グローリアス級航空母艦
グローリアス級航空母艦（またはカレイジャス級航空母艦）は、イギリス海軍が保有した航空母艦の艦級です。元々はカレイジャス級巡洋戦艦として建造された3隻の艦艇が、第一次世界大戦後に航空母艦へと改装されました。この級は、フューリアス、カレイジャス、グローリアスの3隻から構成されています。
カレイジャス級は、第一次世界大戦中にイギリス海軍が計画した戦時艦隊整備の一環として建造されました。フィッシャー提督の構想に基づき、バルト海方面への上陸作戦に投入されることを想定した、いわゆる「ハッシュ・ハッシュ・クルーザー」でした。小型の船体に浅い喫水設計が施され、カレイジャスとグローリアスは新設計の42口径15インチ連装砲塔を前後に搭載、フューリアスは39口径18インチ単装砲を前後に搭載する予定でした。高速モニターとも呼ばれるべき艦であり、当初は大型軽巡洋艦（軽巡洋戦艦）として就役し、グランドフリートでは軽装巡洋艦部隊を掩護する役割を担いました。しかし、第二次ヘルゴラント・バイト海戦に参加した程度で第一次世界大戦は終結し、カレイジャス級はその役割を失いました。
戦後、イギリス海軍はカレイジャスとグローリアスの扱いに苦慮しました。高速性能と巨砲は魅力的でしたが、装甲は既存の巡洋戦艦に劣り、大戦後の砲戦においては38.1cm砲4門という門数は戦力として不十分でした。1921年、ワシントン海軍軍縮条約が締結され、列強各国は建造中の巡洋戦艦や戦艦を航空母艦に改造する権利を獲得。イギリスは13万5000トンの枠内で、本級を航空母艦として保有することに決定しました。
フューリアスは1921年から空母への本格的な改造を開始し、1925年に多段式空母として再就役しました。カレイジャスは1924年から1928年、グローリアスは1924年から1930年にかけて、それぞれ空母への改装工事が行われました。
カレイジャスとグローリアスの航空母艦への改装は、先行して改造されたフューリアスの実績を参考にされました。外観上の大きな特徴は、フューリアスから取り入れられた「多段式飛行甲板」です。
初期のイギリス空母は、効果的な着艦装置の開発が遅れていました。そのため、着艦した艦載機を止めるために人員による制動が必要となり、着艦には飛行甲板の全スペースを使用する必要がありました。この問題を解決するため、艦首に発艦専用の飛行甲板を設け、艦中央部から二段目の格納庫分だけ嵩上げして着艦専用の飛行甲板を設置しました。これにより、上部飛行甲板で着艦作業を行いながら、艦首飛行甲板から小型の艦上戦闘機程度ならば発艦作業が可能になりました。
また、格納庫を二階建てにすることで搭載機数は改装前の10機から36機へと大幅に増加しました。格納庫の高さは1階・2階ともに4.6mでしたが、艦載機の分解格納と折りたたみ機構の開発により水上機の搭載も可能となり、水上機は艦尾からクレーンで昇降させて運用されました。
イギリス海軍は、この成功を受け、カレイジャスとグローリアスの改装にも同様のシステムを取り入れました。また、先行して竣工した空母イーグルや軽空母ハーミーズ同様、艦橋と煙突を一体化したアイランド型艦橋が採用されましたが、トップヘビー対策のため、三脚檣から簡素な単脚檣へと変更されました。さらに、細すぎる船体形状による横揺れを解消するために、艦体には浮力用バルジが追加されました。
改装後、本級は有力な航空母艦となりました。しかし、航空機の大型化に伴い、艦首甲板から発艦できる艦載機がなくなってしまい、艦首甲板を閉鎖して上部の飛行甲板のみを使用することになりました。
一方で、空母の着艦制動装置は開発が進み、フランスで開発された鋼索横張り式着艦装置をアメリカが改良し実用化しました。イギリス海軍もこれを導入し、1931年にはカレイジャスに初の横索式着艦装置が装備されました。また、大型化した艦載機の滑走距離の問題は、1935年～1936年頃に開発された空気圧式カタパルトの導入によって解決されました。これにより、本級は一線級航空母艦として第二次世界大戦を戦うこととなりました。
