クドカ・ベキ

クドカ・ベキ：チンギス・カンの姻族となったオイラト部族長

クドカ・ベキ（生没年不詳）は、13世紀初頭にチンギス・カンに仕えたオイラト部族の長です。モンゴル帝国の勃興期において、その一族はチンギス・カン家との婚姻関係を通じて大きな影響力を持つようになりました。

生涯

『集史』によれば、クドカ・ベキは当時のオイラト部族唯一の長でした。彼は1202年、ナイマン部のタヤン・カンやメルキト部のトクトア・ベキらと連合軍を組織し、チンギス・カンとケレイト部のオン・カンの連合軍に対抗します。しかし、寒気のために目的を果たせず退却しました。

その後、チンギス・カンは周辺の部族を次々と制圧し、1206年にはモンゴル高原を統一します。当初、クドカ・ベキはチンギス・カンに服属していませんでしたが、1208年にモンゴル高原西北部の「ホイン・イルゲン（森林の民）」征服が始まると、彼は率先して降伏し、その征服を支援しました。

チンギス・カンはクドカ・ベキの功績を高く評価し、「先に帰順し、万のオイラトを率いてきた者」と称えました。そして、自身の娘であるチチェゲンをクドカ・ベキの子トレルチに嫁がせました。この婚姻は、クドカ・ベキの娘オグルトトミシュとチンギス・カンの子のトルイとの婚姻と合わせて「姉妹交換婚」となる予定でしたが、トルイが正式にオグルトトミシュを娶る前に亡くなったため、代わりにトルイの長男モンケがオグルトトミシュを娶ることになりました。このモンケとオグルトトミシュの婚姻が、モンケの治世におけるクドカ・ベキ家の勢力拡大の契機となりました。

クドカ・ベキ自身の事績や没年については、これ以上の記録は残っていません。しかし、17世紀以降のモンゴル年代記『シラ・トージ』には、ホイト部の首領がクドカ・ベキの末裔であると記されており、彼の血統が後代まで存続していたことがわかります。

クドカ・ベキ王家

クドカ・ベキの一族は、チンギス・カン家との婚姻を通じてモンゴル帝国において重要な地位を占めました。以下に、クドカ・ベキから始まる一族の系譜をまとめます。

クドカ・ベキ
イナルチ：ジョチの娘コルイ・エゲチを娶る
ウルド
ニグベイ
アク・テムル
トレルチ：チンギス・カンの娘チチェゲンを娶る
ブカ・テムル
チョバン：アリクブケの娘ノムガンを娶る
チャキル：フレグの娘モングルゲンを娶る
タラカイ：フレグの娘モングルゲンをレビラト婚で娶る
ノルン・カトン：フレグの子ジョムクルに嫁ぐ
ブルトア：チンギス・カン家の女性を娶る
バルス・ブカ：トルイの娘エルテムルを娶る
ベクレミシュ：チンギス・カン家の女性を娶る
シーラップ：チンギス・カン家の女性を娶る
エメゲン・カトン：アリクブケ家のメリク・テムルに嫁ぐ
エルチクミシュ・カトン：トルイ家のアリクブケに嫁ぐ
クイク・カトン：トルイ家のフレグに嫁ぐ
オルガナ・カトン：チャガタイ家のカラ・フレグに嫁ぐ
クチュ・カトン：ジョチ家のトクカンに嫁ぐ
オルジェイ・カトン：トルイ家のフレグに嫁ぐ
オグルトトミシュ：トルイ家のモンケ・カアンに嫁ぐ

上記以外にも、多くの婚姻関係が確認されており、クドカ・ベキの一族がチンギス・カン家との繋がりを重視していたことが伺えます。モンケ・カアンの死後、帝位継承戦争が勃発すると、クドカ・ベキの一族は姻族としての地位を低下させましたが、その血統はドルベン・オイラトのホイト部へと受け継がれていきました。

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