グジャラート語

グジャラート語：インドの豊かな文化を語る言語

グジャラート語は、インド西部に位置するグジャラート州の公用語であり、インド憲法においても正式に認められた22の指定言語の一つです。インド・ヨーロッパ語族インド・イラン語派に属するこの言語は、世界中で約4600万人の話者数を誇り、世界第23位にランクインする主要言語となっています。インド国内では約4550万人が使用しており、その他、ウガンダ、ケニア、パキスタンなどにも話者が存在します。また、イギリスや北米にも大規模なグジャラート語話者コミュニティが形成されており、特にイギリスのレスターやロンドン北部、アメリカのニュージャージー州、ニューヨーク州、カリフォルニア州、テキサス州などに多くの人々が居住しています。このグローバルな拡がりから、非在住インド人（NRI）という表現よりも、冗談めかして「非在住グジャラート人（NRG）」と呼ばれることもあります。

さらに特筆すべき点として、グジャラート語は「インドの父」マハートマー・ガンディーと「パキスタンの父」ムハンマド・アリー・ジンナーの母語であったという歴史的背景も持っています。

歴史と文学

グジャラート語の起源は、アパブランシャと呼ばれる古代インドの言語にまで遡ります。アパブランシャは、11世紀頃のジャイナ教の学者ヘーマチャンドラによってその文法が記述されました。後期のアパブランシャはグジャラート語の要素を取り込み、現代グジャラート語へと発展していきました。

最も古いグジャラート語の文学作品は、口承によって伝えられてきたものです。17世紀には、クリシュナ信仰に深く関わったナラシンハ・メヘターが登場し、彼の詩や歌は後世の偉大な詩人や思想家たちに多大な影響を与えました。彼の作品は、現代グジャラート語の言語史研究においても重要な位置を占めています。また、プレーマーナンダのような吟遊詩人も活躍し、彼らの長編叙事詩は人々の記憶に長く刻まれました。これは、インドの古来からの口承文化の伝統が、近代にまで繋がっていることを示す重要な事例といえるでしょう。

19世紀には、イギリスの行政官アレクサンダー・フォーブスによるグジャラート地方とグジャラート語に関する本格的な研究が始まりました。フォーブスの研究は、現代のグジャラート語研究の基礎を築くものとなりました。現在でも、ムンバイに本部を置く「ファーバス・グジャラーティー・サバー」という学術団体が、彼の功績を称えています。

音声体系

グジャラート語は、8種類の母音と、多くの子音を持ちます。母音の長短の区別はありませんが、鼻母音の発達が特徴的です。また、「息もれ声」と呼ばれる独特の母音も存在します。これは、歴史的に子音と母音が融合して生まれた音です。

子音体系においては、ヒンディー語にはないそり舌側面音/ɭ/の存在が特徴的です。また、phは[f]に、vは文脈によって[v]や[w]に変化するなど、音声変化も豊富です。

語彙

グジャラート語の語彙は、長きにわたるイスラム教徒の支配の影響を受け、アラビア語やペルシア語からの借用語が多く見られます。これらの借用語は、主に世俗的な分野で使われています。

表記法

グジャラート語は、サンスクリット語やヒンディー語で使われるデーヴァナーガリー文字と類似したグジャラート文字で書かれます。しかし、デーヴァナーガリー文字とは異なる点もいくつか存在します。

グジャラート語は、その歴史、音声、語彙、そして表記法において、インドの言語的多様性を象徴する言語の一つです。これからも、世界中の多くの話者によって受け継がれ、発展していくことでしょう。

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