本級は、巡洋戦艦として就役した当初、全長が239mもあるにもかかわらず全幅が24.7mと狭く、前後に長い船体形状でした。排水量が2万トン台と小型だったため、水面からの乾舷が不足しており、艦首甲板をかさ上げして凌波性を向上させました。空母への改装に際しては、浮力確保とトップヘビーを抑制するため、水線部にバルジが追加され、船体幅は27.6mへと増加しました。フューリアスとの外観上の違いは、航空指揮所を兼ねたアイランド（島型艦橋）が設置されたことです。艦尾部のかさ上げはトップヘビーを防ぐため行われず、ここに設けられたクレーンにより水上機を運用しました。
艦載機の大型化に伴い、艦首側の飛行甲板が使用できなくなったため、1930年代後半の改装で艦尾部分をかさ上げし、そこに支柱を設けて上部飛行甲板を15mほど後方にオーバーハングさせる形で延長しました。また、1936年には、発艦を向上させるカタパルト2基が飛行甲板前部に並列で設置されました。
竣工時に搭載していた備砲は全て撤去され、新たに「Mark VIII 12cm（40口径）高角砲」が主砲として採用されました。この砲は、22.7kgの砲弾を仰角45度で14,780m、最大仰角90度で9,750mの高度まで到達させることができました。発射速度は毎分8～12発でした。高角砲は艦首飛行甲板後部、中部甲板舷側、艦尾甲板上に合計18基搭載されました。
本級は、対空火力を大幅に向上させましたが、高角砲の配置位置は上部に迫り出した格納庫に射界を狭められるなど、運用上の問題点がありました。高角砲はシールドされておらず露天で扱われたため、外洋行動時には波浪により運用が困難でした。近接対空火器としては「4cm（39口径）ポンポン砲」と12.7mm機銃が搭載されました。
本級の防御は、巡洋戦艦時代のものがそのまま残され、舷側防御は76mm装甲、甲板防御は38mmから52mm装甲へと強化されました。飛行甲板の一部には25mm装甲が貼られました。また、空母改装時に追加された舷側バルジの内側には38mm装甲板が貼られ、三層式の縦壁による多層水雷防御により、爆薬200kgの魚雷に耐えるものとされました。
しかし、1939年にドイツ潜水艦の攻撃により、カレイジャスは被雷後約30分で転覆しました。この時までにドイツの潜水艦用魚雷の炸薬量は300kgに達しており、改装時の想定を超えていたことが原因と考えられます。
本級は、新造時からヤーロー社製の細管水管缶とギヤード・タービンを搭載しており、最大出力90,000馬力、速力32ノットを発揮しました。空母への改装時に機関の大幅な変更は行われず、船体幅の増加に伴い最大速力は29.5ノットへと低下しました。
本級は、多段式飛行甲板とカタパルトを備え、当時のイギリス海軍の航空母艦の中では比較的優れた航空艤装を持っていました。
第二次世界大戦中に2隻が戦没し、フューリアスは大戦終結後に解体されました。
世界の艦船増刊第30集 イギリス戦艦史（海人社）
世界の艦船増刊第71集 イギリス航空母艦史（海人社）
世界の艦船 2008.No.685 航空母艦全史（海人社）
世界の艦船 2010.No.718 近代巡洋艦史（海人社）
空母 日米機動部隊の激突（株式会社サンケイ出版）
アジア歴史資料センター（公式）（防衛省防衛研究所）
イギリス海軍航空母艦一覧
イギリス海軍艦艇一覧
ワシントン海軍軍縮条約での各国保有艦艇一覧
レキシントン級巡洋戦艦／レキシントン級航空母艦
天城型巡洋戦艦／天城（廃棄）、赤城、加賀
ノルマンディー級戦艦／ベアルン
ヴァンガード (戦艦) - 航空母艦への改装に伴い撤去されていたグローリアスとカレイジャスの主砲が転用された。
Glarac Association website remembering those lost with HMS Glorious
Maritimequest HMS Glorious photo gallery
The loss of HMS Glorious
The Tragedy of HMS Glorious
Maritimequest HMS Courageous photo gallery
