コマクサ

コマクサ（駒草）とは

コマクサ（学名：Dicentra peregrina）は、ケシ科コマクサ属に分類される多年草の高山植物です。厳しい環境で生育することから「高山植物の女王」と称され、その美しい姿は多くの人々を魅了します。

特徴

• - 生育環境: 砂礫地のような、他の植物が生育できない過酷な環境を好みます。そのため、地下には地上部の想像をはるかに超える長い根を張り巡らせています。
• - 形態: 草丈は5cmほどと小さく、根生葉は細かく裂けてパセリのようです。花期は7月から8月で、10-15cmほどの花茎に淡紅色の花を咲かせます。花弁は4枚で、外側の花弁は大きく膨らみ反り返り、内側の花弁は小さく中央がくびれています。萼片は2枚で早くに落ちます。
• - その他: 双子[[葉]]植物ですが、子[[葉]]は1枚しか出ません。花が枯れると、長さ約1.2cmの細長い楕円形の種子をつけます。染色体数は2n=16です。
• - 別名: カラフトコマクサ（樺太駒草）
• - 花言葉: 「高嶺の花」「誇り」「気高い心」「貴重品」

分布

コマクサは、千島列島、樺太、カムチャッカ半島、シベリア東部などの東北アジアと、日本の北海道から中部地方の高山帯に分布しています。日本では、特に大雪山系、白馬岳、蓮華岳、燕岳などに大きな群落が見られます。また、秋田県田沢湖町（現仙北市）では「町の花」として親しまれていました。

生態

日本では、北海道大雪山にのみ生息するウスバキチョウの幼虫が、コマクサを食草としています。また、花の蜜を吸いに来たマルハナバチなどが受粉を助けます。

毒性

コマクサには、微量ながらアルカロイドが含まれており、全株に毒性があります。中毒症状としては、嘔吐、体温の低下、呼吸麻痺、心臓麻痺などが報告されています。

コマクサと人間

薬草としての利用

コマクサは古くから腹痛の薬として利用されてきました。御嶽山では、かつて登山記念として「オコマグサ」の名で販売されていたことから、「一銭草」とも呼ばれていました。また、「御百草」の原料の一つとしても利用されていましたが、現在は含まれていません。

保護活動

コマクサは、過剰な採取や環境変化により、多くの地域で減少しています。そのため、各都道府県でレッドリストに指定され、保護活動が行われています。各地の植物園などでも栽培展示され、その美しさを後世に伝える努力が続けられています。

コマクサの群生地

日本国内の主な群生地は以下の通りです。

• - 北海道: 知床半島、雌阿寒岳、大雪山系
• - 東北地方: 岩手山、秋田駒ヶ岳、蔵王連峰
• - 北アルプス: 白馬岳、蓮華岳、燕岳、乗鞍岳
• - その他: 燧ヶ岳、草津白根山、八ヶ岳、御嶽山

関連施設

コマクサが栽培されている主な施設は以下の通りです。

• - ミニ尾瀬公園
• - 東館山高山植物園（志賀高原）
• - 白馬山麓植物園（白馬村）
• - 白馬五竜高山植物園
• - 国営アルプスあづみの公園
• - 大町山岳博物館
• - コマクサ高山植物園（ヘブンスそのはらSNOW WORLD）
• - 御岳ロープウェイ山麓駅お花畑（御岳ロープウェイスキー場）
• - 六甲高山[[植物園]]

紋章・校章

コマクサは、以下の学校の紋章や校章にも使用されています。

• - 東北文教大学
• - 山形城北高等学校
• - 秋田県立角館南高等学校
• - 信州大学
• - 信州大学教育学部附属松本小学校
• - 長野県岡谷南高等学校
• - 山形市立第三小学校

昔話

長野県木曽御嶽山には、コマクサにまつわる「おこま」の昔話が残っています。病気の娘がお告げに従ってコマクサを飲んだところ、病気が治ったという伝説です。

近縁種

コマクサの近縁種には、ケマンソウ（タイツリソウ）などがあります。

種の保全状況評価

多くの都道府県でレッドリストに指定されており、絶滅危惧種として扱われています。

• - 絶滅危惧IA類（CR）: 秋田県
• - 絶滅危惧I類（CRまたはEN）: 福島県
• - 絶滅危惧II類（VU）: 山形県、新潟県
• - 希少種（R）: 北海道
• - Cランク: 岩手県

コマクサは、その美しい姿と厳しい環境で生きる強さから、多くの人々に愛されています。しかし、絶滅の危機に瀕している現状を認識し、保護活動への理解と協力が求められています。

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