カシオペヤ座オメガ星

カシオペヤ座に位置する恒星、カシオペヤ座ω星（オメガせい、ω Cassiopeiae）は、地球からおよそ728光年の距離にある連星系です。見かけの等級が4.99と、晴れた夜空であれば肉眼でもその光を確認することができます。

特徴

カシオペヤ座ω星は、20世紀初頭に天文学者アダムズによって視線速度の変動が観測されたことから、連星であることが示唆されました。その後、詳細な分光観測が重ねられ、その軌道要素が精密に決定されています。この連星系の軌道周期は約69.6日、軌道の離心率は0.3、そして主星と伴星間の軌道長半径は少なくとも0.18天文単位（au）以上であることが分かっています。

カシオペヤ座ω星から観測されるスペクトルは、B型巨星の特徴を強く示しており、スペクトル分類はB8 IIIとされています。この分類に基づくと、光球の有効温度はおよそ13000ケルビンと推定されます。その明るさは太陽の約500倍、半径は太陽の約5.4倍に達すると計算されています。興味深いことに、カシオペヤ座ω星は、大気中に含まれるヘリウムの量が少ない「弱ヘリウム星」という化学特異星の一種に位置づけられています。また、自転速度はおよそ45.7 km/sと比較的ゆっくりしているため、早期型星としては珍しく、星の大気中での元素の分離が進みやすく、これが特異な化学組成をもたらしていると考えられています。

名称の歴史と由来

カシオペヤ座ω星のバイエル符号ωを巡っては、かつて混乱がありました。18世紀の天文学者フラムスティードが作成した星表では、バイエル符号のωが使われず、その代わりにカシオペヤ座c星とd星という二つの星が記録されていました。これらには、フラムスティード番号としてそれぞれ43番と46番が付与されていました。このうちどちらが本来のω星に該当するのかについて、天文学者の間で意見が分かれていました。BAC星表では43番星がω星とされていましたが、一方のアルゲランダーは46番星こそがω星であると主張しました。最終的には、46番星の方が明らかに明るいというアルゲランダーの主張が支持され、現在ではカシオペヤ座ω星のフラムスティード番号は46番として正式に認められています。

中国の伝統的な天文学においては、カシオペヤ座ω星は「華蓋（Huá Gài）」と呼ばれる星官（星座）の一部を構成しています。華蓋は、天皇大帝の玉座を覆うための傘や笠を表すとされており、カシオペヤ座40番星、HD 7389、カシオペヤ座31番星、カシオペヤ座ψ星、カシオペヤ座43番星など、周辺のいくつかの星と共にこの星官を形成しています。カシオペヤ座ω星自身は、華蓋を構成する星の一つとして、「華蓋七（Huá Gài qī）」、すなわち華蓋の7番星と呼ばれています。

このように、カシオペヤ座ω星は、単なる遠方の光点ではなく、連星としての複雑な運動、特異な物理的・化学的性質、そして天文学史における名称の変遷、さらには文化的な側面まで持つ興味深い恒星と言えるでしょう。

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