死の部隊

死の部隊：暗殺と恐怖の歴史

死の部隊（英語: death squad、スペイン語: escuadrones de la muerte）とは、主に第三世界の各国、特に冷戦時代の中南米で、社会主義や反体制派を標的とした暗殺作戦を実行した秘密組織の総称です。近年では、反テロなどを名目としたものも存在します。

概要

死の部隊は、多くの場合、アメリカ陸軍米州学校（現・西半球安全保障協力研究所）などの支援を受け訓練された、軍や情報機関、警察などの国家機関、または自警団などの民兵によって構成されています。軍や警察が関与する場合、それは超法規的処刑と呼ばれます。標的は狙撃や誘拐によって殺害され、拷問を受けることも少なくありません。これらの人権侵害は、一部の国を除き、処罰されないことがほとんどでした。

アメリカ合衆国などでは、「死の部隊は社会秩序を維持するために活動しているのでテロリズム組織ではない」という主張や、「ソ連や社会主義中国の干渉に対する反抗であり自衛戦争である」という見方も存在します。しかし、彼らの標的にはホームレスやストリートチルドレンも含まれることがあり、支配層のイデオロギー、信仰、階層、人種などに与しない者が狙われる傾向にありました。

歴史的背景

中米・カリブ海諸国では、米国企業のプランテーションが広がり、各国はモノカルチャー経済に依存していました。これらの国々では、クリオーリョによる独裁政権が多かったのですが、民主化運動やゲリラ闘争が活発化しました。キューバ革命以後、武力革命を目指すゲリラが出現すると、政府は反共主義を掲げ、死の部隊の活動が活発化しました。内戦が激化すると、政府軍はゲリラと関係があると思われる農村を襲撃し、住民を皆殺しにする作戦を実行しました。ゲリラも政府軍に協力する農村を襲撃し、農民は虐殺されるという悲劇が起こりました。

各国の事例

グアテマラ: 1954年、ハコボ・アルベンス・グスマン大統領がユナイテッド・フルーツの土地を有償で接収しようとしたことにCIAが介入し、政権が転覆。「ラ・マノ・ブランカ」（白い手）などの死の部隊が創設され、数多くの人々が殺害されました。
ニカラグア: アメリカの資金援助によって親米反政府民兵「コントラ」が誕生し、虐殺を引き起こしました。
エルサルバドル: エルサルバドル軍は、アルゼンチン軍の指導の下に対ゲリラ戦を学び、軍内部の死の部隊が市民を暗殺し続けました。1979年から1987年の8年間で、約62,000人が殺害され、5,000人が行方不明となりました。
アルゼンチン: 1976年のクーデター後、軍事政権は「国家再編成プロセス」と称し、ペロニスタや左翼、労働組合関係者などを弾圧。8,000人から30,000人もの市民が殺害されました。
チリ: 1973年のクーデターで成立したピノチェト軍事政権は、左翼や中道の反体制派を粛清し、数多くの人々を虐殺しました。秘密警察「DINA」がコンドル作戦を立ち上げ、南米の軍事政権同士で死の部隊を連絡調整しました。
コロンビア: 左翼ゲリラから土地と財産を守るために地主が結成した自警団が、ゲリラのシンパとみなした市民や農民にテロ攻撃を行いました。コロンビア自衛軍連合（AUC）はFARCに協力した農民を年間1,000人も虐殺したため米国務省は2001年、FARCとAUCを国際テロ組織のリストに指定しました。

アジア、ヨーロッパ、アフリカの事例

アジア、ヨーロッパ、アフリカでも死の部隊の活動が見られました。フィリピンでは、共産主義を支持したとみなされた人物や団体への脅迫・人権侵害・政治的殺害が発生しています。スペインでは、バスク祖国と自由によるテロ活動に対抗するために、反テロリスト解放グループ(GAL)が結成され、ETAが活動していた南フランスのバスク人集落にて30件を超える襲撃を展開し、結果無関係の者を含む多数の人間を死傷させました。南アフリカのアパルトヘイト時代には、インカタ自由党など親政権派の黒人達による「自警団」が結成され、アフリカ民族会議などの反政府派黒人勢力への暗殺や迫害を行っていました。

現代への影響

死の部隊による人権侵害は、現代においても深刻な問題として残っています。真相究明や責任追及の動きはあるものの、圧力がかかり進展しないことも少なくありません。死の部隊の歴史は、人権の重要性と民主主義の脆弱性を私たちに教えてくれます。

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