カレイジャス級巡洋戦艦
カレイジャス級は、第一次世界大戦中にイギリス海軍が計画した戦時艦隊整備の一環として建造されました。フィッシャー提督の構想に基づき、バルト海方面への上陸作戦に投入されることを想定した、いわゆる「ハッシュ・ハッシュ・クルーザー」でした。小型の船体に浅い喫水設計が施され、カレイジャスとグローリアスは新設計の42口径15インチ連装砲塔を前後に搭載、フューリアスは39口径18インチ単装砲を前後に搭載する予定でした。高速モニターとも呼ばれるべき艦であり、当初は大型軽巡洋艦（軽巡洋戦艦）として就役し、グランドフリートでは軽装巡洋艦部隊を掩護する役割を担いました。しかし、第二次ヘルゴラント・バイト海戦に参加した程度で第一次世界大戦は終結し、カレイジャス級はその役割を失いました。
戦後、イギリス海軍はカレイジャスとグローリアスの扱いに苦慮しました。高速性能と巨砲は魅力的でしたが、装甲は既存の巡洋戦艦に劣り、大戦後の砲戦においては38.1cm砲4門という門数は戦力として不十分でした。1921年、ワシントン海軍軍縮条約が締結され、列強各国は建造中の巡洋戦艦や戦艦を航空母艦に改造する権利を獲得。イギリスは13万5000トンの枠内で、本級を航空母艦として保有することに決定しました。
フューリアスは1921年から空母への本格的な改造を開始し、1925年に多段式空母として再就役しました。カレイジャスは1924年から1928年、グローリアスは1924年から1930年にかけて、それぞれ空母への改装工事が行われました。
航空母艦への改装
カレイジャスとグローリアスの航空母艦への改装は、先行して改造されたフューリアスの実績を参考にされました。外観上の大きな特徴は、フューリアスから取り入れられた「多段式飛行甲板」です。
初期のイギリス空母は、効果的な着艦装置の開発が遅れていました。そのため、着艦した艦載機を止めるために人員による制動が必要となり、着艦には飛行甲板の全スペースを使用する必要がありました。この問題を解決するため、艦首に発艦専用の飛行甲板を設け、艦中央部から二段目の格納庫分だけ嵩上げして着艦専用の飛行甲板を設置しました。これにより、上部飛行甲板で着艦作業を行いながら、艦首飛行甲板から小型の艦上戦闘機程度ならば発艦作業が可能になりました。
また、格納庫を二階建てにすることで搭載機数は改装前の10機から36機へと大幅に増加しました。格納庫の高さは1階・2階ともに4.6mでしたが、艦載機の分解格納と折りたたみ機構の開発により水上機の搭載も可能となり、水上機は艦尾からクレーンで昇降させて運用されました。
イギリス海軍は、この成功を受け、カレイジャスとグローリアスの改装にも同様のシステムを取り入れました。また、先行して竣工した空母イーグルや軽空母ハーミーズ同様、艦橋と煙突を一体化したアイランド型艦橋が採用されましたが、トップヘビー対策のため、三脚檣から簡素な単脚檣へと変更されました。さらに、細すぎる船体形状による横揺れを解消するために、艦体には浮力用バルジが追加されました。
改装後、本級は有力な航空母艦となりました。しかし、航空機の大型化に伴い、艦首甲板から発艦できる艦載機がなくなってしまい、艦首甲板を閉鎖して上部の飛行甲板のみを使用することになりました。
一方で、空母の着艦制動装置は開発が進み、フランスで開発された鋼索横張り式着艦装置をアメリカが改良し実用化しました。イギリス海軍もこれを導入し、1931年にはカレイジャスに初の横索式着艦装置が装備されました。また、大型化した艦載機の滑走距離の問題は、1935年～1936年頃に開発された空気圧式カタパルトの導入によって解決されました。これにより、本級は一線級航空母艦として第二次世界大戦を戦うこととなりました。
設計
船体
