オルコメノス

このオルコメノスは、オルコメノス王ミニュアースの息子であり、上記のイソノエーの子オルコメノスの孫にあたります。彼の父ミニュアースの系譜には複数のバージョンがあり、神話における血縁関係の複雑さを表しています。オルコメノスは父の王位を継承し、自身の支配地であるボイオティア地方のオルコメノスを、自分の名にちなんで名付けました。彼は、モルロスの殺害でアルゴスから亡命してきたヒュエットスを受け入れ、彼に土地を分け与えました。パウサニアスによれば、オルコメノスは子孫を残さずに亡くなったため、王国はプリクソスの息子プレスボーンが引き継いだといいます。しかし、別の説では、アスプレドーン、アムピドコス、クリュメノスの父であり、クリュメノスが後継者になったとされています。さらに、エラレーの父、またはアムピュカスの妻クローリスの父であるオルコメノスと同一人物である可能性も指摘されています。このように、彼の系譜と後継者については、複数の異なる伝承が存在しています。

その他のオルコメノス

上記以外にも、オルコメノスという名前を持つ人物が複数存在します。

エテオクレースの息子で、ミニュアースと兄弟であるオルコメノス。これは珍しい系譜伝承ですが、上記のミニュアースの子オルコメノスと基本的に同一人物と考えられます。
ヒュギーヌスによれば、アタマースとテミストーの息子であり、スピンキオスと兄弟であるオルコメノス。
テュエステースとナイアスの息子で、アグラオス、カリレオーンと兄弟であるオルコメノス。アトレウスによって殺害され、その肉でテュエステースを饗応されたという悲劇的な物語を持っています。

まとめ

オルコメノスという名前は、ギリシア神話において、異なる系譜と役割を持つ複数の人物によって用いられています。都市の創建者、神の子、王位継承者など、それぞれのオルコメノスが、ギリシア神話の複雑な物語を構成する重要な要素となっています。これらのオルコメノスたちの物語は、神話の世界における血縁関係の複雑さや、王家の興亡、悲劇的な運命など、様々なテーマを示唆しています。

参考文献

アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫（1953年）
パウサニアス『ギリシア記』飯尾都人訳、龍渓書舎（1991年）
ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』松田治・青山照男訳、講談社学術文庫（2005年）
高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』、岩波書店（1960年）

関連項目

ミニュアース
オルコメノス
ティテュオス

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