オースチン・モーター・カンパニー

オースチン(Austin)モーターカンパニー：英国自動車史に輝く軌跡

オースチンは、1905年にハーバート・オースチンによって設立された、イギリスを代表する自動車メーカーです。その歴史は、革新的な技術と幾多の変遷を経て、現代にまで繋がっています。

ハーバート・オースチン時代：黎明期と大衆車への挑戦

創業者のハーバート・オースチンは、ウーズレー社での経験を活かし、ロングブリッジ（後のバーミンガム）にオースチン・モーター・カンパニーを設立しました。初期は高価格帯の高級車を製造していましたが、第一次世界大戦の軍需産業への参入により、大幅な規模拡大を遂げます。戦後、ハーバート・オースチンはワンモデル・ポリシーを採用するも、市場の需要を満たせず経営危機に陥ります。しかし、財政再建を経て、1922年に発表されたオースチン・セブン（7）の大ヒットによって、その危機を乗り越えます。

オースチン・セブンは、小型で低価格、かつ簡素な設計でありながら、高い信頼性を誇りました。この大衆車市場をターゲットにした戦略は大成功を収め、イギリスのみならず、ドイツ、アメリカ、フランスなどでもライセンス生産されるなど世界的な人気を博しました。日本でも、ダットサンの開発に影響を与えたとされています。

1929年にはアメリカ子会社であるアメリカン・オースチン・カー・カンパニーを設立、1930年代には、オールスチールボディやガーリング製ブレーキの採用など、技術革新を進めました。1938年には、ライバル企業であるモーリスからレナード・ロードを役員に迎え入れ、経営体制を強化します。しかし、ハーバート・オースチンは1941年に逝去しました。

レナード・ロード時代：BMCへの統合と日産との協業

第二次世界大戦中も生産を継続し、戦後も1930年代後半のモデルをベースとした新車を投入しました。1952年には、ナッフィールド・オーガニゼーションと合併してブリティッシュ・モーター・コーポレーション（BMC）を設立、レナード・ロードがトップに立ち、オースチンはBMCの中核を担う存在となりました。

同時期、日産自動車と提携し、オースチン車のノックダウン生産を開始します。当初は日本国内での部品生産の割合が低かったものの、3年以内に完全な部品国産化を目標に掲げ、A50ケンブリッジの完全国産化を達成しました。このA50は、当時の日本市場では超高級車として扱われていました。

ミニの誕生とブランドの衰退

1956年のスエズ危機を機に、レナード・ロードはアレック・イシゴニスに小型車の開発を依頼しました。この開発から生まれたのが、革命的なデザインと革新的なメカニズムを持つミニです。ミニはモーリスとオースチンの両ブランドから販売され、大きな成功を収めました。ミニで採用された横置きエンジンと前輪駆動の組み合わせは、後のオースチン車の設計にも大きな影響を与えました。

しかし、1968年以降は、品質問題やコスト高騰などに悩まされるようになり、ブランド力は徐々に低下していきます。1982年にはブリティッシュ・レイランドがオースチン・ローバー・グループに社名変更し、オースチンは低価格ブランドという位置づけになり、1987年にはブランドとしての生産を終了しました。

オースチンブランドのその後

オースチンブランドの商標権は、その後BMW、MGローバーを経て、最終的には中国の南京汽車に譲渡されました。現在、南京汽車はオースチンブランドの権利を保有しており、将来的な復活の可能性も示唆されています。オースチンの歴史は、英国自動車産業の栄光と苦難を物語る、重要な一章となっています。

主要車種一覧

オースチン・セブン(7)
オースチン・A30/A35
オースチン・A40 (Devon, Somerset, Farina)
オースチン・A50ケンブリッジ
オースチン・ミニ
オースチン・1100/1800
オースチン・3リッター
オースチン・マキシ
オースチン・アレグロ
オースチン・メトロ
オースチン・マエストロ
オースチン・モンテゴ
* オースチン・ヒーレー

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