コトドリ

コトドリ（琴鳥）

コトドリ（学名：Menura novaehollandiae）は、スズメ目コトドリ科に分類される、オーストラリアを代表する鳥類の一種です。その名の通り、オスの持つ見事な尾羽が特徴で、求愛行動の際にその美しさを最大限に発揮します。また、他の鳥の鳴き真似をする能力も非常に高く、自然界の優れたエンターテイナーとも言えるでしょう。

特徴

コトドリは、全長80cmから100cmにもなる大型の鳥です。そのうち、尾羽が約60cmを占めており、オスはレースのような美しい飾り羽を持っています。この尾羽が竪琴に似ていることから、和名で「琴鳥」と呼ばれるようになりました。体の色は、背面が灰色で、腹面が乳白色、翼や喉は赤茶色をしています。オーストラリアの10セント硬貨のデザインにも採用されており、オーストラリアを象徴する鳥の一つです。

分布

コトドリは、オーストラリア東海岸の森林地帯に生息しています。具体的には、クイーンズランド州サウス・イースト・クイーンズランド地域からニューサウスウェールズ州、ビクトリア州にかけて分布しています。また、1950年前後にはタスマニア州に移入され、生息域を広げています。コトドリはオーストラリア固有種であり、その生息環境は森林に限定されています。

生態

コトドリは主に地上で生活し、腐葉土や朽ち木を脚でかき分けながら、地中の昆虫やミミズなどの無脊椎動物を探して捕食します。繁殖期になると、オスは求愛行動のために特別な塚を作ります。この塚は、落ち葉や枯れ木などを集めて作られ、高さは約1mにもなります。求愛行動では、オスは飾り羽のついた尾羽を上に持ち上げ、飾り羽で自分の体を覆うように広げ、他の鳥の鳴き声を真似ながらダンスをします。この求愛行動は非常に複雑で、メスを魅了するための様々な要素が含まれています。

また、コトドリの特筆すべき能力として、他の鳥の鳴き声だけでなく、人工的な音を真似ることができる点が挙げられます。個体によっては、人の話し声やカメラのシャッター音、チェーンソーの音、車のブレーキ音など、様々な音を再現できます。この擬態能力は、コトドリが非常に知的な鳥であることを示しています。メスは1羽で巣を作り、一回の産卵で1つの卵を産み、一夫一妻で子育てをします。

コトドリの鳴き声の擬態

コトドリの鳴き真似は、他の鳥の鳴き声だけでなく、環境音まで広範囲に及びます。この能力は、求愛行動に利用されるだけでなく、他のコトドリとのコミュニケーションにも使われていると考えられています。録音された音声を真似るコトドリの研究も進んでおり、その知能の高さが科学的にも証明されつつあります。コトドリの擬態は、自然界における模倣の巧みさを示す素晴らしい例です。また、コトドリは、その美しい姿とユニークな生態から、多くの人々を魅了し、研究対象としても非常に興味深い鳥です。

参考文献

Field Guide to Australian Birds, Michael Morcombe, Steve Panish Publishing, 2004, ISBN 9781740215596
A GUIDE TO LAMINGTON NATIONAL PARK, Lesley Hutley, Lamington Natural History Association,2006, P.180-181, ISBN 9780858812086
柴田佳秀 (2006). ポケット図解鳥の雑学がよーくわかる本. 秀和システム. p. 176. ISBN 9784798012872.
藤原晴彦 (2007). 似せてだます擬態の不思議な世界. 化学同人. p. 167. ISBN 9784759813029.
倉方秀憲「フランス語の「名づけ」の構造」『早稲田大学大学院文学研究科紀要. 第2分冊英文学 フランス語フランス文学 ドイツ語ドイツ文学 ロシア語ロシア文化 中国語中国文学』第61巻、早稲田大学大学院文学研究科、2016年2月、39-54頁、hdl:2065/48615、ISSN 13417525、NAID 120005775082、CRID 1050001202458881792。
小宮輝之 (2017). 鳥. 学研プラス. p. 202. ISBN 9784052045783.
マイケル・Ｊ・ライアン; 東郷えりか (2018). 動物たちのセックスアピール. 河出書房新社. pp. 24. ISBN 9784309253893.
おかがきPR課 広報広聴係「オージー・スラング・タイム　オーストラリアのスラングを学ぼう」『広報おかがき』第1018号、岡垣町、2019年、22頁。
丸山貴史; しょうのまき (2020). オス・メスくらべるとこんなに違う つがい動物図鑑. かんき出版. pp. 100. ISBN 9784761275044.
荒俣宏 (2021). 普及版世界大博物図鑑別巻1 絶滅・希少鳥類. 平凡社. p. 309. ISBN 9784582518665.
小宮輝之; 掛川花鳥園; かげ (2022). ゆるゆる怪鳥図鑑. 学研プラス. pp. 50-51. ISBN 9784059201717.
地球の歩き方編集室 (2022). W13 世界遺産 絶景でめぐる自然遺産 完全版. 地球の歩き方. p. 244. ISBN 9784059198505.

関連項目

* オーストラリアの野鳥一覧

もう一度検索