グロム級駆逐艦

グロム級駆逐艦

グロム級駆逐艦は、ポーランド海軍がイギリスから購入した駆逐艦です。艦級名は、ポーランド語で「雷」や「雷鳴」を意味する一番艦「グロム」に由来します。

建造までの経緯

イギリスは当初、ポーランドからの建造依頼に対し、既存のイギリス海軍駆逐艦の設計を流用できませんでした。前級のブルザ級駆逐艦はフランスの大型駆逐艦を基に設計されましたが、当時のイギリス海軍には同規模の艦艇が存在しなかったためです。

当時、日本、フランス、ドイツは、5～6インチ砲を多数搭載し、排水量2,000トン級、速力37ノットを超える強力な駆逐艦を多数建造し、イギリス海軍の駆逐艦を凌駕していました。イギリスは、これらの艦に対抗するため、火力で優位に立てる大型駆逐艦の整備を検討していました。

ポーランド海軍からの建造依頼は、イギリス海軍にとって絶好の機会であり、日本海軍の金剛型戦艦以来、久しぶりに持てる技術を駆使して大型駆逐艦を建造しました。そのため、グロム級の艦形は、後にイギリス海軍が建造するトライバル級大型駆逐艦に類似したデザインとなっています。

艦形

船体形状は典型的な船首楼型で、艦首に12cm単装砲、一段高い位置に連装砲を配置。艦橋後部には単脚檣、その背後に一本煙突、魚雷発射管を挟むように4cm連装機関砲が2基。さらに一段高い位置に、後ろ向きに12cm連装砲が背負い式に2基配置されています。

備砲

主砲は、スウェーデンのボフォース社製12cm(50口径)砲を採用。毎分10発の発射速度を持ち、41kgの砲弾を最大21,300mまで届かせることができました。1番砲は単装砲架、2番から4番砲は連装砲架に搭載されています。荒れる大西洋での作戦を考慮し、連装砲を高所に配置することで、波浪の影響を軽減し、砲撃能力を確保しました。

対空兵装として、イギリス海軍のポンポン砲ではなく、主砲と同じくボフォース社製の4cm(56口径)機関砲を連装砲架で2基搭載。近接対空火器として、オチキス社製13.2mm機関銃を連装砲架で4基、水雷兵装として53.3cm三連装魚雷発射管を2基装備しました。

機関

イギリス海軍式の重油専焼缶3基とパーソンズ式ギヤード・タービン2基2軸推進により、最大出力54,000hp、速力39ノットを発揮しました。15ノットでの航続距離は3,000海里と計算されています。

就役後の改装

第二次世界大戦開戦前にペキン作戦でイギリスへ脱出したグロム級2隻でしたが、バルト海での活動を想定した設計のため、復元性に問題がありました。大西洋での作戦に対応するため、復元性改善工事が行われ、探照灯台や一部搭載艇が撤去され、後部魚雷発射管の代わりに10.2cm単装高角砲が1基搭載されました。1940年5月にグロムは沈没しましたが、ブリスカヴィカは1941年12月に改装工事を受けました。この際、全主砲がイギリス製10.2cm連装高角砲4基に換装され、後部魚雷発射管が再装備されました。また、13.2mm機関銃が撤去され、20mm単装機銃4基が装備されました。その後も、イギリス製レーダーの増設、前部魚雷発射管の撤去、測定儀の高射指揮装置への換装、爆雷投射機の増設などが行われました。

同型艦

グロム：1937年5月竣工。1940年5月、ナルヴィク沖でドイツ空軍He111爆撃機の攻撃により沈没。
ブリスカヴィカ：1937年11月竣工。終戦時まで生き残り、その後ポーランド共産政府海軍に戻り、1976年5月1日から記念艦として展示。

参考文献

M・J・ホイットレー『第二次大戦駆逐艦総覧』岩重多四郎（訳）、大日本絵画、2000年。ISBN 4-499-22710-0

関連項目

ポーランド海軍艦艇一覧

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