サテライト・ビジネス・システムズ

サテライト・ビジネス・システムズ（SBS）とは

サテライト・ビジネス・システムズ（Satellite Business Systems, SBS）は、1975年にIBM、Aetna、COMSATの3社によって設立された、企業向けの衛星通信サービスを提供する会社でした。当時としては画期的な試みとして、複数の静止衛星を利用し、音声通信やデータ通信を私企業向けに行うという、初の事業でした。

しかし、時代の流れとともにSBSは変遷を遂げ、IBMによる買収、MCIによる完全子会社化を経て、1980年代後半にはその事業をほぼ終えることとなりました。

SBS設立の背景と歴史

SBS設立の計画は1970年代に遡ります。当時、AT&Tが通信分野を独占していましたが、MCI Communicationsがその独占に挑み、地上ネットワークを必要としない衛星通信に着目しました。MCIはロッキード（通信衛星の製造会社）と共同で、1971年にFCC（連邦通信委員会）から衛星通信による特別電気通信事業者としての許可を得ます。その後、事業拡大のためCOMSATが加わり、1974年にはIBMが新たな投資家として参入しました。

そして1975年、IBMが資本の3分の1を所有する形で、IBM、MCI、そしてエトナ保険会社（Aetna）の3社が共同で、サテライト・ビジネス・システムズ（SBS）を設立しました。

SBSの技術

SBSの通信衛星は、Kuバンドと呼ばれる周波数帯を利用していました。Kuバンドは、当時主流だったCバンドに比べて比較的小さなトランスポンダで済むため、利用企業にとって有利であると考えられていました。Cバンドは約8フィートのディッシュアンテナを必要とするのに対し、Kuバンドはそのサイズを抑えることができました。

地上ステーションはIBMが設計し、IBM 1800コンピューターと時分割多元接続（TDMA）モデムを高度に改良して使用していました。地上ステーションのネットワークは、バージニア州マクリーンにあるセンターから一元的にコントロールされていました。

販売戦略の転換と苦戦

SBSは当初、音声およびデータ通信の需要が高い大企業をターゲットとし、主要都市に地上ステーションを設置することを推奨していました。しかし、このアプローチは大企業の賛同を得られず、当時の通信プロトコルが衛星通信に適していなかったこともあり、販売は伸び悩みました。

その後、SBSの顧客であったISACOMMが中小企業への販売を試みましたが、地上ステーションの設置コストなどがネックとなり、MCIやスプリントといった企業が地上波ネットワークで成功を収める中で、SBSは初期の販売目標を達成することができませんでした。結果として、SBSの通信衛星は他の目的に貸し出されることとなりました。SBSの販売本部は、技術センターおよびコールセンターと共に、フロリダ州タンパに置かれていました。

SBSの通信衛星

SBSは、1980年に打ち上げられたSBS 1から、1990年に打ち上げられたSBS 6まで、合計6基の通信衛星を運用しました。これらの衛星はすべてヒューズ・エアクラフトによって製造され、SBS 6がHS-393をベースにしていた以外は、すべてHS-376というモデルをベースにしていました。

特に、通信衛星SBS 3は、スペースシャトルの初の運用ミッションであるSTS-5で、1982年に打ち上げられました。SBSのエンジニアは、この衛星を毎分500回転させ、ある時点で爆発機構を使って宇宙へ放出するという、当時としては画期的な設計を行いました。

これらの衛星は既に運用を終え、現在は墓場軌道に位置しています。

SBSの終焉

1984年、COMSATがSBSから撤退し、翌年にはMCIがSBSを買収しました。MCIはその後、SBSの顧客をほぼ地上波ネットワークへと移行させました。SBSがMCIに買収された時点で4基の通信衛星が残っており、それらはロッキード・マーチンやインテルサットといった企業に売却されました。最後に残った通信衛星（SBS 6）は、インテルサットによって買収されました。

関連項目

MCI
IBMのPBXメーカーROLM社の買収（1985年）と売却（1993年）

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