グアテマラ内戦

グアテマラ内戦：36年に及ぶ悲劇の歴史

グアテマラ内戦は、1960年から1996年までグアテマラを舞台に繰り広げられた内戦です。軍内部の親米派と反米派の対立、そして左派勢力の台頭が複雑に絡み合い、長期化しました。この内戦は、20万人以上の死者、数万人の行方不明者、そして100万人以上の避難民を生み出すという、深刻な人道的危機を引き起こしました。

内戦の背景：冷戦下のグアテマラ

内戦の背景には、冷戦という国際的な政治状況がありました。1951年、軍出身のハコボ・アルベンス・グスマンが大統領に就任すると、彼は農地改革などの社会主義的な政策を推し進めました。その一環として、アメリカのユナイテッド・フルーツ社が所有する大規模プランテーションの国有化を断行したことが、アメリカ合衆国の反発を招きました。

アメリカ合衆国は、アルベンス政権を「容共的」とみなし、近隣諸国の共産主義化を警戒していました。ドワイト・D・アイゼンハワー政権は、中央情報局（CIA）を通じて「PBSUCCESS作戦」を推進し、隣国ホンジュラスからカルロス・カスティージョ・アルマス率いる反政府軍を侵攻させ、アルベンス政権を転覆させました。アルマス政権は、アメリカ合衆国の支援のもとで独裁体制を確立しましたが、これに反発する軍内のアルベンス派がゲリラ活動を活発化させました。

内戦の経緯：泥沼化する内戦

1959年のキューバ革命は、グアテマラ内戦に大きな影響を与えました。アルベンス派は、ソビエト連邦からの資金的、物質的な支援を受けるようになり、1962年には武装反乱軍を結成し、ゲリラ戦を展開しました。これに対し、アメリカ合衆国の支援を受けた軍事政権側は、クーデターを繰り返しながら、死の部隊による左派政党やゲリラに協力的なグアテマラ先住民の虐殺を行いました。先住民に自衛軍（PAC）を作らせて虐殺を行わせるという悲惨な事例もありました。

国際的な非難が高まる中、1986年にキリスト教民主党のビニシオ・セレソが大統領に就任し、1987年に国民和解委員会が発足しました。リゴベルタ・メンチュウが先住民虐殺に関する聞き取りを受け、1992年にノーベル平和賞を受賞しました。1990年代初頭に冷戦が終結すると、アメリカ合衆国とソビエト連邦からの支援が途絶え、1996年12月29日にグアテマラ政府とグアテマラ民族革命連合（URNG）との間で和平合意が成立しました。

内戦後の裁判：過去の清算

和平時には和解法が制定されましたが、虐殺や拷問、失踪に関する罪には免責が認められませんでした。2000年代に入ると、内戦に関与した関係者らが国内の裁判所において裁判にかけられるようになりました。2009年には、フェリペ・クサネロ元大佐が農民6人を行方不明にさせた罪で禁錮150年となりました。また、1982年から83年にかけて大統領を務めたエフライン・リオス・モント元将軍に対して、キチェ県のイシル族を中心に1800人近くを殺害したとしてジェノサイドの罪で禁錮80年の刑が言い渡されました。

グアテマラ内戦は、グアテマラ社会に深い傷跡を残しました。内戦の記憶を風化させず、過去の教訓を未来に活かすことが、グアテマラの平和と発展のために不可欠です。

参考文献

* 歴史的記憶の回復プロジェクト 編『グアテマラ 虐殺の記憶 真実と和解を求めて』岩波書店、2000年10月 ISBN 4-00-000448-4

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