クリ属

クリ属 (Castanea)

クリ属は、ブナ科クリ亜科に属する落葉樹のグループです。学名は Castanea といい、世界中の温暖な地域に分布しています。食用となる種子（栗）や、建築材として利用される丈夫な幹を持つことで知られています。

形態・生態

クリ属の植物は、一般的に樹高20〜40mにまで成長する高木ですが、チンカピンと呼ばれる小型の種類は灌木状になります。

葉は単葉で、卵型または倒卵形をしており、長さは10〜30cm、幅は4〜10cm程度です。葉の縁には、間隔の広い、鋭く尖った鋸歯があります。花は、白っぽい尾状花序を形成し、独特の臭いを発します。この臭いは精液の臭いと表現されることもあります。クリの花は蜜源植物としても重要で、独特の風味とミネラルを豊富に含む蜂蜜が採れます。

果実は直径5〜11cmほどのいがに覆われており、中には1〜7個の種子が入っています。クリは、花崗岩質や結晶片岩質の酸性土壌を好み、石灰岩質のアルカリ性土壌では生育しません。

分布

クリ属の植物は、北半球の温暖で湿潤な地域に広く分布しています。

人間との関わり

木材

クリの木は、硬く耐久性が高いため、高級木材として扱われます。無塗装の状態ではナラ材に似た色合いですが、クリア塗装を施すと、力強い年輪が際立ちます。かつては、耐久性を活かして鉄道の枕木や電柱、屋根葺き用の薄板などに利用されていました。また、銃の銃床の材料としても広く用いられていました。近年では、クリの産出量が減少しており、日本ではテーブルや無垢フローリング材として利用されることが多いです。日本では、クリの漢字が「西」と「木」で構成されることから、西方浄土を連想させ、位牌などの仏具にも用いられます。

食用

クリは世界各地で食用とされています。

ヨーロッパ: フランスでは、マロングラッセやクレーム・ド・マロンとして親しまれています。マロンジャムをパンに塗って食べる習慣もあり、ボヌ・ママンブランドのものが有名です。また、ケーキ店ではクリを使ったケーキが定番で、モンブランの材料としても広く使われています。イタリアでは、「栗のポレンタ」というデザートがあります。フランスやイギリスでは、焼き栗が屋台で販売されています。
中国: 中国では、栗を鶏肉と炒め煮にした料理（鶏肉炆栗子）や、豚足と一緒に煮込んだ料理（栗子燉猪蹄）があります。また、栗と白菜を揚げ煮にした料理（栗子焼白菜）も存在します。焼き栗も一般的で、「糖炒栗子」や「糖炒板栗」として、小石と一緒に炒って売られています。この焼き栗は日本にも伝わり、「天津甘栗」として親しまれています。韓国でも、焼き栗は冬の風物詩となっています。
日本: 日本では、縄文時代からクリが食用とされてきました。当時の人々は、クリなどの堅果類を重要な食料資源として利用していました。戦国時代から近世にかけては、蒸した栗を平たく加工した「勝栗（打栗）」が縁起物として重宝され、献上品にも用いられました。現代では、茹でたり焼いたりして食べるのが一般的です。また、栗を乾燥させて粉にしたものは、小麦粉の代用品として利用されていました。

栗を使った食品として、栗金団、栗鹿の子、栗きんとん、栗饅頭、栗羊羹、栗落雁、甘露煮、栗ご飯、茶碗蒸し、ちらし寿司などがあります。近年では、100円ショップで手軽に購入できる「むき甘栗」も人気を集めています。

渋皮

クリの渋皮にはタンニンが含まれており、石鹸などの原料として利用されています。

下位分類

クリ属には、以下の種が含まれます。

C. alnifolia
クリ (C. crenata)
アメリカグリ (C. dentata)
C. henryi
シナグリ (C. mollissima)
C. ozarkensis
チンカピングリ (C. pumila)
ヨーロッパグリ (C. sativa)
C. seguinii

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