本級は、巡洋戦艦として就役した当初、全長が239mもあるにもかかわらず全幅が24.7mと狭く、前後に長い船体形状でした。排水量が2万トン台と小型だったため、水面からの乾舷が不足しており、艦首甲板をかさ上げして凌波性を向上させました。空母への改装に際しては、浮力確保とトップヘビーを抑制するため、水線部にバルジが追加され、船体幅は27.6mへと増加しました。フューリアスとの外観上の違いは、航空指揮所を兼ねたアイランド（島型艦橋）が設置されたことです。艦尾部のかさ上げはトップヘビーを防ぐため行われず、ここに設けられたクレーンにより水上機を運用しました。
艦載機の大型化に伴い、艦首側の飛行甲板が使用できなくなったため、1930年代後半の改装で艦尾部分をかさ上げし、そこに支柱を設けて上部飛行甲板を15mほど後方にオーバーハングさせる形で延長しました。また、1936年には、発艦を向上させるカタパルト2基が飛行甲板前部に並列で設置されました。
兵装
竣工時に搭載していた備砲は全て撤去され、新たに「Mark VIII 12cm（40口径）高角砲」が主砲として採用されました。この砲は、22.7kgの砲弾を仰角45度で14,780m、最大仰角90度で9,750mの高度まで到達させることができました。発射速度は毎分8～12発でした。高角砲は艦首飛行甲板後部、中部甲板舷側、艦尾甲板上に合計18基搭載されました。
本級は、対空火力を大幅に向上させましたが、高角砲の配置位置は上部に迫り出した格納庫に射界を狭められるなど、運用上の問題点がありました。高角砲はシールドされておらず露天で扱われたため、外洋行動時には波浪により運用が困難でした。近接対空火器としては「4cm（39口径）ポンポン砲」と12.7mm機銃が搭載されました。
防御
本級の防御は、巡洋戦艦時代のものがそのまま残され、舷側防御は76mm装甲、甲板防御は38mmから52mm装甲へと強化されました。飛行甲板の一部には25mm装甲が貼られました。また、空母改装時に追加された舷側バルジの内側には38mm装甲板が貼られ、三層式の縦壁による多層水雷防御により、爆薬200kgの魚雷に耐えるものとされました。
しかし、1939年にドイツ潜水艦の攻撃により、カレイジャスは被雷後約30分で転覆しました。この時までにドイツの潜水艦用魚雷の炸薬量は300kgに達しており、改装時の想定を超えていたことが原因と考えられます。
機関
本級は、新造時からヤーロー社製の細管水管缶とギヤード・タービンを搭載しており、最大出力90,000馬力、速力32ノットを発揮しました。空母への改装時に機関の大幅な変更は行われず、船体幅の増加に伴い最大速力は29.5ノットへと低下しました。
航空艤装
本級は、多段式飛行甲板とカタパルトを備え、当時のイギリス海軍の航空母艦の中では比較的優れた航空艤装を持っていました。
その他
第二次世界大戦中に2隻が戦没し、フューリアスは大戦終結後に解体されました。
出典
世界の艦船増刊第30集 イギリス戦艦史（海人社）
世界の艦船増刊第71集 イギリス航空母艦史（海人社）
世界の艦船 2008.No.685 航空母艦全史（海人社）
世界の艦船 2010.No.718 近代巡洋艦史（海人社）
空母 日米機動部隊の激突（株式会社サンケイ出版）
アジア歴史資料センター（公式）（防衛省防衛研究所）
関連項目
イギリス海軍航空母艦一覧
イギリス海軍艦艇一覧
ワシントン海軍軍縮条約での各国保有艦艇一覧
レキシントン級巡洋戦艦／レキシントン級航空母艦
天城型巡洋戦艦／天城（廃棄）、赤城、加賀
ノルマンディー級戦艦／ベアルン
ヴァンガード (戦艦) - 航空母艦への改装に伴い撤去されていたグローリアスとカレイジャスの主砲が転用された。
外部リンク
Glarac Association website remembering those lost with HMS Glorious
Maritimequest HMS Glorious photo gallery
The loss of HMS Glorious
The Tragedy of HMS Glorious
Maritimequest HMS Courageous photo gallery
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