キリスト教民主運動

スロバキア共和国のキリスト教民主運動(KDH)：その歴史と変遷

スロバキア共和国のキリスト教民主運動（KDH: Kresťanskodemokratické hnutie）は、中道右派政党として、スロバキア政治において重要な役割を果たしてきた政党です。同党は、スロバキアにおけるキリスト教的伝統と国民主義的傾向を強く持ち、欧州議会では欧州人民党に所属しています。

1990年の発足と初期の活動

KDHは、1989年11月の市民運動を起点に、1990年2月に設立されました。同年に行われた選挙では、連邦議会とスロバキア国民評議会において議席を獲得し、連邦政府と共和国政府の双方で連立政権に参加しました。1991年4月から1992年6月にかけては、創設期党首のヤーン・チャルノグルスキーが首相を務めました。

党内分裂と新たな勢力の台頭

1991年春、KDH内部では国家形態をめぐる論争が激化しました。連邦制を支持する主流派と、国家連合を支持するナショナリズム色の強いグループとの対立が深まり、結果的に後者のグループは1992年3月にKDHを離脱し、スロバキアキリスト教民主運動（SKDH）を結成しました。しかし、同年に行われた選挙ではKDHが議席を獲得した一方、SKDHは議席を得ることができませんでした。

独立後のKDH：与野党の転換と選挙連合

1993年のスロバキア独立後、KDHはモラウチーク政権で与党に加わりました。しかし、1994年9月の国民議会選挙後にはヴラジミール・メチアル政権下で野党となりました。1997年には、メチアル政権の権威主義的な運営への反発から、野党勢力が結集した「スロバキア民主連立」（SDK）の結成に主導的な役割を果たしました。KDH指導者のミクラーシュ・ズリンダがSDKのリーダーとなり、その後SDKは政党へと発展しました。

21世紀のKDH：与党参加と議席喪失

2000年、ズリンダがスロバキア民主・キリスト教連合（SDKU）を結成すると、SDKに参加していたKDH出身の多くの議員がSDKUに移籍しました。2002年の国民議会選挙後には、第2次ズリンダ政権でKDHは再び与党に加わりましたが、2006年の選挙で野党に転じました。2010年の選挙では、イヴェタ・ラジチョヴァー率いる政権に参加しましたが、2012年の選挙では議席数を増やしたものの、他の与党と共に敗北を喫しました。その後、党内分裂や相次ぐ議員離党などにより、2016年の国民議会選挙では、結党以来初めてすべての議席を失うという結果に終わりました。アロイズ・ヒルナが新しい総裁に選出され、新たな体制が構築されました。

KDHのイデオロギーと課題

KDHは、キリスト教民主主義を基盤に、スロバキア国民のアイデンティティと伝統的価値観を重視する立場をとっています。しかし、近年は党内分裂や選挙における低迷など、多くの課題に直面しています。今後のKDHの動向は、スロバキア政治における重要な要素の一つとなるでしょう。KDHが今後どのように変化し、スロバキア社会に貢献していくのか、注目が集まります。

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