ガルフストリーム G650

ガルフストリーム G650：ビジネスジェットの頂点

ガルフストリーム G650は、アメリカのガルフストリーム・エアロスペース社が製造する、高性能ビジネスジェットです。その最大の特徴は、マッハ0.925という驚異的な最高速度と、最大13,900kmに及ぶ航続距離です。これにより、世界中の主要都市間をノンストップで結ぶことが可能となり、ビジネスジェットの概念を大きく変えました。

開発の経緯

G650の開発は2005年に始まり、2008年に正式に発表されました。ガルフストリーム社は、「市場投入する当社最大の、最速で、最も高価なビジネスジェットになるだろう」と述べ、その高性能ぶりをアピールしました。1400時間にも及ぶ風洞実験や、過酷な気圧試験を経て、2009年には初飛行に成功しました。しかし、2011年には試験機が墜落する事故も発生しました。この事故を教訓に、機体の安全性がさらに向上されました。
2012年9月、G650はアメリカ連邦航空局（FAA）から型式証明を取得し、同年12月に最初の機体が顧客に引き渡されました。当時の価格は6,450万ドルでしたが、その人気から、納入待ちリストは3年にも及び、一部の機体は7,000万ドル以上で転売される事態となりました。2014年には、航空機の性能、客室の快適さ、安全性に重要な技術的進歩をもたらしたとして、Collier Trophyを受賞しています。

デザインの特徴

G650は、その空力性能を最大限に引き出すため、翼の後退角を36度とし、翼の形状も付け根から先端まで連続的に変化させています。胴体は円形ではなく、底部が平らな楕円形を採用することで、内部空間を効率的に利用しています。キャビンは幅2.59m、高さ1.96mと広々としており、フル装備のキッチンやバー、衛星電話、無線インターネットなどのエンターテイメント機能も搭載可能です。エンジンはロールスロイス製のBR725エンジンを2基搭載し、各エンジンが75.6kNの推力を生み出します。

機体制御にはフライ・バイ・ワイヤシステムが採用され、操縦桿と動翼間の機械的な接続はありません。このシステムにより、より正確で滑らかな操縦が可能になりました。

派生モデル

G650ER

G650ERは、G650の航続距離をさらに延長したモデルです。燃料搭載量を増やすことで、マッハ0.85での航続距離は13,900kmに達し、G650よりも900km長くなっています。このモデルは、ロサンゼルス-メルボルン間や、香港-ニュージャージー州間などをノンストップで飛行し、最短飛行記録を打ち立てました。さらに、地球一周の最短記録も樹立し、その卓越した性能を証明しました。2014年当時の価格は6,650万ドルで、既存のG650も200万ドルでG650ERへ改修可能でした。

G700

G700は、ガルフストリーム社の最新フラッグシップモデルです。G650の設計をベースに、胴体を3m延長し、居住区画を5区画に増やしました。航続距離は13,890km以上、最高速度はマッハ0.925を誇ります。コックピットにはG500/600の技術が導入され、最新のアビオニクスとEVS（拡張視覚システム）を搭載することで、悪天候下でも安全な着陸を支援します。2022年の市場投入を目指して開発が進められ、2024年にはアメリカ連邦航空局（FAA）と欧州航空安全機関（EASA）の型式証明を取得しました。

事故

2011年4月2日、G650の試験機が離陸時に墜落する事故が発生しました。この事故では、4人のガルフストリーム社員が犠牲となりました。原因は、離陸時の速度不足と、失速状態からの回復を試みたことによる空力的な失速であると結論付けられました。この事故を教訓に、ガルフストリーム社は、G650の離陸速度（V2速度）を引き上げました。

スペック

G650は、最高速度マッハ0.925、巡航速度マッハ0.85～0.9、航続距離最大13,000kmを誇ります。また、フル装備のキッチンとバー、衛星電話、無線インターネットなどを備え、快適な空の旅を提供します。G650ERは燃料搭載量を増やし、航続距離を13,900kmに延長しています。

G700は、さらに大型化し、航続距離は13,890km以上、最高速度はマッハ0.925を誇ります。

ガルフストリーム G650