グリーゼ163

グリーゼ163

概要

グリーゼ163（Gliese 163）は、地球からおよそ49光年（約15.0パーセク）の距離にあるM3.5V型の赤色矮星です。太陽に比べて小さく低温な恒星に分類され、かじき座の領域に位置しています。天球上におけるその座標は、赤経04時09分15.663秒、赤緯−53度22分25.305秒です。

地球から観測される明るさを示す見かけの等級は11.8等と暗く、肉眼では確認できません。しかし、恒星自体の本来の光度を示す絶対等級では10.9等となります。グリーゼ163という名称は、近傍恒星をまとめたグリーゼ近傍恒星カタログによるもので、その他にHIP 19394やLHS 188といった別称でも知られています。

惑星系

グリーゼ163の周囲には、複数の惑星が存在していることが確認されています。これらの惑星は、チリのラ・シラ天文台に設置された高精度視線速度系外惑星探査装置（HARPS）による観測データに基づいて発見されました。最初の惑星の存在は、2012年9月に発表されています。

初期の観測によって存在が示唆された惑星のうち、特に科学的な関心を集めたのは、グリーゼ163bとグリーゼ163cです。

グリーゼ163c: 地球の約8.4倍の質量を持つスーパー・アースと推定されています。主星グリーゼ163の周囲を約26日周期で公転しており、この軌道は、液体の水が存在しうる範囲であるハビタブルゾーン内に位置する可能性が指摘されています。しかし、詳細な温度推定からは、地球よりも表面温度が高い環境であると考えられており、生命の存在には適さない可能性も示唆されています。生命居住可能性については、大気の詳細など、さらなる研究が必要です。

グリーゼ163b: こちらも地球の約10.6倍の質量を持つスーパー・アースと見られています。しかし、公転周期は約8.633日と非常に短く、主星に極めて近い軌道を巡っています。このため、恒星からの強力な放射線と熱を受けており、表面温度は非常に高く、生命が存在できる環境ではないと考えられています。

さらに、2013年6月には、追加の観測と解析により、グリーゼ163系には新たに3つの惑星、グリーゼ163d、グリーゼ163e、グリーゼ163fが存在することが確認されました。これらの惑星についても、その質量から以下のような分類がなされています。

グリーゼ163d: 質量に基づけば、海王星と同程度の大きさを持つ海王星型惑星であると考えられています。

グリーゼ163e、グリーゼ163f: これらの惑星も、グリーゼ163bやグリーゼ163cと同様に、スーパー・アースに分類されると考えられています。

このように、グリーゼ163系は、少なくとも5つの既知の惑星を持つ多惑星系です。特にハビタブルゾーン内に位置する可能性が指摘されたグリーゼ163cを含むこの惑星系は、赤色矮星周囲における惑星系の多様性や、地球外生命が存在しうる環境を探る上で重要な研究対象となっています。今後の精密な観測によって、これらの惑星の大気組成や表面環境など、さらに詳細な情報が得られることが期待されています。

もう一度検索