カナダ (戦艦)

HMS Canada：激動の時代を駆け抜けた戦艦

HMS カナダ（HMS Canada）は、アームストロング社で建造された戦艦であり、元はチリ海軍が発注したアルミランテ・ラトーレ級戦艦のネームシップとして計画されました。外観はイギリス海軍のアイアン・デューク級戦艦に似ていますが、主砲の口径が異なるという特徴を持っています。

起源と変遷

南米の建艦競争が激化する中、チリはイギリスに2隻の超弩級戦艦を発注しました。そのうちの1隻が、後のHMS カナダとなるアルミランテ・ラトーレです。しかし、完成間近に第一次世界大戦が勃発し、イギリス海軍に買収されHMS カナダと改名。グランド・フリートに所属し、ユトランド沖海戦に参加しました。

戦後、南米の勢力均衡を考慮した結果、チリ海軍に返還され、再びアルミランテ・ラトーレとして再就役を果たします。1929年にはイギリスで大規模な近代化改装を受け、防御力の強化や機関部の更新が行われました。1958年に退役した後、翌年には日本へ曳航され、横須賀で解体。その部品の一部は、記念艦「三笠」の修復に活用されました。

艦影

船体形状はアイアン・デューク級と同様の短船首楼型で、艦首は水線下部が前方に張り出した形状でした。艦首甲板には35.6cm連装砲塔を2基、背負い式に配置。上部構造物は菱形で、その上に三脚式のマストが立っていました。2本の煙突は間隔が狭く、周囲は艦載艇置き場として利用されていました。艦尾甲板にも35.6cm連装砲塔が2基、背負い式に配置されていました。

船体サイズは、主砲に35.6cm砲を採用したため、アイアン・デューク級よりも全長が約11.4m長くなり、201mに達しました。これは、当時のグランド・フリートの戦艦の中で2番目に長いものでした。均等に配置された主砲塔配置と相まって、強力かつ見栄えのする戦艦として評価されました。

近代化改装

1929年から1931年にかけて、イギリスのデヴォンポート造船所にて近代化改装を受けました。水雷防御を強化するために船体にバルジが追加され、艦幅が広がり、排水量も増加しました。老朽化した機関は重油専焼水管缶に換装され、推進機関もギヤード・タービンとなりました。対空火器も強化され、高角砲やポンポン砲、機関銃などが追加されました。

武装

主砲

主砲は新設計の「Mark I 35.6cm（45口径）砲」で、重量719kgの砲弾を最大仰角20度で22,310mまで届かせることができました。この砲を連装砲塔に収め、5基10門を搭載していました。

副砲

副砲は当初の設計では4.7インチ砲でしたが、火力不足のため6インチ砲に変更されました。本艦のために新たに開発された「Mark XVII 15.2cm（50口径）砲」を単装砲架で16基搭載していました。

その他

その他に、高角砲や速射砲、水中魚雷発射管などを搭載していました。

防御

防御方式は全体防御方式を採用しており、舷側全体を装甲で覆っていました。水線部の装甲厚は229mmで、甲板部の水平防御は102mmでした。

艦歴

20世紀初頭の南米では、アルゼンチン、ブラジル、チリの間で熾烈な建艦競争が繰り広げられていました。チリは、この競争に対抗するために本級を発注しました。

当初はリベルターとして議会に承認されましたが、発注段階でバルパライソと改名され、アームストロング社に発注されました。その後、アルミランテ・ラトーレと改名されましたが、第一次世界大戦勃発によりイギリスに買収され、HMS カナダとなりました。

イギリス海軍に就役した本艦は、グランド・フリートの第4戦艦戦隊に所属し、ユトランド沖海戦に参加しました。戦後、チリに売却され、アルミランテ・ラトーレとして再就役を果たしました。1931年には、乗組員が賃金カットに抗議して反乱に参加する事件も発生しました。

その後もチリ海軍で運用され、1958年に退役。1959年には日本へ曳航され、横須賀で解体されました。本艦の部品は、戦艦三笠の復元に利用されています。

関連項目

イギリス海軍艦艇一覧
チリ海軍艦艇一覧
南アメリカの建艦競争
ユトランド沖海戦
* イーグル (空母・初代)

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