オロデス2世

オロデス2世：パルティア王国の激動を象徴する王

オロデス2世（在位：紀元前57年頃 - 紀元前37/36年）は、アルサケス朝パルティア王国の王であり、その治世は内乱と対外戦争に彩られた激動の時代でした。ミトラダテス2世の死後、使用されなくなっていた「諸王の王」という称号を復活させたことからも、彼の王権強化への強い意志がうかがえます。

王位簒奪と兄弟殺害

フラーテス3世の息子として生まれたオロデス2世は、紀元前58年または前57年に、兄のミトラダテス3世と共謀して父王を暗殺するという、血なまぐさい手段で権力闘争に足を踏み入れました。しかし、兄弟間の蜜月は長くは続かず、王位を継いだミトラダテス3世が貴族の反感を買い追放されると、オロデス2世が王位を奪取します。

追放されたミトラダテス3世は、ローマの将軍アウルス・ガビニウスを頼りますが、見切りをつけてバビロンとセレウキアを占領し、再起を図りました。しかし、オロデス2世は将軍スレナスを派遣し、バビロンを包囲。飢餓作戦によってミトラダテス3世を降伏させると、血縁関係を無視して処刑するという冷酷さを見せました。

カルラエの戦いとローマとの対決

紀元前54年、ローマではマルクス・リキニウス・クラッススがシリア総督に就任し、大規模なパルティア遠征を計画します。当初、ローマ軍の動きは鈍く、パルティアのメソポタミア総督シラケスの軍が攻撃を受ける程度でしたが、オロデス2世は着々と戦いの準備を進め、周辺諸国にローマの侵略を非難する声明を発しました。

紀元前53年、カルラエの戦いが起こります。クラッスス率いるローマ軍約4万に対し、スレナス率いるパルティア軍は約1万の騎兵を中心とした軍勢で迎え撃ち、ローマ軍に大勝利を収めました。クラッススの息子プブリウスも戦死し、クラッスス自身も殺害されるという大惨敗でした。この勝利によって、パルティアはローマの脅威を一時的に排除し、その勢力を拡大することに成功しました。しかし、オロデス2世はスレナスの才能に危険を感じ、後に彼を殺害するという失策を犯します。

その後の治世と暗殺

カルラエの戦いの後、オロデス2世はアルメニア王アルタバスデスとの関係を深め、息子のパコルスをアルタバスデスの妹と婚約させました。これにより、パルティアの名声は高まり、ユーフラテス川がローマとの国境として認識されるようになりました。しかし、その後のローマ侵攻は、東方からの遊牧民の攻撃によって中断されます。

紀元前40年頃、オロデス2世の長男パコルス1世がローマ領への侵攻を再開し、連戦連勝を重ねましたが、紀元前39年にアンティオキア攻略戦でローマ軍に敗れ、戦死しました。パコルス1世の死は、老齢のオロデス2世にとって大きな精神的打撃となり、彼は後継者選びに苦悩します。

最終的に、オロデス2世は最年長の息子フラーテス4世を後継者に指名しますが、フラーテス4世は権力を握るとすぐに、父王を毒殺しようと試み、失敗すると首を絞めて殺害するという、非情な手段で王位を簒奪しました。紀元前37年のことでした。

オロデス2世の治世は、パルティア王国の興隆と衰退を象徴するものであり、彼の生涯は、権力闘争の残酷さと、その中で翻弄される人々の悲劇を物語っています。

もう一度検索