クィントゥス・フフィウス・カレヌス

クィントゥス・フフィウス・カレヌス（Quintus Fufius Calenus、生年不明 - 紀元前40年）は、共和政ローマの政治家であり、特に紀元前1世紀中期の激動期に活躍しました。彼は、紀元前47年に執政官（コンスル）を務めました。

出自

カレヌスは、フフィウス氏族という平民（プレプス）の出身でした。彼の父はクィントゥス、祖父はガイウスという名前であったことが記録されています。キケロは、カレヌスの父について、ティベリウス・センプロニウス・グラックスを倒したプブリウス・コルネリウス・スキピオ・ナシカ・セラピオを称賛した人物として言及しています。また、カレヌスの兄弟と思われる人物が、紀元前70年のガイウス・ウェッレスの裁判に証人として出廷し、紀元前64年のクイントゥス・ムキウスの裁判で検事を務めたとされています。

歴史家は、カレヌスというコグノーメン（家族名）は、彼の父の代から始まったと考えています。この名前は、カンパニア地方の都市カラと関連がある可能性があり、その場合、彼の父はカンパニアの地主であり、グラックスの農地法によって経済的な打撃を受けたのかもしれません。

経歴

初期の経歴

カレヌスは、青年期に造幣官を務めたと推定されています。現存するコインには、女神ローマとイタリア・トゥッリタが描かれており、鋳造者の名前として「カレニ」または「コルディ」と記されています。歴史家は、このうちの一人をカレヌスであると考えています。このコインは、紀元前74年から49年の間に鋳造されたと考えられています。

カレヌスが歴史に登場するのは、紀元前60年代になってからです。しかし、彼はルキウス・コルネリウス・キンナの時代（紀元前87年 - 紀元前84年）から政治活動を始めていたと考えられています。この説は、紀元前47年にカレヌスに成人した息子がいたことや、彼の義理の息子の実父が、紀元前82年のスッラのプロスクリプティオ（国家の敵宣言）で犠牲者の一人であったことなどを根拠としています。

護民官、法務官時代

もしカレヌスがキンナの支持者であったならば、スッラ独裁政権の間は身を潜めていたことでしょう。紀元前61年、カレヌスは護民官に就任し、政治家としてのキャリアを再開しました。この年の主要な話題は、プブリウス・クロディウス・プルケルのスキャンダルでした。クロディウスは、男子禁制のボナ・デアの祭りで、カエサルの妻ポンペイアと情交を結ぼうとして女装し、カエサルの家に侵入したことが発覚し、「神への冒瀆」として告発されました。カエサルはクロディウスの無実を主張しましたが、妻とは離婚しました。カレヌスは、この事件でクロディウスの弁護に立ち、プラエトル（法務官）が陪審団を結成することを義務づける法律の採択を阻止しようとしました。彼は、当時ローマで最も強力な政治家であったポンペイウスに、この法案を支持するかどうか尋ねましたが、期待した答えは得られませんでした。その後、カレヌスは新法を修正し、陪審員の選出方法を変更することで、クロディウスの無罪判決に貢献しました。

紀元前59年、カレヌスは法務官に就任しました。この年の執政官はカエサルとマルクス・カルプルニウス・ビブルスであり、カエサルはポンペイウスとクラッススという後ろ盾を得ていましたが、ビブルスは元老院の支持を得ていました。カレヌスはカエサルを支持しましたが、三頭政治の人気が低下したため、彼自身も打撃を受けました。

カエサルの下で

紀元前51年、カレヌスはガリア征服を進めていたカエサルの下でレガトゥス（副司令官）を務め、ウクセロドゥヌムの包囲戦に参加しました。紀元前49年にカエサルとポンペイウスの間で内戦が勃発すると、カレヌスはカエサル側につき、マッシリア包囲戦やヒスパニア遠征にも参加しました。

紀元前49年末、カレヌスはカエサルと共にイピロスに渡りました。その後、イタリアに戻り、残りの兵を渡海させようとしましたが、ポンペイウス派の艦隊に襲われ、多くの兵士を失いました。翌年1月、カレヌスはマルクス・アントニウスと合流し、残りの兵をバルカン半島に移動させることができました。

カエサルはカレヌスをバルカン半島南部に派遣し、デルポイ、テーバイ、オルコメノスなどを占領させました。ファルサルスの戦いでの勝利後、カレヌスはポンペイウス派がペロポネソス半島に足がかりを得るのを阻止し、ギリシアの征服を完了させました。彼はその後、この地を支配し、定期的にエジプトで戦うカエサルに援軍を送りました。ローマに戻ったカレヌスは、カエサルから紀元前47年の残りの期間の執政官に任命されました。

カエサル暗殺後

紀元前44年のカエサル暗殺後、カレヌスはローマにいて元老院議員として活動していました。紀元前43年1月1日の会議では、彼の義理の息子であるガイウス・ウィビウス・パンサ・カエトロニアヌスが執政官であったこともあり、最初に発言する権利を与えられました。カレヌスは、当時カエサルの指導者の一人であったアントニウスとの交渉を開始することを提案しましたが、キケロは軍事決着を望みました。その後、アントニウスはオクタウィアヌス、マルクス・アエミリウス・レピドゥスと共に第二回三頭政治を結成し、反カエサル派（共和派）の粛清を開始しました。カレヌスは、粛清リストに含まれていたマルクス・テレンティウス・ウァロを別荘に匿い、命を救いました。

紀元前42年、アントニウスはカレヌスに2個軍団を残し、自身は共和派との決戦のために東方へ出征しました。紀元前41年、カレヌスはガリア・ナルボネンシスの総督に就任し、ガリア全土の支配権を獲得し、11個軍団を有しました。彼はこの兵力をもってイタリアでアントニウスと合流しようとしましたが、紀元前40年中頃に病気で急死しました。

子孫

カレヌスには同名の息子と娘がいました。娘は紀元前43年の執政官ウィビウス・パンサと結婚しています。

評価

キケロは、紀元前61年のプブリウス・クロディウス事件に関連して、カレヌスを「非常に軽薄な人物」と評しています。

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