ゲレセンジェ

ゲレセンジェ：外ハルハ部の始祖

ゲレセンジェ（1482年 - ?）は、ダヤン・ハーン（バト・モンケ）の息子の一人であり、外ハルハ諸部の始祖としてモンゴル史に名を残しています。彼は「ジャライル・ホンタイジ」とも称され、その生涯は様々なモンゴル年代記に記録されています。

生い立ちとハルハ部族掌握の経緯

ゲレセンジェは、ダヤン・ハーンと側室ジャライルのスミル・ハトンの間に生まれました。同母兄弟には、ウルウトを統治したゲレ・ボラトがいます。

『アサラクチ史』や『シラ・トージ』といった年代記には、ゲレセンジェが外ハルハの主となるまでの経緯が記されています。それによると、ハルハ・トゥメンに属するチノス部のウダ・ボラトがダヤン・ハーンに対し、「ハルハはジャライルとケルートの有力者たちに支配されているため、我らの主となるべき息子を一人下さい」と嘆願しました。これを受け、ダヤン・ハーンは当初ゲレ・ボラトをハルハに派遣しましたが、ゲレ・ボラトの強情な性格が問題となり、ダヤン・ハーンの下へ送り返されました。その後、改めてゲレセンジェがハルハへ送られ、ハルハの主となったとされています。

ハルハ・トゥメンの分裂

ハルハ・トゥメンは内ハルハと外ハルハの二つの勢力に分かれていましたが、上記の逸話には内ハルハが登場しません。このことから、当時すでに両勢力は分裂状態にあったと考えられています。内ハルハ5部は、ゲレセンジェの兄であるアルチュ・ボラトが相続しています。

また、この逸話からは、ジャライルとケルート、特にジャライルが外ハルハにおいて有力な部族であったことが窺えます。

ゲレセンジェの意義

ゲレセンジェは、外ハルハ部の始祖として、その後のモンゴル史に大きな影響を与えました。彼の登場は、ハルハ・トゥメンの分裂を決定的なものとし、外ハルハ部の独自性を確立する契機となりました。また、ジャライルといった有力部族との関係は、その後の外ハルハ部の政治 dynamics を理解する上で重要な要素となります。


参考文献

岡田英弘訳注『蒙古源流』刀水書房、2004年
森川哲雄「ハルハ・トゥメンとその成立について」『東洋学報』55巻、1972年
森川哲雄『モンゴル年代記』白帝社、2007年
吉田順一『アルタン・ハーン伝訳注』風間書房、1998年

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