カデシュ

カデシュの歴史

カデシュ（Qadesh）は古代シリアに位置し、オロンテス川のほとりにあたる都市でした。現在のシリア西部のホムスから約24キロメートル南西に位置するテル・ネビ・メンド遺跡が、このカデシュの昔の姿を伝えています。この地は、エジプト第18王朝のファラオ・トトメス3世に対抗するために、周辺の都市国家が連合を形成した際に特に注目されました。

カデシュは、レバント地域の都市国家群を指導するカナン人の一つで、もう一つはメギドとして歴史にその名を刻んでいます。エジプトに対抗するための連合は、当時の北方大国であるミタンニの王が支えていたと考えられており、カデシュはその中心的な都市であったのです。

しかし、紀元前15世紀のメギドの戦いでカナン連合軍が敗北したことにより、カデシュ及び周囲のシリア南部はエジプトの支配下に置かれました。この時期、同時代のアマルナ文書には、カデシュの王がエジプトのファラオ・アメンホテプ4世に宛てた書簡が記録として残されています。この文書にはスッタルナ、エタッカマ、アリ＝テシュブという3人のカデシュ王の名前があり、彼らがエジプト王に忠誠を誓ったことが示されています。

アメンホテプ4世の時代には、カデシュはエジプトから独立し、ツタンカーメンやホルエムヘブの両者はヒッタイトからカデシュを奪回しようとしましたが、その試みは成功しませんでした。その後、第19王朝のセティ1世がシリア遠征を行い、ヒッタイト軍を破ってカデシュを攻撃。しかし、セティ1世の勝利は長続きせず、帰国後すぐにヒッタイトの王ムルシリ2世が攻撃を行い再びカデシュは占領されました。これによりカデシュはヒッタイトの要塞となり、古代戦争の一環である「カデシュの戦い」が繰り広げられる舞台へと変わっていくのです。

カデシュは、エジプトとヒッタイトの二大国の間で繰り広げられる争いの前線として機能しました。特に、紀元前13世紀にはラムセス2世がエジプトのファラオとして軍事的な反撃を選び、カデシュでの戦いが始まります。この戦闘は、エジプトにとっては大勝利に見えた瞬間もありましたが、実際にはヒッタイトのスパイがエジプト軍を相手に奇襲を行うことに成功し、驚きの中で撃退されそうになります。それでも、ラムセス2世は状況を取り戻し、両軍の間での膠着状態が続く中、ついには最古の平和条約が結ばれましたが、その後もカデシュは依然としてヒッタイトの手中に置かれたのです。

徐々にカデシュはシリア内で有力な都市国家であり続けましたが、紀元前12世紀に「海の民」と呼ばれる侵略者たちが攻撃を加え、都市は壊滅的な被害を受けました。その後、カデシュは再建することなく、歴史の中から姿を消していきました。

このように、カデシュは古代の大国同士の激しい争いの舞台として、また数多くの文献や記録が残る重要な歴史的地として位置づけられています。

もう一度検索