サブプライム住宅ローン危機の年表

サブプライム住宅ローン危機は、2007年頃から顕在化し、世界的な金融危機へと発展しました。この危機は、アメリカの住宅市場の過熱と、それを支えたサブプライムローンの拡大が背景にあります。本年表では、危機の兆候が見え始めた2000年代初頭から、その後の金融市場の混乱、そして各国政府の対応策までを詳細に追います。

危機の前兆（2006年まで）

1996年12月：FRB議長アラン・グリーンスパンがアメリカ株式市場の過熱を「根拠なき熱狂」と表現。しかしその後、金融緩和を推し進め、住宅バブルを発生させる要因を作ったとの指摘があります。
2001年9月11日：アメリカ同時多発テロ事件が発生。ニューヨーク証券取引所などが大きく下落しました。
2001年12月2日：エンロンが倒産。
2002年7月21日：ワールドコムが倒産。
2003年4月28日：日経平均株価がバブル後最安値を記録。
2004年：アメリカが金融緩和を終了し、公定歩合を上げ始めました。
2005年5月：ラグラム・ラジャンが論文を発表し、金融発展のリスクを警告しましたが、当時は批判を受けました。
2006年第2四半期：アメリカで住宅価格の下落が始まりました。

危機の顕在化（2007年）

2月27日：上海株式市場で株価が大幅に下落する「上海ショック」が発生。
6月20日：日本で改正建築基準法が施行。構造計算書偽造問題が背景にありましたが、過剰な規制が住宅建設の停滞を招きました。
7月9日：日経平均がITバブル後最高値を記録。
8月9日：フランスのBNPパリバが傘下のファンドの資産を凍結し、「パリバ・ショック」が発生。欧州中央銀行が大規模な資金供給を行いました。
9月14日：イギリスの中央銀行がノーザン・ロックに救済融資を発表しました。
10月：メリルリンチのCEOが引責辞任。日本では景気の山がこの月に記録されました。
10月9日：NYダウ平均株価が史上最高値を更新。
10月16日：上海総合指数がピークを付け、その後下落に転じました。
12月：アメリカ経済が景気循環上の山を迎えました。日経平均の年末終値は1万5307円でした。

金融危機の深刻化（2008年8月まで）

3月16日: JPモルガン・チェースがベアー・スターンズを買収。
5月30日: JPモルガン・チェースがベアー・スターンズを救済合併。
7月: インディマック銀行が破綻。

