カラタネオガタマ

カラタネオガタマとは

カラタネオガタマ（唐種招霊、学名：Magnolia figo）は、モクレン科モクレン属に分類される常緑性の樹木です。かつてはオガタマノキ属（Michelia）として扱われることもありましたが、今日では一般的にモクレン属（Magnolia）に含められています。原産地は中国の東南部で、その美しい姿と特に印象的な香りを持つ花から、世界中で広く植栽されています。日本では江戸時代に渡来したと伝えられています。別名としては、原産地にちなんでトウオガタマ（唐招霊）と呼ばれるほか、その特徴的な香りに由来する「バナナノキ」というユニークな呼び名もあります。

樹の姿

樹高は2メートルから5メートルほどに成長する、比較的小ぶりな常緑の低木または小高木です。樹皮は落ち着いた灰褐色をしています。新しい枝や芽、葉の柄などには、褐色から黒っぽい褐色の柔らかい毛が多く生えています。

葉は枝に互い違いにつく「互生」の形態をとります。葉柄は短く、長さは2ミリメートルから4ミリメートル程度です。葉の形は、先端がやや尖り基部がくさび形になった、細長い卵形から楕円形をしています。大きさは長さが4センチメートルから10センチメートル、幅が1.8センチメートルから4.5センチメートルほどです。葉の表面には光沢があり、縁はなめらかな「全縁」となっています。

花の魅力

カラタネオガタマの最大の特徴は、その強い甘い香りの花です。日本では主に5月から6月にかけて花を咲かせますが、原産地では少し早く、3月から5月頃が花期となります。花は葉の付け根にひとつずつ、直径2センチメートルから2.5センチメートルの大きさで控えめに咲きます。花の寿命は短く、通常1日から2日で終わってしまいます。

花を構成する花被片は通常6枚で、萼（がく）と花弁の区別がなく、全て花弁のような形をしています。これらの花被片は、ふつう黄白色をしていますが、縁など部分的に紫紅色を帯びることがあります。栽培品種の中には、紫色やワインレッドのような濃い色の花を咲かせるものも知られています。

花の中央には多数の雄しべがあり、長さは7ミリメートルから8ミリメートルほどで、やはり紫色を帯びています。葯（やく、花粉を入れる部分）の先端は突き出て尖った形をしています。雌しべも多数あり、それぞれが離れてついた「離生心皮」という形態をとり、長さは約6ミリメートルです。雄しべと雌しべの集まりの間には、約7ミリメートルの柄（か）があります。

そして、この花からはバナナに似た非常に甘く強い香りが放たれます。この香りの主成分は「酢酸イソブチル」であることがわかっています。花が完全に開かずに半開きの状態であることが、まるで微笑んでいるように見えるため、原産地の中国では「含笑花（がんしょうか）」と呼ばれ、親しまれています。

実について

花の後の果実は、日本では10月から11月頃に熟します（原産地では7月から8月頃）。個々の雌しべは成熟すると丸みを帯びた袋状の果実（袋果）となり、これが集まって長さ2センチメートルから3.5センチメートルほどの細長い「集合果」を形成します。熟した集合果は裂け開き、中の種子を露出させます。

生育環境と栽培

カラタネオガタマの原産地は中国南東部ですが、比較的温暖な地域であれば世界中で植栽されています。日本には江戸時代に渡来したと言われています。栽培においては、日なたから明るい半日陰で、やや湿り気があり、かつ水はけの良い肥沃な土壌を好む傾向があります。乾いた寒風には弱く、特に霜が降りるような場所では生育が悪くなることがあります。幸いなことに、目立った病気や害虫の被害はあまり報告されていません。日本では、オガタマノキと同様に、神社の境内などに植えられているのをよく見かけます。

多様な利用と文化

この植物は世界中で観賞用として庭や公園に植えられており、様々な花の色や形を持つ栽培品種も作出されています。

原産地の中国では、伝統的に薬としても利用されてきました。花を乾燥させたものは「含笑（がんしょう）」と呼ばれる生薬となり、消化不良や腹部膨満、鼻炎などの症状に使われることがあります。また、花から抽出される芳香油は香料として用いられています。花被片をお茶として利用することもあり、「茶外茶」として親しまれることもあります。さらに、台湾では、女性が花の美しさと香りを愛でて、髪飾りにすることがあります。

カラタネオガタマには、「甘い誘惑」という素敵な花言葉がつけられています。これは、その魅惑的な香りに由来するものかもしれません。

分類について

前述の通り、カラタネオガタマはかつてオガタマノキ属（Michelia）に分類されていましたが、近年の研究に基づき、現在はモクレン属（Magnolia）の中に含められています。モクレン属の中では、オガタマノキ節（Magnolia section Michelia）に位置づけられています。この植物には、いくつかの変種が提唱されていることも知られています。染色体数は2n=38です。

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