オルトロス

オルトロス：ギリシア神話の双頭の犬

オルトロス（古希: Ὄρθρος, Orthros、ラテン語: Orthrus）は、古代ギリシアの神話に登場する神秘的な生き物で、双子の頭を持つ犬です。この犬は、強力な怪物ゲーリュオーンの牛を守る役割を担っており、彼の名は「速い」という意味を持つオルトロスと、もう一つの形であるオルトスは「真っ直ぐな」という意味があります。

オルトロスは、ゼウスを打倒するために誕生した怪物テューポーンと彼の伴侶エキドナの間に生まれた兄弟たちの一員です。彼には、ケルベロスやヒュドラー、キマイラ、ネメアーの獅子、さらには不死の百頭竜ラードーンなど、数多くの兄弟がいます。また、彼は母エキドナとの間にネメアーの獅子やスピンクスといった怪物をもうけたとも伝えられています。

オルトロスはエリュテイア島でゲーリュオーンの雄牛を守る仕事をしていましたが、ある日、強大な英雄ヘーラクレースが牛を求めてやって来ました。オルトロスは、牛の番犬としてその存在を隠すことなく、彼に対して襲いかかりました。しかしヘーラクレースは彼の驚異的な力と武器を駆使し、オルトロスを棍棒で殴り倒しました。オルトロスの死に際して、彼を助けに駆けつけた牛飼いエウリュティオーンもまた、ヘーラクレースに倒されてしまいました。

この物語は、一掃された者の運命と、英雄ヘーラクレースの並外れた勇気を描いています。オルトロスは、単なる怪物にとどまらず、神話の中で重要な役割を果たしていたのです。彼の存在を通じて、当時の人々は力や勇気、そして運命の織り成す物語を享受していたことでしょう。

参考文献

• - アポロドーロス『ギリシア神話』高津春繁訳、岩波文庫（1953年）
• - ヘシオドス『神統記』廣川洋一訳、岩波文庫（1984年）
• - 松平俊久「オルトロス」『図説ヨーロッパ怪物文化誌事典』蔵持不三也監修、原書房、2005年3月、76-77頁。ISBN 978-4-562-03870-1。

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