リーマン・ショックと世界的な金融危機（2008年9月以降）

9月7日：政府支援機関であるフレディマックとファニーメイがアメリカ政府の管理下に入りました。
9月10日：リーマン・ブラザーズの株価が急落。
9月15日：リーマン・ブラザーズが経営破綻し、「リーマン・ショック」が発生。バンク・オブ・アメリカがメリルリンチを救済合併しました。
9月16日：リーマン・ブラザーズの日本法人が民事再生法を申請。アメリカ政府がAIGを事実上国有化しました。
9月18日：イギリスの大手銀行が救済合併を発表。主要中央銀行が大規模な資金供給を実施しました。
9月21日：ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーが銀行持株会社に移行しました。
9月22日：三菱UFJフィナンシャル・グループがモルガン・スタンレーへ出資を発表しました。
9月25日：ワシントン・ミューチュアルが破綻し、JPモルガン・チェースが事業を買収しました。
9月29日: アメリカ下院が緊急経済安定化法案を否決、世界的に金融市場が大きく動揺しました。
10月1日：アメリカ上院が緊急経済安定化法を可決し、政府が不良資産の買い取りを決定しました。
10月3日：アメリカ下院でも緊急経済安定化法が可決しました。ウェルズ・ファーゴがワコビアの株式取得を模索。ベルギーの金融グループが公的資金の投入を受けました。
10月4日：EU主要国首脳会議が開催されましたが、協調姿勢が不足していると市場に失望を与えました。
10月5日：ドイツ政府がHREに公的資金を投入しました。日銀が市場に資金供給を開始しました。
10月6日：FRBが資金供給を倍増。フレディマックとファニーメイのCDS精算価格が決定しました。
10月7日: ロシアRTS市場が大幅に下落し取引停止、アイスランド・クローナが暴落しました。NYダウ平均が1万ドルを割り込み、日経平均も大幅下落しました。FRBが社債買取を発表しました。
10月8日：日経平均が史上ワースト3位の暴落を記録しました。各国が金融機関への公的資金注入を発表。FRBがAIGに追加融資枠を設定しました。
10月9日：ニューシティ・レジデンス投資法人が東証REIT初の破綻。ECBが過去最大規模の資金供給を実施しました。NYダウ平均株価が再び大幅に下落しました。
10月10日：大和生命保険が経営破綻。日経平均が5年5ヶ月ぶりの安値に。東京株式市場の時価総額が1年前のほぼ半額になりました。世界的な株安が進行しました。
10月11日: 先進7か国財務相・中央銀行総裁会議（G7）が開催され、行動計画が発表されました。
10月12日: IMFと世界銀行が共同声明を発表し、金融危機による最貧国への影響を懸念しました。
10月13日: 日米欧5中銀が無制限ドル資金供給を発表。各国市場が上昇に転じました。
10月14日: 日経平均が過去最大の上げ幅を記録しました。
10月15日: アメリカの財政赤字が過去最大に。
10月16日: バーナンキFRB議長の発言がきっかけで株価が急落しました。日経平均がブラックマンデー以来2番目の暴落となりました。原油価格が大幅に下落しました。
10月17日: 世界各国の公的資金注入状況が発表され、大規模な資金が投入されていることが明らかになりました。アメリカの消費者信頼感指数が過去最低を記録しました。
10月18日：米大手金融機関が金融安定化法の公的資金資本注入を受け入れました。
10月27日: 日経平均株価がバブル崩壊後の最安値を更新しました。
11月4日：アメリカ大統領選挙でバラク・オバマが勝利。
11月14-15日：第1回20か国・地域首脳会合（金融サミット）が開催されました。
12月11日：アメリカの自動車業界に対する救済法案が事実上廃案。その後、つなぎ融資が行われることになりました。
12月11日：バーナード・L・マドフが巨額投資詐欺の容疑で逮捕されました。

危機後の対応と影響（2009年以降）

2009年2月：IMF専務理事が「先進各国は恐慌状態にある」と非公式にコメントしました。
2009年4月：第2回20か国・地域首脳会合が開催され、世界経済の回復に向けた協力が確認されました。日本政府が過去最大の経済対策を決定しました。
2009年5月：アメリカの金融機関に対するストレステストの結果が公表されました。
2009年6月：GMが連邦倒産法を申請し経営破綻しました。
2009年11月：アラブ首長国連邦のドバイの政府系金融企業の債務支払い繰り延べ要請が明らかとなり金融不安が生じました（ドバイ・ショック）。
2010年5月: EU・IMFが財政危機のギリシャに金融支援で合意しました。
2010年7月：ドッド＝フランク・ウォール街改革・消費者保護法が成立しました。
2010年11月：アイルランドがEUとIMFに金融支援を要請しました。

参考文献

アダム・トゥーズ著、江口泰子, 月沢李歌子訳『暴落 - 金融危機は世界をどう変えたのか（上・下）』みすず書房、2020年。
福光寛「アメリカの住宅金融をめぐる新たな視点 : 証券化の進展の中でのサブプライム層に対する略奪的貸付」『成城大學經濟研究』第170巻、成城大学経済学会、2005年。
藤井彰夫『G20 先進国・新興国のパワーゲーム』日本経済新聞出版社、2011年。
アティフ・ミアン; アミール・サフィ著、岩本千晴訳『ハウス・オブ・デット（Kindle版）』東洋経済新報社、2015年。
ラグラム・ラジャン著、伏見威蕃, 月沢李歌子訳『フォールト・ラインズ――「大断層」が金融危機を再び招く』新潮社、2011年。
* 渡邉真理子「中国のサブプライム危機の影響と対応」『比較経済研究』第47巻第1号、比較経済体制学会、2010年。

この年表は、サブプライム住宅ローン危機とその後の世界的な金融危機の経過を概観するためのものです。各出来事の正確な時間や順序は、異なる情報源によってずれが生じることがありますので、ご了承ください。

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